shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Birgit Lystager

2009-02-22 | World Music
 英語圏以外の人の名前というのは読みにくい。スウェーデンのジャズ・ヴォーカリスト Monica Zetterlund は「セッテルンド」か「ゼタールンド」かハッキリしないし、大好きなギタリスト Stochelo Rosenberg も「ストーシェロ」か「ストーケロ」か悩んだものだ(←別に悩むほどのことか!)。今回ご紹介するデンマークの歌姫 Birgit Lystager は「ビアギッテ・ルゥストゥエア」と読むらしい。何だか噛んでしまいそうな覚えづらい名前だが、アルバムには一度聴いたら忘れられないような素晴らしい音楽がギッシリ詰まっている。一言で言い表すと「北欧系ソフト・ボッサ」... いわゆるひとつのオルガンバー・サバービアというやつであり、その筋ではマニア垂涎の盤らしい。このアルバムは1970年の録音で、まず何と言ってもジャケットが素晴らしい。麗しの美女がチャーミングな笑顔を湛えながら佇んでいる姿は中身を知らなくても聴いてみたいなぁという気にさせるほど魅力的だし、実際に聴いてみるとジャケット通りの美しい歌声が流れくるのに驚かされる。「女性ヴォーカル盤はジャケットで買え!」という名言はここでも生きていた。内容は当時のヒット曲が非常に洗練されたボッサ・アレンジで歌われていて、彼女の優しい歌声と共にデンマークのジャズメンによる極上のサウンドも楽しめるという超お徳用盤なのだ。ブラジルのピアニスト、アントニオ・アドルフォ作の①「プリティー・ワールド」はイントロのボッサ・ギターからブラジリアン・テイスト全開で、ちょうどカーペンターズの「シング」のようなバックのサウンドに絡む彼女の透明感溢れる可憐な歌声がたまらない。コロコロ転がるような歌心溢れるピアノのプレイも絶品だ。②「フール・オン・ザ・ヒル」でも原曲の持つ哀愁を大切にしながら当時世界中で流行っていたセルジオ・メンデス&ブラジル66風の華麗なボッサ・アレンジが施され、リラクセイションに溢れるヴァージョンに仕上がっている。バカラックの③「クロース・トゥ・ユー」は彼女の伸びやかな温かみのある歌声が心に染みわたる。今やスタンダードともいえるカーペンターズのヴァージョンに比肩する素晴らしいトラックだ。④「ギミ・リトル・サイン」を取り上げているあたりにも1970年という時代性を強く感じさせるが、ブレントン・ウッドのソウル・クラシックを完全に自分の世界に引き込んで料理し、洗練された北欧系ソフト・ロックとして聴かせるあたり、タダモノではない。ボビー・ヘブの名曲⑤「サニー」は私の大好きな曲で、オルガンをフィーチャーしたジャジーなアレンジがキラリと光るグルーヴィーな演奏をバックに彼女のアーシーなヴォーカルが冴え渡る。⑥「ワイト・イズ・ワイト」はフランスのシンガー・ソングライター、ミッシェル・デルペッシュがワイト島フェスティバルにインスパイアされて作ったヒッピー賛歌で、彼女のゆったりとした寄せては返す波のような雄大な歌声はバックのストリングスと見事に調和し、アンプのヴォリュームを上げれば彼女の歌声に包まれ心が浄化されていくようで癒し効果も抜群だ。小野リサちっくな⑦「トリステーザ」は子供達と一緒に楽しげにコーラスする彼女の歌声が聴き手の頬を緩めさせる。静謐な⑧「メイク・イット・ウィズ・ユー」に続いて再びバカラックの⑨「恋よさようなら」... 彼女のクセのない歌声がこの曲の魅力を120%引き出しており、同曲の他ヴァージョンが一瞬にして砕け散るほど圧倒的に、超越的に素晴らしい。「ビアギッテ・ルゥストゥエア」... 一部のマニアだけに楽しませておくのは勿体ない、万人に愛されて然るべき美しいアルバムだ。

ビアギッテ・ルゥストゥエア
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