shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Great Balls Of Fire! / Jerry Lee Lewis

2009-02-15 | Oldies (50's & 60's)
 ロックンロールの花形楽器といえばギターであり、それをベースとドラムがバックに廻って支えるというのがお約束の基本パターンだ。ピアノが主役を張るなんて考えられなかった... この男が現れるまでは。ジェリー・リー・ルイス、「ザ・キラー」の異名を取るロックンロール界の偉大なる奇人である。元来クラシックの楽器であるピアノには指先だけでパラパラ綺麗に弾くというイメージがあるが、ニュー・オーリンズ生まれのラグタイムから派生したブギウギ・ピアノはクラシックとは無縁のダンス音楽としてアメリカ南部を中心に根付いていった。ジェリー・リーはそんなブギウギ・ピアノの伝統の上に立ちながらも新時代の音楽であるロックンロールに合わせてよりワイルドにモディファイし、三連を主体にしながら叩きつけるようにピアノを弾く彼独自の奏法、いわゆる「パンピン・ピアノ・スタイル」を編み出した。その後、エルヴィスをRCAに引き抜かれたサン・レコードからデビュー、「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」や「火の玉ロック」で大ヒットを飛ばし一躍スターダムにのし上がった。彼のステージ・パフォーマンスは強烈で、金髪を振り乱しながら震えるような声でシャウトし、ガンガン叩きつけるようにピアノを弾きながら、ノッてくるとイスを後方に蹴飛ばして立ち上がり、挙句の果てにはピアノの上に登って弾いたりピアノに火を放ったりともうやりたい放題。ジミヘンがギターを燃やすより10年も前に、よりにもよってピアノを燃やす奴がおったとは... 世の中、上には上がいるものだ(笑) これはそんな彼の自伝映画「グレート・ボールズ・オブ・ファイア」のサントラ盤で、ジェリー・リー本人の再録ヴァージョンが8曲、「火の玉ロック」のオリジ・ヴァージョン、そして映画に使われた他のアーティストの曲が3曲収録されている。これまでの経験から言って、過去の名曲名演のセルフ・リメイクによる再録というのは期待ハズレに終わることが多かったが、このジェリー・リー・ルイスという男、全盛期から約30年も経っているというのに全く衰えを知らないワイルドでエネルギッシュな歌声を聴かせてくれるのだ。ありえへん...(>_<) それどころか録音技術の進歩によって音が遥かに良くなった分だけパワー・アップしたかのような感すらある。その自由奔放に弾きまくるダイナミックなパフォーマンスは圧巻だ。特に①「グレート・ボールズ・オブ・ファイア」、②「ハイスクール・コンフィデンシャル」、④「アイム・オン・ファイア」、⑥「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」、⑧「ブレスレス」、⑩「ワイルド・ワン」といったアップ・テンポの曲で聴かせるパワフルなパンピン・ピアノが生み出すノリの凄まじさ... 50'sロックンロール特有の炸裂せんばかりのヤケクソ感が圧倒的に素晴らしい。それ以外のトラックではヴァレリー・ウェリントンの⑦「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」がめちゃくちゃカッコイイ。ジェリー・リーの同曲⑥と連続して入っているが、ノリノリで疾走感溢れるジェリー・リー版に対し、腹の底からグツグツと沸き上がってくるソウルをグルーヴィーに歌い上げたウェリントン版という感じで両者甲乙付けがたい。それにしても同じ曲でも料理の仕方でこれほどまでに感じが違うとは...これだから音楽は面白い(^o^)丿 映画の方も音楽好きならきっと楽しめるような内容なので、特にオールディーズ・ファンの方は一見の価値アリだと思う。

Great balls of fire! jerry lee lewis