shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Private Eyes / Daryl Hall & John Oates

2009-02-18 | Rock & Pops (80's)
 ホール&オーツは私に80年代の扉を開いてくれた思い出深いアーティストである。初めて彼らを聴いたのは「ウェイト・フォー・ミー」で、その頃は「ブルー・アイド・ソウル」とか言われても何のことかサッパリ分からず、ダリル・ホールの粘っこいヴォーカルがやや暑苦しく感じられ、彼らのサウンドもいまいちピンとこなかった。続いてヒットしたライチャス・ブラザーズのカヴァー「ふられた気持ち」も同様に胃にもたれるようなネチッこさが自分には合わず、この2曲でホール&オーツに対する先入観が形成された。翌81年、関西地区で小林克也さんの名番組「ベスト・ヒットUSA」が始まり大喜びで毎週見ていると、ある時ホール&オーツの「キッス・オン・マイ・リスト」が紹介された。それは今まで自分が彼らに対して抱いていたイメージとは全く違う洗練された音作りで、先進のデジタル・サウンドと彼らの持ち味であるソウル・フィーリングが絶妙にブレンドされ、非常にクオリティーの高いポップスに昇華されていた。この曲は物凄い勢いでチャートを駆け上がり、3週連続№1に居座り続けた。続いてカットされたアルバム・タイトル曲「ユー・メイク・マイ・ドリームズ」も同一アルバムから4枚目のシングルながら5位まで上昇、ダリル・ホールのヴォーカルもベタつくどころかシャープな切れ味抜群で気分爽快だ。このように一気に上昇気流に乗った彼らがその年の秋に満を持してリリースしたのがこの「プライベート・アイズ」なのだ。アルバムからの先行シングルであるタイトル曲はあっという間に全米№1に... テレビやラジオの洋楽番組でも超ヘビー・ローテーションで、もう何度聴いたかわからない耳タコ状態だった。だから私のような「ベスト・ヒットUSA」世代の人間ならイントロを聴いただけですぐさま28年前にタイムスリップしてしまうだろう。歯切れの良いキーボードが全体を支配し、キャッチーなコーラスとここぞという時に炸裂するシンセのデジタル・ハンド・クラッピング(?)が印象的な名曲だ。セカンド・シングルになった③「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」も最新のテクノロジーを駆使したデジタル・エレクトリック感覚溢れるダンサブルなポップ・チューンだったが、当時10週連続№1を独走していたオリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」に代わって№1に輝いたのには正直驚いてしまった。それまでは1枚のアルバムから何枚もの№1ヒットが出るなんてことは滅多になかったからだ。しかしこの頃の彼らは「出せば売れる」モードに突入しており、見事なコーラス・ワークが生み出す爽快感がたまらないサード・シングル⑤「ディド・イット・イン・ア・ミニット」、単調なメロディーの繰り返しに知らないうちにハマッしまう不思議なスルメ・チューンの4thシングル⑩「ユア・イマジネーション」と、向かうところ敵なし状態だった。これらの曲で顕著なように、彼らの成功の秘訣はブラック・ミュージックの一番美味しい部分を白人リスナーでも楽しめるようにダンス・ポップ・ニューウエイヴ風のコーティングを施し、美しいコーラス・ハーモニーで味付けしてポンと提示したところにある。シングル曲以外でも、70年代メンフィス・ソウルを80年代風にリメイクしたような②「ルッキング・フォー・ア・グッド・サイン」、印象的なサビのコーラス・メロディとこれまたお約束のハンド・クラッピングが耳に残る④「マノ・ア・マノ」、疾走するキーボードのスピード感がたまらない⑥「ヘッド・アバヴ・ウォーター」、躍動感溢れるコーラス・ハーモニーにシビレる⑧「フライディ・レット・ミー・ダウン」と、全曲シングル・カットが可能なくらいキャッチーなメロディーに溢れるこのアルバム、80年代ポップスの王道を行く1枚だ。

Hall and Oates - Private Eyes
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