shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Local Gentry / Bobbie Gentry

2009-02-24 | Beatles Tribute
 オムニバス盤というとどうしても「ただの寄せ集め」的なイメージが強く、ついつい軽視してしまいがちだが、時々とんでもない拾い物が入っていることがあり、決しておろそかにはできない。たまたま聴いたその1曲からあるアーティストを知り、自分の好みに合えば次はそのベスト盤なり口コミで人気の高いオリジナル盤なりに手を伸ばし、芋づる式に自分の音楽世界が広がっていく。こんな楽しいことはない。
 今から10年以上も前のことになるが、「ゴールデン・スランバーズⅡ」というビートルズ・カヴァー集を買った。東芝EMIが自社音源を切り売りするかのように定期的に曲目を少しずつ変えながら出しているオムニバス・ビートルズ・カヴァーCDの1枚だ。私はビートルズ関係はとりあえず何でも買うことにしているので、ウチの家には似たような内容の東芝音源オムニバス盤がゴロゴロすることになった(笑)
 しかしこの盤には他の盤には入っていない珠玉の1曲がひっそりと収められていた。それがボビー・ジェントリーの「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」である。彼女のことは「ビリー・ジョーの唄」というヒット曲があるという事実を活字情報として知っていただけで歌を実際に聴いたのはこの時が初めてだった。アコギの弾き語り風のイントロで始まり、軽やかなテンポで彼女が歌いだすと0分32秒からブラッシュがスルスルと滑り込んできてビートを刻み、ヴァイブが彼女のヴォーカルに色づけしながらこのままいくのかと思えば1分00秒あたりで何処からともなくストリングスが飛来、テンポ・チェンジしてスローで切々と歌い上げると再び1分35秒あたりからウエス・モンゴメリーのような歌心溢れる軽快なアコギ・ソロに突入し、そのままフェイド・アウトしていくという疾風怒濤の展開で、まるでハミングでもしているかのような変幻自在の歌と演奏が楽しめる極上の2分25秒があっという間に過ぎていく。
 「これは一生モノだ!」と直感した私は彼女のディスコグラフィーを調べ上げ、この曲が「ローカル・ジェントリー」という彼女のサード・アルバムに入っていることを突き止めた。当時はまだCD化されていなかったのでそれからというもの、大阪・京都・神戸のレコード屋を探しまわり、ついに大阪梅田の「ミュージック・イン」でUS原盤をゲット、人気がないというか知名度が圧倒的に低いというか、この盤の存在は殆ど知られてなかったようで、1,800円というウソみたいな値段で入手できた。しかも嬉しいことにこのアルバムには「フール・オン・ザ・ヒル」と「エリナー・リグビー」のカヴァーまで入っていたのだ!
 帰って早速聴いてみるとそれらがまた期待以上の素晴らしい出来でもう笑いが止まらない。「フール...」はレイドバックした雰囲気横溢の素朴な味わい深いトラックで、日本語ヴァージョンがシングル化されていたのをご存知の方もおられるかもしれない。「エリナー...」は低く過激に走るベースの動き、哀愁舞い散るギターのフレーズ、縦横無尽にグルーヴを生み出すオルガンの響き、隠し味的に投入されるタンバリンの連打、といったバックのサウンドが彼女の抑制の効いたヴォーカルと音楽的・有機的・必然的に結びつき、一体となってめちゃくちゃカッコ良いヴァージョンに仕上がっているのだ(^o^)丿 それ以外の8曲も奇跡的に全曲素晴らしく、私にとってはビートルズ・カヴァー入りアルバムの最高峰として、「自分だけの名盤」の最右翼といえる1枚だ。
Bobbie Gentry - Fool On The Hill