shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Get The Knack / The Knack

2009-02-12 | Rock & Pops (70's)
 私が音楽を聴き始めた70年代はミュージック・シーンが混沌としており、ヒット・チャートもディスコ、ソウル、アダルト・コンテンポラリー、ハードロック、リズム&ブルースetc 様々な音楽が入り乱れ、群雄割拠でまさに戦国時代の様相を呈していた。そんな中、「ビートルズ再結成か?」という、まるで東スポの1面程度の信憑性しかない(笑)ええかげんな噂が現れては消え、消えては現れた。今でも覚えているのは「76年7月5日にニューヨークで一夜限りの再結成コンサートが行われる」というかなり具体的なもので、当時中学生で既にビートルズ中毒になっていた私は「日本に来ぇへんのかなぁ...」と気もそぞろだった。結局その噂もぽしゃったようで、それ以降再結成ネタはトーン・ダウンしたが、その代わりにメディアは「第2のビートルズ」探しを始めた。新しいバンドが現れるとすべて意識的にも無意識的にもビートルズとの比較において聴いてしまうという困ったクセがメディアにも、そして我々ロック・ファンにもついてしまったのだ。悠々自適にソロ活動を楽しんでいたファブ・フォーの4人は「ザマミロ、ワハハ」と笑っていればすむ話だが、音楽史上最高のグループと比べられる新人バンドたちはたまったものではない。女の子たちがキャーキャー叫べば、やれ第2のビートルズだ、60年代っぽいシンプルでストレートなロックンロールを演奏すれば、そらリヴァプール・サウンド復活だとメディアが騒ぎ立てる。一番気の毒だったのがベイ・シティ・ローラーズで、一大ブームを巻き起こしはしたものの結局は数曲のヒットを飛ばしただけでフェイド・アウトしてしまった。私に言わせれば優れたポップ・グループだった彼らは(良い意味で)「第2のモンキーズ」であり、ビートルズと比べるには貫目が違いすぎた。そして次にメディアが目を付けたのがこのザ・ナックである。時はディスコ・ミュージック全盛の79年、右を見ても左を見ても同じようなふにゃけたディスコ音楽だらけの堕落しきったミュージック・シーンにカツを入れんばかりに響き渡る「マイ・シャローナ」... タイトでスピード感溢れるストレートなロックンロール・サウンド、シンプルで覚えやすいメロディー・ライン、ウキウキするようなコーラス・ハーモニーと、確かにビートルズ登場時の衝撃に近いものがあった。おまけにこのジャケット、どう見ても「ミート・ザ・ビートルズ」を意識したものだし、楽器編成からステージ衣装と何から何までビートルズを意識した路線でキャンペーンが展開された。その結果、この曲は5週連続全米№1となり79年を代表するヒット曲として人々の記憶に残ることになった。彼らの楽曲はとにかくキャッチーで親しみやすいのが特徴で、中でも私が一番好きなのがセカンド・シングルになった「グッド・ガールズ・ドント」。ダグ・フィージャーの吸引力のある歌とロックの衝動を抱え込んで突進する勢いが生み出す圧倒的な疾走感に目も眩む、楽しさ全開のパワー・ポップだ。「ハード・デイズ・ナイト」や「ヘルプ!」を意識したビデオ・クリップも嬉しい。翌80年の来日公演は友達と一緒に大阪中之島のフェスティバル・ホールまで見に行ったのだが、持ち歌が少ない上に3分前後の曲が多かったせいもあり1時間強でステージはあっけなく終了、「エ~、もう終わりなん?」と少し肩透かしを食ったような気分で帰途に着いたのを覚えている。その後に出たセカンド・アルバムも含めて彼らには良い曲がいっぱいあるのに一発屋のイメージが強いのは、それだけ「マイ・シャローナ」のインパクトが大きかったということだろう。一発屋、大いに結構!虎は死して皮を残すというが、ザ・ナックは「マイ・シャローナ」でロック史にその名を深々と刻み込んだのだ。

Good Girls Don't by THE KNACK