転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



母の日なので、T園にいる姑のところに、
朝から、主人とふたり揃って行った。
娘は中高合同の体育大会があって、留守だった
(A中高ならではの五色対抗のアレだ。今年の娘は黄色組)。

姑は、お風呂が終わってさっぱりしたところで、御機嫌も良く、
私たちが持参した「桃プリン」を瞬く間に平らげた。
それから昼食になると、最初は自分でスプーンを持って食べられて、
きょうは、なかなか調子が良いようだった。

姑の介助をしていると、近くにいる別のおばーちゃんズの
世間話が、なんとなく、聞こえてきた。
別に聞き耳を立てなくても、とても声が大きく発音が明瞭で、
話し手のおばあちゃまの物語は、わかりやすかった。
わかったが、その内容はとんでもなかった。
なにしろ、話に出て来る人物が最後には皆『子宮がん』になるのだ。
ドキュメンタリー風味だったが、フィクションも入っているかも?
と思いながら、あまりの『子宮がん』繋がりにウケていた私だった。

5人目の『○○さんの奥さん』についての話が始まったときだけは、
「血圧が250あるんと」という説明だったので、
ヨカッタこの方の病名は他と違って高血圧症なのか、
と私が意味もなく安堵していたら、最後にはやっぱりこの奥さんも、
『子宮がん』になってしまった。そして、
「ほいじゃが、食欲が旺盛なけ、なんにも心配要らんと
お医者さんが言うちゃった。大丈夫じゃった」
というオチがついた。

と、突然、私の背後で、別のおばあちゃまが、悲鳴のような声で、
「だっ、だれか来てーーーー!!!」
と叫ばれた。どうしたのかと私はドキっとしたが、近くの職員さんが、
「はい。今行きますよ」
と顔色も変えずに返答をされた。単に介助を頼んだだけだった。
誰か来てーーーー!!
「はぁい」
おいっ!はよ来い!!
「今行きますからね」
早く来やがれ!!

見事な三段活用であった。
職員さんは慣れたものだったが、そばに来てから、
「お待たせしました。すみません。
 でもねえ、そんな乱暴な言葉で呼ばれるの、慣れとらんのよ私。
 どして、そんな言い方するん?」
と、穏やかにたしなめられた。こういう返し方は、さすがだった。
するとおばあちゃまの返答がふるっていた。
江戸っ子だから

どのおばあちゃまも、自分なりの自己主張をなさっていて、
今だって十分に、お元気では、あるのだ。
多分、何年か前までは、どの方も、明るく世話好きで、
よく働く『近所のおばちゃん』だったに違いないし、
場合によっては、とても慎ましやかな江戸っ子だったかもしれない。
それが、ほんのちょっと、どこかで回路の調子が悪くなってしまうだけで、
人間というのは、様々な面を見せるようになるのだなと
毎度のことながら、しみじみ、思ってしまった。

うちのばーちゃんは、そんな周囲の騒動も全然耳に入らず、
ひたすらにお昼御飯を食べ続け、最後のほうになると、
ありがたーくなったようで、目を閉じてウトウトし始めてしまった。

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