数年前、おがさわら丸に乗船したときの話。
カウンターのまわりに東京から父島までの地図や通過予定時刻、天気図などの展示や孀婦(そうふ)岩の写真も。
小学校国語教科書に高知県出身のわずか14歳の少年、ジョン万次郎が鳥島に漂着し、雨水や海産物や飢えをしのぎ、140日後アメリカの捕鯨船に救助されたという話が載っていました。
ジョン万次郎は初めて渡米した日本人だということで有名です。
「鳥島」という地名はすでに小学生の頃知っていましたので、東京の島々が好きになってしまったかも知れませんね・・・。
そこで地図を見ながら船員さんに筆談で質問してみました。
「小笠原村の海域に入るのは、何時頃ですか?」
「小笠原村の境界ははっきりしないけど、聟島列島が見える朝8時頃かな・・・。ここまでは八丈支庁です」
えー、八丈島近海を通過する夕方の6時頃からずっと12時間以上も八丈支庁の海域を航海しているわけだ。
地図帳を広げても、日本最南端の沖ノ鳥島や南鳥島は「小笠原村」が載っているが、鳥島や孀婦岩とかはどこの自治体に属するか載っていなかった。
この本で謎が解けました。
伊豆諸島が次々と町村制が敷かれ、南方四島(ベヨネース列岩・須美寿(すみす)島・鳥島・孀婦岩は無人島なので、どこの自治体に帰属するか決まらないまま現在に至っているとのこと。
1888(明治21)年アホウドリ※を捕獲するため、八丈島から多くの移住者が暮らしていたが、1905(明治38)年に噴火し、島民125人全員死亡した歴史がある。
最初に移住したのは八丈島の人間だから、南方四島は八丈町に属すべきだと1981(昭和56年)に東京都知事に要望書を提出したことがあるそうだ。
あの海域は好漁場なので、八丈町の所有にしたがったかも知れませんが、最も近い青ヶ島村も所有権を主張。
紛争まで発展したくないのが両町村のホンネなので、所属未定地として東京都の直轄地になっているとのことでした。
(※アホウドリは1960(昭和35)年、国際保護鳥に指定されているので、捕獲禁止になっています)
船員さんの答えはどこの自治体に属せず「八丈支庁」になっていましたが、正解だったのですね。