相棒シーズン12、第7話はやりきれない「目撃証言」。
「犯人を見た」ということが、どれほどの影響力があるのかということを改めて感じる第7話となっていました。
きっと佐野は何度も「自分はやってない」ということを叫び続けたのでしょうね。それでも、犯人の言う事がそのまま受け取られるわけもなく、「ひき逃げ犯を見た」という証言が受け入れられた結果、禁錮3年という実刑判決が下ってしまいました。
しかし、実はその証言こそが嘘。千倉はひき逃げの現場など見ておらず、見たのは「老婆が倒れており、自転車が走り去っていた」という場面のみ。最初に現場に訪れた警察官も、千倉の話を聞いて「ひき逃げ」という風に勘違いしてしまい、だからこそ「ひき逃げ」ということで捜査が進められてしまい、今更後に引けなくなったのかも。
実際、ハルの体に自転車のタイヤの痕とか、怪我が無いかどうか、片山のタイヤにハルの衣服の繊維などが残っていないか・・・そういった調査をすれば、佐野が轢いていないということも分かったでしょう。けれども、そんな捜査をしていたら時間がかかる。だからこそ、手っ取り早く、操り易い目撃証言を誘導し、ひき逃げ事件ということで決着をつけてしまったのかな。
片山は自白調書が一番多いとも言われていました。もしかしたら千倉と佐野だけではなく、もっと多くの人間が嘘の目撃証言により、人生を狂わされているのかもしれません。右京さんが、あんな風に事件を捉えている片山と、他の警察官と一緒にしないでもらいたい、と強く一喝したのは気持ちよかったですね。カイトが怒るのも最もな人間でした。今回の事件で言えば、伊丹と芹沢も間違った人間を逮捕するところでしたし。
東海林も「かもしれない」「だと思う」と、証言を濁していました。確かに、東海林の言うとおり、警察から「ちゃんと見たのか」と言われた時、はっきりと「違います」とは言い辛いのかもしれません。一瞬見ただけの人間の顔を、どれほど覚えていられるのか。それに、「この人です」と断定してしまうと、その人間の人生を狂わせてしまう恐れがある。実際千倉がそうでしたね。
それでも千倉は、間違いを間違いだったと言える勇気があったとは思います。千倉が最後に書き残そうとしていた「H22」という文字。恐らく、これはファイルのパスワードを書こうとしたのでしょう。あの状況で自分の嘘を告発しておかなければならないと考えるほど、彼にとってあの嘘の告発は重要なことだったのでしょうね。
最初は事件解決のため、協力しようという純粋な気持ちもあったのではないかと。それが片山に利用され、正義感を書き立てられ、人の人生を狂わせ、結果としては自分の人生も狂ってしまった。
「見た」と口で言うのは簡単です。ただ、その言葉に責任を持てるのかどうか、それが大切なのだと感じました。