マザーレス・ブルックリン/エドワード・ノートン監督
勝手に言葉がついて出るチックの症状(トゥレット症候群だろうと思う)をもっている探偵のライオネルは、上司であり育ての親のような存在のフランクが殺された理由を探っている。そういう中都市計画の反対運動をしている黒人女性と知り合うようになり、その周辺のジャズの店に関わる人間から殴られるなど複雑な問題に首を突っ込むようになっていく。
エドワード・ノートンが監督主演脚本までこなしていて、主要なキャストも、実力者俳優陣をずらりとそろえた大作めいた作品になっている。雰囲気は怪しげで、1950年代のニューヨークの街並みの再現も見事だ。当時の話題も織り交ぜながら、非常に複雑なプロットが織りなされる。正直にいって盛り込みすぎて何が何だか分からないわけだが、まあ、いい感じにはなっているのでさすがかもしれない。
昔の映画にありがちだが、主人公らは、殴られるとよく気を失う。気を失うほど殴られるというのはよっぽどのことだと思うが、ほとんど一撃でぐらっと来て時間がしばらく経過している。殴られるだけじゃなく、何か麻薬を吸っても記憶を失っている。状況が変わって、新しくお話が展開する。要するに都合がいいのでそうしているということかもしれない。まあ、そういう映画なのである。
今の事件の真相を追っていると、思った以上に過去のことをさかのぼって考えなければならなくなる。そうして自分の出自まで明らかになったりする。結構根が深いのである。最初は何をしているか主人公たちも何をしようとしているか、詳しく聞かされてもいない。観ている側には、そのあたりから推理を始めなければならない。登場人物も何故かを悩んでいるのに、二重構造であれこれ考える。結果的に多くの謎は明かされるのだが、そのスジ道を追っている途中で、順番自体があっているのかどうか、分からなくなる。後で整理して考える。そういう必要があるかもしれない。
欲張って長くなってしまったきらいがあって、もう少し短くできたようにも感じる。僕は結局分けてみたのだが、このDVDには、珍しくチャプターがついてなかった。ちょっと不親切ではないか、とも思った。まあ、ふつうは一気に観る人ばかりだということなのだろうか。他の短い映画ならともかく、この作品には付けるべきではなかろうか。