カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

今度はクローン問題   火の鳥:生命篇

2020-12-04 | 読書

火の鳥:生命篇/手塚治虫著(角川書店)

 テレビの高視聴率を稼ぎだすために、クローン人間を狩るという残酷番組を思いつく若きディレクターが、様々な生命のクローンを作り出すことができるというアンデスにあるクローン研究所を訪ねる。最初は断られるが、そこで働いている研究員の男の案内があって、この技術をもたらしている黒幕である鳥族に会わせてもらう。そこで苦行を受けて何とか生き残り、結果的にたくさんの自分自身のクローンが作られてしまう。テレビ側はこの自分のクローンを使って、予定通り人間狩りの番組を始めて大盛況になる。男は自分が狩られる側になり逃げまどい、行きがかり上一人の少女を連れて深い森の中で潜伏生活を続けていくことになるのだった。
 クローン問題の倫理面について考えた作品。クローン技術というものは、すでに現代でも行われることが可能になったものである。おそらく家畜の世界で、事実上クローンは作られていることだろう。食糧危機などの問題解決になるのかどうかまでは分からないが、一定の個体を選別してクローンするなど効率化の問題として扱われているものかもしれない。もちろん人間もクローンは可能で、しかし漫画のように大人の人間を同じようにコピーして増やすというのはナンセンスだろう。多くのクローンの赤ん坊を作って、段々と育てるという方法をとるより無いのではないか。
 ともあれ、技術的なものはどうあれ、このようなクローン社会が来ないとも限らない。倫理問題としてどうするというのはあるが、それにすでにそれなりに規制がある中にあって、例えば買っていた犬などのペットは、商売としてクローンが存在する。そのようなクローン犬を代々飼っているお宅がある以上、似たようなことをやりかねないのが人間である。漫画とは違う展開にはなるが、代々自分のクローンを使って家を継がせるというようなことを考えている人は、絶対に居ると思う。今でも子供に継がせているのはそれほど問題にならないのだから、一定の配慮をしながら計画している人が、広い世界のどこかに存在するはずだと、僕は考えているのである。
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