さらば愛しきアウトロー/デビッド・ロウリー監督
日常的に銀行強盗を繰り返している男たちがいる。実は3人組の爺さんで、主犯格の男は、ほとんど人生を楽しむために銀行強盗をやっている感じなのだ。しかしながら実際は時々警察には捕まっていて、そのたびに脱獄して、犯行を繰り返している男だったのだ。
これは実在の人物の物語で、映画の方も、だいたいにおいてその事実に沿って作られてはいるようだ。まったく呆れた話だが、最初から作り話として作られたのなら、ちょっとリアリティがない話かもしれない。破滅的な生き方をしていながら、紳士的で、悪いことをしているはずなのに、何か人に恨まれていないような強盗を成し遂げる。出会った女性にも愛されるのである。実際の人物は三度も結婚し、この映画のように仲も良かったのだろう。
主演のロバート・レッドフォードの引退作として話題になったのだが、要するに彼の俳優人生と照らし合わせて楽しめる演出になっている。自分自身も、このように楽しんで映画人生を歩んだのかもしれない。稀代の二枚目役者だったが、さすがにしわくちゃな爺さんになってしまった。しかし、である。やっぱり科白はキマってしまうし、真摯なしぐさも洗練されてかっこいい。情けない状況に置かれても、何か憎めない愛らしさがある。それこそが大スターというもので、彼自身、その姿をしっかりと見せつけたかったということなのだろう。
相手役のシシー・スぺイセクも、あの「キャリー」のいじめられっ子だった人である。ギャングの相棒もダニー・グローヴァーにトム・ウェイツである。みんなみんな年をとったものである。でも、やっぱりみんないい感じではないか。
銀行強盗を繰り返す映画なのに、スリルと緊張を強いるようなものではない。むしろ、人生が残り少なくなって、なんだか少し寂しい感じもするような年頃になっても、ちょっと元気が出てくるようなお話になっている。まあ、呆れはするが、それが人生を楽しむということなんだから、いいのである。おんなじことはできないが、何か真似はできるかもしれない。まあ、それは自分の才能とやる気次第なのである。