カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

隔離された人間の狂気   9人の翻訳家 囚われたベストセラー

2020-12-28 | 映画

9人の翻訳家 囚われたベストセラー/レジス・ロワンサル監督

 全世界的に翻訳されているベストセラー小説の完結編の原稿がある。各国の代表的な翻訳家がある場所に集められ、隔離される。そういう特殊な状況で、同時通訳の作業を行い、世界的に同時出版しようという試みなのである。外部との接触が一切絶たれ、不自由な共同生活が始まるわけだが、警備は厳重な中とはいえ設備は充実しており、プールやボウリング場なども完備してある。おそらくギャランティもいいのだろう。そうやって、皆が毎日決められた分量を、少しづつ訳していくのだが、何者かが、情報を漏らしていることが分かるのだった……。
 実際の世界的なベストセラー・ミステリの「ダビンチ・コード」の続編「インフェルノ」が翻訳された際に、このような手法が取られたことがあるのだという。この映画は、その出来事をそのまま再現したわけではなく、そのことの背景をも含めた二重構造のアイディアを用いたミステリだと考えられる。
 翻訳家が9人もいるので、それぞれに様々な背景が隠れていそうで、原稿を流出させた犯人はこの中に必ずいるとは考えられるものの、何しろ隔離状態だし、ネットなどの通信方法は、どうなっているのか全く分からない。出版社側の社長はあせり、隔離状態を事実上監禁処置とし、翻訳家を追い詰めて仲間割れを含めて白状させる作戦をとるのだった。
 何か事情のあるらしい翻訳家たちが集められている時点で、ちょっと不穏な空気がある。誰が犯人なのかというミステリとともに、その事実が明らかにされていく後半のどんでん返しは、それなりに意外である。まさに、そんなことがあったのか! である。
 欺きあう演技合戦にもなっていて、俳優たちは、迫真の演技を競い合っている。舞台劇でもこのようなやり方はできそうで、あるいは、そういう手法の作品もあるのではないか。隔離物は、あんがいアイディア次第でそれなりに広がりが作れるので、面白い題材なのかな、という印象を残したのだった(怖いけど)。
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