SABAKANサバカン/金沢知樹監督
小学生の友情物語。クラスにいる貧乏な友人と仲良くなって、イルカを見るために小さな島に泳いで渡る小冒険を行う。自転車に乗ったり、不良に絡まれたりする。あと、家庭の事情が絡んでいたり、両親が仲良かったりする。サバカンというのは、その貧乏な友人が、サバの缶詰で作ったお寿司のことらしい。全体的にいい話である。
監督さんが長崎の出身であるらしく、長崎の風景が上手く撮られているのも見どころである。ただし長崎市が中心なのだろうけど、島原やその他の地区が混然一体となっており、物語があの辺りの話じゃないかな、という具合にはならない。僕らのように長崎県出身の人間にとっては、かえって混乱してしまうかもしれない。何故なら長崎市の少年事情と、島原市のそれは明確に違うはずだからである。まあ、彼らの友情物語は、おそらく監督さんの物語でもあろうから、本人が気にして無いのなら大きなお世話だが……。
1980年代の情景ということになっていて、その頃の風俗も懐かしさはある。僕よりは少し年下の人たちの物語らしい。子供にとっては親の存在は大きい訳だが、親ってこんな感じの家庭もあるんだな、という感じはある。当時の「らしい」はあるのかもしれないが、実は別段標準でもない気もした。また、母子家庭の友人も確かにいたが、だからと言っていつもランニング・シャツってことも無かったし、貧乏な奴というのは、こんな感じでいじられているとも感じなかった。僕が鈍感だっただけなのだろうか? 子供のころの関心というのは、漫画だったり虫だったり魚だったりした訳で、少人数で遊ぶとなると、かなりオタクチックになったりしたものである。僕の家は比較的学校から遠かったので、道草してなかなか家にたどり着かなかった。情景として坂道が多いというのだけは、なんとなく共通するのかな、ということくらいだろうか。
主人公の草薙君は、実はほとんど出ていなくて、映画としては、そういう風に客を呼ぶ戦略だったのかな、とも思ったことだった。