カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

猟奇殺人のつながりが見えると…   連続殺人鬼カエル男

2019-11-07 | 読書

連続殺人鬼カエル男/中山七里著(宝島社)

 マンションの13階に、フックにかけられた女性の腐敗した全裸死体が発見される。傍らには、子供が書いたような文章が残されていた。その後も第二第三と猟奇殺人が行われ、小さな町は大パニックに陥れられる。何のつながりも見いだせない連続猟奇殺人に、警察の捜査も犯人に絞り切れるものが見つからないのだった。
 猟奇殺人のホラー的な要素と、町が恐怖のためのパニックに陥った後の、警察への暴動スペクタクルへ発展する。映画で言えばB級ホラーめいた展開になりながら、執拗に残酷と暴力描写が続く。そうして最後には、大どんでん返しの仕掛けが爆裂するのである。人物のかかわりは重層的なものがあり、途中で犯人らしき人物は示唆されるものの、それらの伏線を伴っての最終までの展開は、まさに息をつかせない。ちょっとやりすぎではないかというような暴力が続くのだが、物語が壊れることは無い。ほとんどマゾ小説ではないかという感じはするけれど…。
 著者は音楽にも造詣が深いようで、これを読んだら、途中でピアノにまで関心が及ぶようになるのではないか。もっともこの人物描写の在り方から、最終的な音楽に対する印象は変わってしまうかもしれないが。
 娯楽作として非常にサービス精神にあふれていて、多くの読者は翻弄されながらも楽しんで読むことをやめることもできなくなるだろう。解説にもあるが、この作品と同時に「さよならドビュッシー」が「このミステリーがすごい!」の最終選考に残ったという。そうして大賞は「ドビュッシー」が受賞するが、今作品も期待が大きく、刊行されるに至った。実は「ドビュッシー」は読んだことがあって、そんなに感心しなかったのだが、こちらの方は結構楽しめたので、相性があるのだろう。
 著者は登場人物に自分の意見を反映させるような科白を多く吐かせていて、そういうのが多少鼻につくようなところはあるが、まあ、そういうのが物語に対する背景にある社会批判の精神なのかもしれない。確かに刑法39条についても、否応なく考えさせられることになるだろう。それが大きな伏線でもあるわけだが…。
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