カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

味をしめたら抜け出せない   ある女流作家の罪と罰

2019-11-11 | 映画

ある女流作家の罪と罰/マリエル・ヘラー監督

 以前はそれなりに売れていたらしい伝記作家のリーだったが、落ち目になり酒におぼれがちで、生活も困窮している様子だ。そもそも筆も進まない、枯れた状態に陥っている。伝記作家だったので、取材対象の有名人との手紙のやり取りをしていたこともあり、キャサリン・ヘップバーンの手紙を(個人的な宝物にしていた様子)売ることにした。これが思わぬ高値でさばけ、一時しのぎになる。調べ物をしていた書籍に、その著者の誰かとのやり取りの手紙が挟まっていたのを偶然手にすることができ、さらに高値で売るために、古いタイプライターで文章を付け足して捏造して売ることを思いつく。そうやって成功体験を積むようになり、数々の捏造文を売りさばくようになるのだったが…。
 この主人公作家の自伝をもとにした実話の映画のようで、いわゆる犯罪の様子と実情をつづったものである。段々と怪しまれるようになっても、以前の友人を使って闇のバイヤーに捏造の手紙を売り続ける様を、ブラックなユーモアとともに描いている。そういうやり取りが、いわゆる映画的な演技合戦になっていて、批評家からは高い評価を受けた作品だったようだ。
 本人は伝記作家で、取材対象の人柄も熟知しており、いかにも本人が書きそうな内容を捏造することに才能を発揮できるのである。いわゆる文章で食っている作家だからこそ、その文才をいかんなく活かせる場ができたわけだ。それが悲喜劇を盛り上げる舞台設定になっていて、危うくもおぞましい犯罪に手を染めながら、抜け出すことが難しくなっていく。
 映画的な演出なのだろうが、生活が困窮しアルコールにおぼれながらも、ニューヨークのアパートはそれなりに豪勢だし、基本的な生活スタイルを変えることができない様子だ。確かにお金稼ぎになるとはいえ(400もの手紙を捏造したとされる)、これではいずれ破綻するのが見えている。怪しい仲間も、なんというか、何かぬけている。実話だからこの話がそれなりに売れたとも思われるが、そういうことが二重三重に詐欺的な事実なのではなかろうか。だから面白いということなのだろうが。
 そんなに盛り上がる物語ではないが、しかしこういう話は事実だから興味深いということは言えるのかもしれない。あちらの国では、伝記物は特に多いと聞く。いわゆるゴシップ的な楽しみがもともとあるようで、有名人になりさえすれば、いろいろとその周辺で稼げるものなのかもしれない。まあ、それは、日本でもそうかもしれないとは思うけれど、結局は、人間の好奇心というのは、そういうものが基本であるということなのであろう。
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