おいしい生活/ウディ・アレン監督
銀行の隣の空家を借りて、そこから穴を掘ってお金を奪おうとする。穴を掘っている間、目くらましに妻が得意なクッキーを売ることにする。ところがこの店が大当たりして億万長者になってしまう。億万長者になった彼らは、パーティーで金持ち連中と付き合うようになる。そういう中妻は、成金で下品な出自である自分たちには、教養が必要だと言い出す。そこで美術商の男に、教養をつけてもらうために芸術やワインなどを学ぶことになるのだが…。
コメディ映画なので当たり前だが、とにかくバカバカしい展開と会話で構成されている。これが本当にバカバカしくて呆れる。しかしながら恋の物語にもなっていて、かなりの紆余曲折を描くことで、人間模様を表すことに成功している。人間は金が無くても金があっても愚かな訳だが、金の付き合いで出来た人間関係というものは、結局そういうものに過ぎないという風刺なのかもしれない。まあ、そうでないかもしれないが。
ずっと明るいテンポのジャズがかかっており、ふざけた展開とわざとらしい演出が続きながら、なんとなく軽妙に映画を楽しむことが出来る。そんなに金のかかっている風な作品ではないけれど、さりげなく上流の日常が分かるような気もする。そうして人々は、まるで落語の主人公たちのような馬鹿げたことばかり言っている。本当に頭も悪そうである。
こういうどうでもいい話というのは、あんがいかえって難しいものである。普通は誰も付き合わないだろう。しかしこれはウディ・アレン作品である。よく知らないが、ニューヨークの都会人などが笑って観る作品なのだろう。馬鹿らしいけど田舎臭い作品では無い。そういうところが、いかにも、という感じで、さすがなのである。何も残らないような物語だが、ちゃんと楽しく印象にも残る。そういえば変なこと言ってたな、と後で科白を思い出しておかしく感じたりする。まったく妙なものなのであった。