カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

南北会談と脱北者

2018-10-02 | 時事

 北と南の融和ムードが盛り上がる中、何かとり残されたような苦悩の人々をレポートしている番組を見た。その人たちというのは、他ならぬ北からの脱北者たちである。
 韓国に渡った脱北者の多くは、ある程度の助成を受けながら、南での生活を送っている。中には既に南でもそれなりに活躍している人もいて、いわゆる有名人になって発言力の強くなっているような人もいるようだ。韓国国内の世論においては、当初は当然同情的に保護をするような時期があったようだけれど、現実に南北のトップが会談し、お互いの未来を語り合うような事が映像で何度も流れるようになった。大部分は歓迎ムードであって、負の歴史に苦しめられてきた、もともと一つの分断した国の民として、悲願の統一の足掛かりとして、これほど慶賀に値する動きはないのかもしれない。
 ところが脱北者の多くは、南北統一そのものを夢見ない訳では無いにせよ。北の情勢下で長く暮らしてきた体験があり、どうしても金体制の軟化を心から信じきることが出来ないでいた。この会談というものの本質は、単に金体制の維持に過ぎないのではないか。どうしてもそのような考えを捨てられない。ひどく言えば、この会談そのものが茶番のように感じられて仕方がない。もっと本質深く議論して、信用できるまでの約束を実行するまで、安易に信じられるものでは無いのではないか。
 しかしながら脱北者のこのような思いは、韓国人の目からは非常に厳しい批判の元になっている。せっかくのムードをぶち壊すものだし、あえて妨害しているに過ぎないのではないか。まだまだ韓国の庇護を受けながら生活しているにもかかわらず、我がまま放題にしているのではないか、などと心無い誹謗中傷を受けたりする。身の危険を感じるほどに攻撃的なヘイトスピーチを受けることもある。
 現在進行形の話で、この事の答えめいたものは、まだまだ先を見極める必要があるとは思う。金正恩体制とは何か、という事も、本当に分かっている人は少ない。このように対話に踏み切った理由は、北朝鮮にも十分なメリットがあるという計算があることは間違いない。しかし南北が統一された後に、この北の体制と南の体制がどのような仕組みで機能できるというのか。今のところこのことの説明をしてくれる人を、聞いたことが無い。おそらく正確に予測できる人も、まだいないのではないか。融和モードとして会談に意味が無いとは言わないが、確かに脱北者の懸念通りに、簡単な実効策などまだ何もないのではないのか。
 つまるところ脱北者の懸念に答えるものが見つからない限り、この話の本当の進展は無いのかもしれない。そこまで話が進むのか、ポーズだけで終わるのか。見極めにはもう少し時間がかかるのだろう。
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