英国では日本からの外来種であるタデ科の植物イタドリが、猛威を振るっているという。あちらではジャパニーズ・ノットウィード(日本タデ)と呼ばれている。江戸時代にシーボルトが持ち帰って、英国に投機目的で送ったという記録があるという。最初は観賞用であったが、その後強い繁殖力で猛威を振るうようになり、今ではすっかり困った嫌われ者になっている。イタドリが植わっている土地は価値が下がり、もしイタドリがあるとわかっている状態で土地や家を売買すると、高額な賠償金を支払わなければならない法律まである。イタドリの駆除に何億円ものお金をかけて、行政が処分している現状もある。それでも完全なる駆除は困難で、イタドリは地下茎が少しでも残ると、休眠後にあらためて再生すると言われ、その後コンクリートも突き破るなどして成長し、繫茂する。イタドリが生息するとわかると土地の価値が暴落するので、専門の業者などを雇って駆除するより仕方がない。しかしながら完全駆除は非常に困難だから、後になってイタドリが成長してしまうと、膨大な額の損害賠償を請求される。小さな社会問題などではなく、ヒステリックな恐怖問題といえるようだ。
過去にも紹介したことがあるが、日本発の外来種が海外で猛威を振るい人々を恐怖に陥れている例はたくさんある。有名なのは鯉だが、海外の川などの淡水の生態系を大きく変化させてしまっている。最初は観賞用などでもてはやされたのかもしれないが、もともと錦鯉などは人為的に改良されたものであって、自然に帰ると地味になり(捕食されないように)逆に天敵のいない環境で猛威を振るう訳だ。英国のイタドリは、まさにそのような環境下でイタドリにとって有利だからこそ、猛威をふるえている訳である。
もちろん日本のイタドリも、時に新しく舗装された道などから伸びあがりアスファルトを破壊したりしているのを見かける。定期的に刈られるなどして保全されているようだが、またなんども生えてくるようだ。しかしながらイタドリ以外の雑草などの環境もあるのだろう。イタドリのみが広範に繁殖するようなことは、日本の自然環境にはないようである。イタドリを専門に付く寄生虫などもいるという。英国もこの寄生虫を輸入して対抗しているようだが、日本のように根付くものなのだろうか。他の生態系に影響が出る場合だって考えられるだろう。イタドリを人為的に移植したからこそ問題が起きたわけで、それをまた人為的に操作しようとしても、また別の問題が起こる可能性があるはずである。日本発なので気になるところではあるが、人間の行いが自然を変えてしまうのは、このような問題だけではない。その罪は重いものがあるけれど、人間の側が選択してもろくなことにはならない。少なくとも人間には、あまり学習能力が無い。外来種問題は、そのような宿題を人間に見せつけている事象なのである。