カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

思いは届けなければ   エゴイスト

2024-07-10 | 映画

エゴイスト/松永大司監督

 東京のファッション誌で働く浩輔は、ジムでパーソナル・トレーナーの龍太と知り合い、二人は惹かれあっていく。浩輔は田舎ではゲイであることを隠し通しているが、母を亡くし、老いた父が田舎で暮らしている(時々顔を見せてはいる)。一方龍太の方は母子家庭で育ち、母親と二人暮らしだ。そうして実は、主な収入源はウリ(売春)によるものだった。浩輔は何とか龍太を支援しながら、母子二人暮らしの生活を支えたいと思うようになるのだったが……。
 基本は二人の恋愛劇だが、後半はその龍太の母親との交流が描かれる。ゲイ同士なのでいわゆる普通の家庭は持てず、しかし家族づきあいはちゃんとしたいということなのだろうか。政治的な葛藤の話では無いが、浩輔は比較的成功して裕福で、ゲイの友人たちもたくさんいる。一方の龍太は、まじめに働いてはいるものの、大きな収入を得るほどではなく、老いた母親と二人暮らしはつつましいもののようだ。しかしながら東京で暮らしていくためには、体を売らなければやっていけない、ということなのかもしれない。浩輔との恋愛は本物だが、頼り切るというのも遠慮を感じているのだろう(特に金銭的援助をうけることに)。そうして事は急展開する。
 ファッションや仕草もあって、すぐに皆がゲイであることは見て取れる。そうして、セックスシーンもふんだんにある。まさに体当たり演技合戦ということになるのかもしれない。おそらく出ている俳優さんたちは、本物のゲイではない。しかしこれらを演じようと決めた、何らかのメッセージ性はあるはずである。仕事とはいえ、お金のためだけではないのではないか。さらに時代性があり、以前よりもゲイの演技に対する障害も、少なくなっているのではないか。それでもあえて今これらを演じることに、時代に対しての自らの解答があるのではなかろうか。観ながら、そんなことを感じさせられることになる。いわゆる皆、大変だけど上手いのである。そうして以前の僕と比較しても、捉え方が自然にあるようにも思う。かなりきわどいシーンが多くあるにもかかわらず、そこまで抵抗感が無いのである。そうしていわゆる美しさという感じも、ちゃんと伝わってくる。性的な感情の連鎖は僕には無いが、そうだろうという共感はある。抗いがたい恋の行方も、良く分かるのである。そういう意味では、やはり性別なのでは無いということを、自然に表現されているということなのだろう。
 ある意味で自分の思いを相手に押し付けているということで、表題があるのかもしれない。それは確かにエゴかもしれないが、エゴは愛でもある。つまりは、どう考えますか、という問いかけなのであろう。
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