卯の花むらむらと

2008-07-09 | 【樹木】ETC
 【新古今和歌集】
 卯の花のむらむら咲ける垣根をば雲間の月の影かとぞ見る(白川院)
 卯の花というのは、ウツギ(卯木、空木)が初夏につける白い花。ウツギは、ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木である。茎の髄が無く中空になっているところから、空木(ウツギ)と呼ばれるようになった。卯の花に匂いはない。刈り込みに強いところから、かつてはよく生け垣に使われた。
 古今、新古今の夏歌に頻出する。初夏の訪れとともに白い花をいっぱいつける。それで、上のような歌となる。下の歌、文部省唱歌「夏は来ぬ」(佐々木信綱作詞)は誰もが口ずさんだことと思う。
 卯の花の匂う垣根に
 時鳥(ホトトギス)早も来鳴きて
 忍び音もらす夏は来ぬ

夏衣着て幾日か

2008-07-09 | 【樹木】ETC
 【新古今和歌集】
 夏衣着て幾日にかなりぬらむ残れる花はけふも散りつつ(源道済)
 「はあ、そうですか」と言うくらいで、特にどうという歌とは思えぬ。花とは、何の花なのだろうか。花の季節といえば、春なのだろうが、夏に咲く花も少なくない。一般的には、夏の花には白いものが多いように思う。春の花に較べると、派手さはないようだ。
 先日、ブログに記したリョウブ(令法)の花も、いま目立ちはするが、特に美しいというものではない。
 和歌は、「新古今和歌集/久保田淳訳注/角川ソフィア文庫]の夏歌・巻第三から選び出していくつもりだ。110首が収められている。

花の蔭なき木のもとに

2008-07-09 | 【樹木】ETC
 【新古今和歌集】
 散りはてて花の蔭なき木の本にたつことやすき夏衣かな(慈円)
 新古今和歌集の夏歌から、植物が出てくる歌を順次取り上げてみることにする。ここのところ、ブログ記事に何を書こうかと惑うことがよくあり、無理に書くと単なる日常の感想になってしまうことが多い。それで、何か本を定め、それを刺激に一言というやり方をしようかと思った。去年、芭蕉の「奥の細道」を取り上げてやった手法だ。今回は、「新古今和歌集」でという次第である。
 上にあげた歌の意趣は、次のようなものかと思う。
 夏がやってきた。
 花の散ってしまった木のしたに佇む。
 花がないので、心が騒ぐこともなく、安らかである。
 更衣もした。
 裁断がた易いひとえの夏衣を着て。
 更衣、ノーネクタイはいいが、28度設定というのは、不快だね。