風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

見識・哲学・信念

2005-08-25 | 風屋日記
文芸春秋今月号を買って読んでいる。
特集は「60年前の8月15日、私の思い出」
たくさんの方々がそれぞれの体験手記を寄せている。

一番印象的だったのは、どなたとどなたの手記か忘れたが、
真珠湾攻撃の第一報がラジオから流れた時、
旧制一高(現東大教養学部)と立命館のそれぞれの校長が
それぞれの場所で異口同音に「エラいことをしてくれた!!」と叫んだことだ。
海軍省や外務省の中枢など、世界情勢に明るい場所におられた方々も
「困ったことになった」と眉をひそめたらしい。
どんな時代にも見識を持った人はいる。
・・・が、何人ものそういう方々がそれなりの場所で発言しても
結局流れをとめることはできなかった、というのも恐ろしいことだ。

美輪明宏さんが長崎で被爆していたということも初めて知った。
それも爆心地からそれほど離れていない自宅で。
奇跡的に無傷で済んだらしいが、
その日、彼の目に映ったすべてのことが、その後の彼を決定づけたという。
美輪さんというと化粧と女装で有名なシャンソン歌手だが、
全てのものが色を失い、全身赤剥けた人の獣のような声を聞いたあの日を思い、
色とりどりのものを身につけることを「平和の証」にしているのだという。
もちろん化粧も歌も「自由の証」だ。
それが彼の哲学であり、主張でもある。

昭和49年にルバング島で発見された小野田寛郎元陸軍少尉の手記も載っていた。
帰国した時のマスコミのカメラのレンズが銃口に見えたという。
上官の命令に従い、自らの意志と信念を強く持って、
ジャングルの中で生き抜いた29年間だったのだろうが、
帰国後の自分を見る大衆の傍若無人な目と、無責任な発言にショックを受けた。
これだけ強い意志と信念が、今の時代の人達の誰が持っているだろうか。

見識、哲学、主張、意志、信念・・・。
現代に欠けているものばかりだと思うのは私だけ?
だからといって、それが「権利より義務」をうたう改正憲法や
「自虐的史観」から「伝統的価値観が醸造する愛国心を育てる教育」に変えることで
それらのものを現代人に思い出させることになるとは全く思わないが。
あえていうなら(あくまで個人的な考えだけど)、
教育における教養主義や地域における社会教育が育む概念のような気がする。

  ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

自分が提案した「改革」に反対する人間を「改革反対派」と決めつけ、
選挙で公認しないばかりか対抗馬を公認候補として立候補させる某政党。
「これは『私の』改革に賛成か反対か、極めて単純な選択です」と声を張り上げるが、
何やら反対派が当選したあかつきには、また復党させる考えがあるとのこと。
バカバカしい茶番だ。
見識も、哲学も、信念もそこにはない。
自分勝手な主張はあるように見えるけどね。
コメント (5)
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