風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

イーハトーブフォーラム

2005-08-10 | 風屋日記
昨日はお色気さんのお誕生日だったそうで(おめでとうございます)、
それを祝ってのことかどうか分からないが(笑)、
今日8月10日は「イーハトーブフォーラム2005 光と音のページェント」と題して、
花巻で毎年恒例の花火を中心としたイベントが行われる。
ちなみに「イーハトーブ」とは「いわて」のエスペラント語読みをもじって、
宮沢賢治さんが名付けた「理想郷」の名前だ。

イーハトーブフォーラムは他の地域の花火大会とは違い、
打ち上げ数は7千発ほどと比較的少ないものの、
賢治さんの歌の合唱やライトアップイベントなどがプログラムされており、
北上川の河原に観客が大勢集まって音、光、色を楽しむ夏のイベントだ。
それもワイワイ騒ぐテンションの高いノリではなく、
河原で見ているとほぼ真上に打ち上げられる花火も含めて、
しんみりと感じる雰囲気になっている。
世界、宇宙へ拡がる生きとし生けるものへの思い。
世界中の貧困撲滅と平和への願い、
ささやかな生活の中に見い出す幸せへの希望。
そういう賢治さんの思想がこのイベントには込められていて、
ちゃんとそれらが表現できていると思う。
願わくば、このイベントを見る人達の心の中にも
そういうともしびが点りますように。

さて8月10日は、60年前の花巻空襲の日でもある。
こんな地方の田舎町にまで爆撃が行われたという悲劇。
40数人が爆弾や焼夷弾や機銃掃射によって命を落とした。
花巻の中心部も全て焼けた。
「空襲の日」ということもあって、この日にイベントが行われるのかは定かではないが、
(最近はわからないけど)かつては花火の後にたくさんの灯篭が北上川に流された。
花巻市民が60年前の空襲を忘れることなく
賢治さんの遺志を継いで、平和への願いを持っていられるよう・・・
そういう意図も、このイベントは持っているような気がする。

私の父も空襲で焼け出された。
当時祖父母と父が住んでいた家は町のまん中にあったので。
旧制高校を目指して浪人中だった父は、戦況悪化で受験勉強どころではなくなり、
花巻市内の軍需工場に働きに出ていた。
空襲警報により自宅へ走り帰った時に空襲が始まったという。
防空壕へ逃げる途中、賢治さんの弟の清六さんに遭遇、
清六さんは防空壕も危ないというので
賢治さんの遺稿や遺品を蔵に移している最中だったそうで、
父も必死で手伝ったと、生前聞いたことがある。
宮沢家にあった賢治さんの遺稿、遺品はそれで守られたが、
父の家にあった、賢治さんが書いた短歌の短冊類はすべて焼失。
「惜しいことをした」と生前父はよく嘆いていた。
でもね、命あっての物だね。
「生きなさい」「そして平和を願いなさい」と賢治さんが言っていたんだと思う。

花巻市民は大なり小なり賢治さんの思想の影響を受けて育っているが、
私が何かしらの哲学を持って生きているとすれば、
やはりそれは賢治さんの持っていた思想や理想がベースなのだろう。

毎年花火を見ながらそういう思いを強くしている。
コメント (5)
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