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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

馬を窒息死から救う方法

2014-11-25 | 呼吸器外科

今日は、

繁殖雌馬の副鼻腔蓄膿。

顔の変形はないので副鼻腔は閉塞してはいないが、x線検査で副鼻腔に曇りがある。

副鼻洞が閉塞し、原因菌が耐性菌になる前に外科処置をした方が良いだろう。

1月分娩予定の馬だが、円鋸手術は立位でできる。

前頭洞に孔を開けたら、膿性漿液があふれでてきた。

円鋸孔からファイバースコープを入れて内部を観る。

ひどく肉芽増勢したりはしていなかった。

                       -

ついで、呼吸で異音がして息苦しい繁殖雌馬。

内視鏡検査すると案の定、重度の披裂軟骨炎。

永続的気管開窓術をすることにした。

3月分娩予定なので立位でやる。

全身麻酔しても妊娠の維持にとってリスクはないと思っているが、

ただでさえ数%流産のリスクがある時期だ。

しかも食欲をなくすくらい呼吸困難の馬だ。

全身麻酔して手術したあと流産したら、麻酔したことを後悔するかもしれない。

立位で気管開窓術をすると上向きで手術するので首が痛くなるし、血だらけになるが仕方がない。

気管軟骨を4個部分切除した。

気管粘膜は切り取らず、皮膚に縫合した。

気管を皮膚に開窓しておくのに邪魔になる筋肉は部分切除した。

馬は鼻でしか呼吸ができないので、鼻道を閉塞させる病気が起こると窒息してしまう。

喉頭の病気でも、今回のように窒息してしまう。

気管切開してやることで馬を窒息死から助けることができる。

窒息死は悲惨な死に方だ。

馬の数が少なく、専門の馬臨床家が居ない地域でも馬を窒息死させないように気管切開・気管開窓手術をしてやってもらないか?

立位でできる手術だし。

という話を来年2月に岡山での日本獣医師会年次学会でしようと思っている。

                      -

午後、

1歳馬の肩関節のOCD。

夕方、

当歳馬の胸膜肺炎の剖検。

夜、

1歳馬の疝痛。

                     ///////

相棒はこのブロンズ像にも激しく反応した。

「ポートランディア」

レイモンド・カスキー

単におねえさん好き?

 

 



8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (piebald)
2014-11-25 21:46:44
 ミケランジェロも、システィーナ礼拝堂の天井画を描いたときは、ずっと上向きで、首は痛くなり、顔に絵具が落ちてきて、苦しい作業だったそうですね。
 言われなければわからない、手術態勢ですね。

 hig先生とオラ君の好みは、似てますか?
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>piebaldさん (hig)
2014-11-26 04:28:09
ミケランジェロはそのときいくつだったんでしょうね。無影灯の下でない手術や、無理な姿勢でやる手術はできるだけ避けたい私です;笑。

ワンコは飼い主に似ると言いますが・・・・私は激しく吠えたりはしていません!;笑
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Unknown (zebra)
2014-11-26 07:36:11
耐性菌と鼻腔の閉塞は関係あるのでしょうか。
円鋸孔からの処置で終了でしょうか。

学生時代に馬も外科も足蹴にしてきた人間が社会人になってやることなくて俄かにそれに手をつける事例が散見されますが、窒息死以上に悲惨です。
倒してやることが手術ではない、最適解で臨むことが大切だということではないかと思うのですが。
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>zebraさん (hig)
2014-11-26 18:14:52
ぐずぐず非外科的治療に固執していると耐性菌に菌交代し、いよいよ抗生剤も効かなくなって、手術しても治らない。というシナリオはありうるかもしれませんね。

最近、馬の外科麻酔ではstanding surgery とかminimally invasive がキーワードです。進歩ではあるのかもしれません。
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Unknown (zebra)
2014-11-27 07:46:53
コンパートメントを変化させるアプローチはもっと考えたいですね。
笑い話みたいですが、胸膜炎が腹腔内投与で治ったりします。
何の外科でも判断を誤ると治るはずのアプローチをしても治らなくなりますし、信用問題となります。
切る方法を考えるのも大切ですが、切らなくてすむ方法を考えるのも外科ですね。
右翼と左翼です(笑)
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>zebraさん (hig)
2014-11-27 20:48:21
切ること、孔をあけることの利点・欠点を知った上で、切らないこと・孔をあけないこと、できるだけ小さく切る・孔を開けるのでないと決断を誤ったり、遅れたりします。切るから外科ではなく、切るかもしれない病気は外科が診るゆえんだと思います。
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Unknown (はとぽっけ)
2014-11-27 21:24:40
 環境への対策の実践や体調管理による予防や早い治療開始が何よりかと思います。重篤化したときのヒトの治療法もだいぶ変わってきましたので、きっとの副鼻腔炎の外科的治療も侵襲の少ないものに変わっていくのではないかと思うのですが、呼吸方法が違うとだめでしょか?
 オラ君はやはり動きのあるものに反応したのでしょうか?こうのう姿勢でわんこに接することはままありますが。
 おねぃさん好きなオラ君好きなはとぽっけではあります。
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>はとぽっけさん (hig)
2014-11-28 04:57:56
ヒトの副鼻腔蓄膿の手術もかつては痛みの強い手術だったようですね。近年は手術することも減り、手術の外科侵襲も小さくなっているようです。
 馬はずっと長く通院するのが無理なこと、歯から感染する症例がかなりの率であること、高額な抗生物質を使い続けられないこと、副鼻腔の大きさがそもそもちがうこと、口呼吸ができないこと、MRIが使えないこと、などがヒトとちがう状況でしょうか。

たしかにおやつをくれる姿勢に反応したのかもしれませんね;笑。
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