馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

フレグモーネの末路

2019-07-05 | その他外科

まだ若い繁殖雌馬。

フレグモーネになって、治療をしていたのだが自潰し、

包帯を巻いていたのだが、肉芽が増勢し、切除に来た。

もう外へ大きくなった肉芽だけでなく、他の太くなった皮下織にも結合織が増勢し、その中に微少な膿瘍ができている。

こうなっては完治はしない。

体の抵抗力が落ちたときに再発を繰り返す。

塊状の肉芽を切除し、焼きごてで止血した。

このように肉芽増勢した理由がsarcoid化なのかどうか、パピローマウィルス検査に出した。

             ー

今年、初種付けして受胎している繁殖雌馬。

壁を蹴る馬で、後肢を腫らすことがあったのだそうだ。

それで、フレグモーネだとなって獣医師に診せるのが遅くなった。

抗生物質療法を10日間以上続けているが、自潰し、肢の形や蹄の動きもおかしい、とのことで来院した。

馬は、後肢は、球節を屈曲させると飛節と膝も屈曲する。そのとき、蹄関節も屈曲する。

こういう後肢の曲がり方、球節が屈曲しているのに蹄関節が伸展しているのは、屈腱の機能がおかしくなっているのだ。

腱鞘にも感染が起こり、屈腱が伸びるか切れるかしてしまったのだろう。

もうまともに歩けるようにはならないし、痛みも完治しない。

いずれ対側肢が蹄葉炎になったら立てなくなる。

あきらめることになった。

深屈腱は切れてはいないようだった。

屈腱腱鞘炎は起こしている。

種子骨靱帯も伸びてしまっているのだろう。

趾のメインの血管の中に大きな血栓ができていた。もう血行が途絶えていたはずだ。

              -

フレグモーネはこじらせると完治しなくなる。

よくある病態なのだが、致命傷になりうる病気だと思って治療・管理する必要がある。

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きのうは、午前中、競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。去勢もいっしょに。

午後は、競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

競馬場にいるときから相談されていたので、私が執刀した。

夕方、繁殖雌馬の疝痛。

ひどく痛くて立っていられない。

夜間放牧のために昼過ぎに放したのだが、夕方たまたま疝痛しているのを発見できた、とのこと。

結腸捻転だった。

発見と決断が早かったので大丈夫だったが、危なかった。

手術が終わったのが7時過ぎ。

カルテを書きながら、つまむ夜食はサクランボ。

贅沢だな~

この繁殖雌馬、麻酔は覚めているのになかなか立ち上がろうとせず、

起きて入院厩舎へ移せたのは9時近かった。

激痛でのた打ち回ってへばっていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 



4 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2019-07-05 06:36:45
 早期発見、早期治療。原因がわかっていればそこへの対処。
 蹄をみると、あまりお手入れしていないかも。と思わされる。
 それでも受胎しているのかぁ。酷な気がする。
 たまたま発見するにも観察眼。
 自ら受診できないおんまさん、大変かもしれないけど、大事に管理しなくちゃですね。
 サクランボ、今が旬ですね。子供のころは毎日木に登って取り放題、食べ放題。雨で割れたり傷のあるものは食べてはいけない。夜は食べ過ぎないように。と教わりました。
 放牧地、いい牧草が育っているでしょか?
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>はとぽっけさん (hig)
2019-07-05 19:06:52
こうなってしまうと痛くて肢をあげられないし、装蹄師さんも触るのを嫌がるし、蹄の手入れどころではないのかもしれません。

二頭とも繋が白い肢ですから、繋皹から来たのかもしれませんが、その管理も難しいです。

サクランボ食べ放題!良い子供時代ですね。
この頃、雨が多すぎるかもしれません。
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Unknown (平岡)
2020-06-23 10:23:30
肉芽を切除したら、もう肉芽が盛ってきたりフレグモーネ再発しにくくなるのでしょうか?
私の愛馬アルテミスも肉芽があります。
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>平岡さん (hig)
2020-06-24 04:43:09
こういう贅性肉芽は切除してもまた盛り上がってきます。馬サルコイド化していることもあります。
皮下織も肉芽増勢しているので、簡単にはひかないのですよね。
血行の悪い組織ができあがり、その中に菌が小さい膿瘍を作っているので、抗生剤も届きにくく、治まったように見えても、再発します。
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