真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「OL金曜日の情事」(2000/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:岡輝男/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/スチール:津田一郎/助監督:佐藤吏/監督助手:下垣外純/撮影助手:岡部雄二/現像:東映化学/出演:岡田智宏・かわさきひろゆき・池島ゆたか・山崎瞳・佐々木麻由子・時任歩)。男優陣が先に来るビリングは、本篇ママ。
 三田村香織(山崎)が支部長の唐沢(かわさき)に茶を出す、佐田物産のオフィス。徐々に与へられる情報も込みでデスクの並びを整理すると、画面中央奥扇の要に唐沢。向かつて左列が奥から福俵満・八神純平(岡田)、そして三田村。右列は同じく、同時進行時期の有無まで含め前後は不明なものの、純平年上の元カノ、兼現唐沢不倫相手の伊勢志摩(佐々木)。真ん中が実家は坊主頭から連想させる、お寺ではなく教会の岡輝男で、右列一番手前は佐藤吏。下垣外純も、後にワン・カット見切れる。香織と純平は、周囲には内緒で毎金曜日純平の部屋にて逢瀬を重ねる仲にあつた。事後、純平は香織に、唐沢に仲人を頼む心積もりである旨をシレッと伝へる。事実上の、プロポーズである。感激する香織に純平は、祖母の形見である手鏡を贈る。香織の、幸福な帰途。手鏡を覗き覗き歩いてゐた香織は、ただならぬ気配に身を固くする。歩道の上を歩いてゐたにも関らず、後ろから突進して来た何者かの車に轢かれ香織は絶命。身寄りのない香織の葬儀を、同僚一同で済ませた週明けの月曜日。唐沢以下、佐田物産の面々は驚愕する。少し遅刻したとはいへ、死んだ筈の香織が普通に出社して来たからだ。香織には足もあり、特段変つた様子は認められない。一人平然とした香織を余所に、誰も事態を呑み込めない中、復縁を図る志摩が純平を女子トイレに連れ込み喰ふ一幕も挿み込みつつ、唐沢は佐田物産会長の佐田(池島)にお伺ひを立てに行く。佐田いはく、香織は自分が死んだと認識出来てゐないのではないか。四十九日を経過すると成仏するかも知れないので、それまでは様子を見るやう佐田は唐沢に提案する。捻くれ口を叩くと、如何にも日本の経営者のいひさうな舌先三寸ではある。ここでアーパーな造形の時任歩は、佐田の孫娘、ではなく愛人の和美。唐沢をチャッチャと追ひ返した佐田が、和美を卓上に載せ事に及ぶのはいいとして、灰皿の煙草の火をキチンと始末してゐない点には不必要にハラハラさせられる。佐田鶴の一声を受け、とりあへず静観する形―然しその間、佐田物産は給与は支払ふのか?―で平穏を取り戻した日常が香織の死から四十日を経過した時、純平は意を決する。たとへ幽霊であつたとしても、香織への想ひを確かなものとするために、改めて彼女と結婚することを。
 岡田智宏の二枚目ながら何処か朴訥とした持ちキャラが、常識的には頓珍漢に思へる決意にも強く力を与へる、意外と美しいラブ・ストーリー。かわさきひろゆきと池島ゆたか―と時任歩―が主に牽引する序盤のコメディ基調から、純平の決意を起点に俄にロマンティックな純情物語へと変貌する、中盤の転調がまづ力強く決まる。なほも失速することなく、濡れ場も踏まへ周到に積み重ねられた焦燥と、小道具の巧みな使用法とで一件を決着させるクライマックスは実に鮮やか。サスペンス要素の結実も果たし始終が着地した末に、向かふ先は香織の郷里か、純平はローカル線に揺られる。回想を通し改めて山崎瞳の裸を情感も豊かにタップリと見させた上で、岡田智宏の安らかな表情が、裸映画としても、裸の娯楽映画としても充実した一作を、穏やかに締め括る。量産型娯楽映画の底力をも感じさせる、スマートな逸品である。

 最後に、観てゐて躓いた数字に関する瑣末を一点。香織が命を落としたのは金曜深夜につき、翌土曜日からの起算としても、純平が腹を固める四十日目は水曜日。二度目の求婚が、純平宅でなされるゆゑ矢張り金曜日だとすると四十二日目。唐沢に正式に仲人をお願ひするのが、最速でも週末挟んで四十五日目。となると、そこでの話の流れ通りに日曜日の挙式では、佐田が適当に言ひ出した方便ルールともいへ、四十九日を二日通り過ぎてるぞ。そこは慌てとけよ、純平(´・ω・`)


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