◉秋の赤

2018年11月14日(水)
僕の寄り道――◉秋の赤

突然の通り魔事件に慄きながら、事件現場となった横浜市神奈川区にある「大口通商店街」の映像に驚いた。JR 横浜線大口駅で降りたことがないので、雪国の雁木作(がんぎづくり)のような商店街が横浜にあることを初めて知った。ニュース映像の向こうに垣間見ただけで巨大商店街とわかり、横浜三大商店街の一つだという。

道路に庇を延長した片側式アーケードなのだけれど、商店が面した県道 111 号線が狭隘なので雪国の生活道路のようだ。Google マップのストリートビューを見ても、撮影の車が通行に難渋した様子がわかる。実際に行ってみたい街並みを久しぶりに見た。行ってみる前に、血なまぐさい猟奇事件の被害者が命を落とされず、犯人も迅速に逮捕されたので少し安心した。

カリフォルニア州の山火事もひどいことになっている。住宅地や高速道路に迫る火が赤い舌のように見え、舐めつくすような火という表現に相応しい光景を久しぶりに見た。

幼いころ住んでいた東京下町で、近所のロウソク工場が火事になり、いざとなったら逃げるから着替えろと深夜に叩き起こされた。夜の火事は実際より近くに見える。真っ赤な炎を見ている頬が熱い。身体ががたがた震えるのを初めて体験した。

太宰治は高校教科書で初めて読んだ。読んで好きになって高校卒業までにほとんどの作品を読んだ。そのきっかけとなったのが教科書の『新樹の言葉』で、
「気のせいか、私の眉にさえ熱さを感じた。私は、たちまちがたがた震える。火事を見ると、どうしたわけか、こんなに全身がたがた震えるのが、私の幼少のころからの悪癖である」
というのを読んで、同じような人がいるんだなぁと親しみを覚えた記憶がある。

眉にさえ熱さを感じるような山火事現場の消化活動を見ながら、自分があそこにいたらがたがた震えてしまって役に立たないだろうと思う。

(2018/11/14)

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