沿革


Z7 + NIKKOR Z 24-70mm f/4 S

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会社の歴史について、詳しく書く必要が生じた。
いわゆる沿革である。
古い書類が無いか探してみたが、なかなかみつからない。
この数年のことならまだしも、何十年も前の資料となると、ほとんど残っていない。
何度か引っ越しているので、その際に大半が失われてしまった。

いや、実はこの数年の話でさえ、あやふやなことが多いのだ。
時代の変遷が早くて、それに応じてこちらも変わっていかなければならない。
数年前にやっていたことが、あっという間に「過去の話」になってしまう。
恐らくそれが理由で、記憶からどんどん消されていくのだ。

増してや僕が生まれる前の話なんて、事実上調査は不可能である。
何しろ当時を知る人のほとんどが生きていないのだ。
唯一母親が当時(60年くらい前)のことを知っているが、その記憶とて完全とはいえない。
たとえ覚えていたとしても、その時の母親の立場から見た内容となる。

文書にするとなると、具体的な年を書く必要があるが、それがかなり難しい作業であると分かってきた。
会社の設立日など登記されていることならわかっても、何年にどこと取引を開始したとか、いつその製品を開発したとか、そういうことは記憶に頼るしかない。
帳簿を見れば分かると言っても、何十年も前の書類など残っていない。
結局は「この頃のはずだ」というあやふやな数字にするしかない。

何日かかけて、何十年にも渡る沿革が出来上がった。
縦にグンと長い年表である。
さすがにこれだけ歴史があると、なかなか見応えがある。

決して順風満帆の日々であったわけではない。
大変な思いを繰り返した、まさに血と汗と涙の歴史である。
その日々を実際に体験した人達に見せると、読んでいるうちに一様に無言になる。
懐かしさばかりでなく、どこか辛さや悲しさも感じているようだ。

沿革に書いてあることは、表面上のいわば「きれいごと」ばかりである。
しかしその裏では様々な出来事があった。
いろいろな人の顔が思い浮かぶ。
亡くなった人、問題を起こしてやめていった人、裏切った人、突然行方不明になった人・・・

多くの人の人生が交差し、通り過ぎ、そして消えていった。
今ここにいるのは、それらを乗り越えて残った人だ。
表を見つめる顔の表情から、過去の出来事が走馬灯のように蘇っているのが分かった。
作り上げた一枚の紙が、とてつもなく重いものに思えた。
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