COLKIDが日々の出来事を気軽に書き込む小さな日記です。
COLKID プチ日記
総力
D810 + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM
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シン・ゴジラを見て思ったのは、これは海外では分かりにくい、というか理解できない内容なのではないか・・ということだ。
未知の巨大生物、しかも放射能を撒き散らす怪物に、人類が全力で立ち向かう。
これだけなら、一般の観客が喜ぶプロットといえる。
しかしシン・ゴジラは、それだけでは片付けられない作品である。
この映画は、現在の日本でそれが起きたらどう対処するか、非常にリアルなシミュレーションになっている。
個人のヒーローではなく、大勢の人間が結束して一丸となって向かっていく。
やられて死んだら、すぐに次の集団が行く。
トップがやられれば、若手がその後を継いで戦う。
ひとりのヒーローが活躍して、最後はハッピーエンドで万歳という、ハリウッド式の映画とはまったく違う。
さらには日本特有のお役所内部の事情がからんでくる。
怪物が目の前に迫り、被害がどんどん広がっているというのに、まずは違法でないか確認しないと戦闘行動には移れない。
そういう合理性に欠ける日本特有の事情を理解していないと、政府の奇妙な動きは理解できないだろう。
専門用語も多く、会話は早口で聞き取りにくく、説明の字幕(もともと読みきれないことを前提で出しているそうだが)も鬼のように流れる。
恐らく海外での公開は、会話だけでも吹き替えにしないと難しいだろう。
それでも普段ネット社会に十分に順応出来ている人でないと、ついていけない情報量とスピードである。
この映画は、3.11の東北の大震災とそれに続く原発事故の体験を再現している。
国家が未曾有の危機に直面した際に、日本人が取った行動がベースになっている。
つまり、あの異様な体験をした人にしかわからない内容なのだ。
そういう危機に瀕した経験が無く、映画に娯楽のみを求めている人には、ちょっと理解できないのではなかろうか。
「怪獣が出てきて暴れたら大変だろうな」という絵空事ではなく、実体験を反映させた非常にリアルな物語なのだ。
この映画で最も重要な事は、危機に対して国民が逃げないということだ。
もちろん住民は避難させる。
しかし自分に責任のある仕事を持つものは、泣き言を一切言わず、全力で事に当たり、率先して自分が歯車の役割を果たす。
自分の身を呈してでも、日本という国家を守ろうとする。
この行動は、先の大戦で暴走につながった要因でもあるので、神経質に拒絶し、警戒する人もいるだろう。
しかし多くの日本人が、実際に自分もやはりそういう行動を取る、という気持ちを、どこかに持っているのだと思う。
この映画のように事が上手く運ぶかどうかはともかく、そういう心を持つ人が多いということだ。
それ故に強い共感を呼びヒットしているのだ。
一番大切なものは人間の命だ。
ということは誰でも知っている。
しかし「だから逃げる」と「だから戦う」では正反対である。
「シン・ゴジラ」はその本質的な部分を問われる作品なのだ。
これはかなり純粋に日本人のみを対象として作られた映画だと感じた。
そういう特殊な作品に300名を超えるキャストと膨大な予算を投じたこと自体が驚きである。
海外でどのような評価がなされるかわからないが、ピントの外れた意見も多く出されるだろう。
もしこれが海外で正当に評価されるなら大したものだと思う。
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