飛鳥大仏


D3X + AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED

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最初に飛鳥を訪れた時、もっとも感銘を受けたのが飛鳥寺にある飛鳥大仏であった。
つぎはぎだらけの顔が、一種独特の迫力を持つ大仏である。
初めての出会い以来、飛鳥大仏は僕のもっとも敬愛する仏像となった。
今回の旅も、飛鳥大仏と再会することが、最大の目的であった。

飛鳥寺の前身にあたる法興寺は、6世紀末から7世紀初頭にかけて蘇我馬子により作られた、日本最古の本格的仏教寺院といわれている。
当時は五重塔を中心とした壮大な寺院であった。
本尊であるこの飛鳥大仏(釈迦如来)は、鞍作鳥の作とされている。

平城遷都で、法興寺は奈良市に移転して元興寺となったが、飛鳥にある寺院は本元興寺と名を変えてその場に残された。
しかしその後2度の火災に遭い、寺院は時代とともに著しく衰退した。
激しく損傷を受けた飛鳥大仏は、一時は野ざらしにされていたという。
現在の本堂は江戸末期に再建されたもので、敷地も狭く、当初の壮大な寺院の面影は無い。
飛鳥大仏も相当の補修を受けており、オリジナルの部分は頭部の上半分、左耳、左手の指の一部のみとされている。

しかし現在飛鳥大仏の立つ位置は、蘇我馬子の建てた法興寺中金堂の跡地であることが判明しており、飛鳥時代と変わらない場所に安置されているという。
つまりこの大仏はほぼ1400年間、この場所で人間の歴史を見てきたことになる。
恐らくそのことが、この大仏が独特のパワーを発する理由になっている。
飛鳥大仏の細長い目は、まさにこの場所で、聖徳太子を初めとする多くの歴史的人物の姿を見てきたのである。

飛鳥大仏は暗い本堂の中で、30数年前に来た時と、まったく変わらない姿で鎮座していた。
その姿に接することが出来ただけで、今回の旅の目的は達せられたと思った。
1400年間、誰かがこの大仏様を守ってこられました。これからも誰かが守っていくのです・・とお寺の方が説明されたのが印象的であった。

飛鳥大仏は、素朴でごつごつしていて、得体の知れない力に溢れている。
Mrs.COLKIDもそれを感じ取ったのか、圧倒されたように、その姿を見つめていた。
これは僕の一番好きな大仏だ・・僕がそうつぶやくと、同じ思いを持つのか、側に立っていた年配の見知らぬ女性も頷いていた。

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