自公が300議席に迫る勢いという。暗澹たる気分にならざるをえない。以前の項と重複する部分もあるが、自分なりに争点を整理してみたい。
争点その①=<アメリカ的対日本的>
ニューオーリンズの惨状に感じたのは、<官>に捨てられた人々がいかに多いかということ。<小泉―竹中改革>もその方向で、非正規雇用とリストラで大企業は立ち直ったが、庶民の生活は苦しくなる一方だ。この4年間、貧富の差は拡大し、国民年金未納者は200万人以上増えた。日本は米国化の一途を辿っている。地方のゴーストタウン化は既に進行中で、都市も遠からずニューオ-リンズのようにスラム化するだろう。
小泉首相が議論を省いて郵政法案成立を急いだ背景にあるのは、<年金・簡保の開放>を求める米国の「年次改革要望書」である。イラク派兵といい、郵政民営化といい、米国の顔色を窺う政権に「NO」と言うしかない。
争点その②=<宗教対理性>
首相は<自民党をぶっ壊す>と絶叫して支持を得た。威勢はいいが、しっかり保険を掛けている。従来の基盤を失っても、補って余りある創価学会に支えられているのだ。昨日(9日)の「ニュース23」で立花隆氏は、「小泉改革に実態はない」と米誌「ニューズウイーク」の論調を例に話していた。別項(2日)の佐野眞一氏といい、立花氏といい、世の中を冷徹に見据える<巨視>が否定的に捉える<小泉改革>を、<絶対真理>の如く信仰する傾向は危険極まりない。<選挙区は自民に、比例区は公明に>が自公の戦術なら、合併して<小泉教+池田教>を作ればいい。下馬評通りの結果となれば、日本も<宗教国家>に舵を取ることになる。
争点その③=<民主主義は生き残れるか>
解散を読めなかった亀井氏らについて、「甘い」と笑った新聞社系コメンテーターもいるが、解散自体の問題点をマスコミは正しく伝えなかった。暴挙を快挙の如く伝え、国民が喝采を送れば追随するというマスコミの姿勢は、関東軍の暴走を許した戦前の愚を繰り返すものだ。<民>に優しくない現政権を、痛めつけられる<民>が支持する現状は、国を挙げての<マゾ化>であり、<自由から逃走>といえるだろう。
興味深いのは、保守派が首相の手法に異を唱えている点だ。堺屋太一氏(元経企庁長官)は「月刊現代」で近衛政権と小泉政権を重ね合わせ、民主主義の崩壊に警鐘を鳴らしている。堺屋氏は同時に、<官→民>を唱える小泉政権の本質は<官僚丸投げ>と批判していた。梅原猛氏(中曽根政権ブレーン)、後藤田正晴氏(元官房長官)も民主主義擁護の立場で、首相の手法を否定している。
争点その④=<戦後60年の総括はどこへ?>
首相が<郵政一本勝負>を主張しようが、マスコミは真の争点を設定すべきだ。<戦後60年の節目に、日本がいかに過去を総括し、どのような未来を築くべきか>……。これこそ重要な争点になるはずだったが、憲法、アジア外交、イラク派兵、靖国参拝など派生する問題は一切合財、幼稚な喧騒に掻き消されてしまった。メディアの状況は絶望的だ。
俺の考えに一番近いのは社民党だが、リアリスティックに判断すると、民主党に投票せざるをえない。共産党支持者の動向も気になる。比例区で共産党に投じるのは当然として、都市圏で支持票の3分の1が民主党に流れたら、自民党は確実に減る。共産党の頑迷さは変わるはずもないが、支持者の柔軟な対応に期待したい。
評論家やマスコミの<首相との距離>を測るのも、無聊ゆえの楽しみだった。選挙前には野党をネチネチ攻撃し、与党を利す報道を繰り返していた「週刊文春」と「週刊新潮」だが、今回は反小泉で歩調を合わせている。最新号の「週刊文春」など、<小泉=金正日=創価学会>という図式を前面に出して批判していた。桜井よしこ氏、西尾幹二氏といった右派も、拉致問題や靖国参拝を利用するだけの首相を強烈に批判している。「米国人」竹村健一氏は、「自国」の利益が一番とばかり、小泉支持を繰り返しているが……。
意外な<小泉教徒>はテリー伊藤氏だ。首相と岡田代表を対比し、いずれが女性にとって魅力的かを論じて、首相を褒めそやしていた。ネット上でもいろいろ書かれているほどだし、事情通のテリー氏が小泉氏の素顔(女性に対する)を知らぬはずもない。よくも嘘八百が言えたものだ。失望したのが古舘キャスターだ。<小泉教>に洗脳され、中身は抜きに<郵政民営化絶対論>に憑かれている。各党代表者の討論で上述の「年次改革要望書」が俎上に載るや、興奮状態に陥って居丈高に発言を遮った。郵政民営化の本質を突かれたと感じ、焦ったのかもしれないい。正体見たりとはこのことだ。何せかつての<猪木教徒>だ。<小泉教>に転ぶのも当然の帰結かもしれない。
とまあ、これまで抑えていた分、書き出したら止まらなくなった。<政治ショー>が最悪の結末で終わったら、本腰を入れて仕事でも探そうか。NFLにどっぷり浸かるのも悪くはないが……。