酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

<3・11>から3年~蓋を吹き飛ばす日は来るか

2014-03-12 22:53:11 | 社会、政治
 <3・11>に非人間的な響きを覚えるのは俺だけだろうか。死者への悼み、遺族の絶望、故郷喪失者の悲しみを捨象し、原発事故が露呈した<国家の歪み>を象徴する記号として、俺も使い回してきた。

 阪神淡路大震災時、甚大な被害を他人事のように眺め、東京で逸楽の日々を過ごしていた。非人間的としか言いようのない俺だが、妹の死(12年5月)がきっかけに、少し人間に近づけた。東日本大震災による死者1万5884人、行方不明者2633人、震災関連死2916人……。肉親、家族、友の不在に苦しむ方は、数倍に上るはずだ。二つの地震で亡くなった方に、改めて哀悼の意を表したい。

 福島原発事故の実態が明らかになって抗議の声が上がり始めた時、俺の脳裏に尾崎豊の「卒業」、マニック・ストリート・プリーチャーズの「輝ける世代のために」が鳴り響いていた。

 ♪人は誰も縛られたかよわき子羊ならば……これからは何が俺を縛りつけるだろう……仕組まれた自由に誰も気づかずに あがいた日々も終る この支配からの卒業……

 1985年に作られた「卒業」は、<3・11>当時の、そして3年後の日本の状況を見事なまでに抉っている。日本人は支配からの卒業を望むどころか、権力に身を委ねているようにさえ思える。

 「卒業」に登場する少年は校舎の窓ガラスを壊して回った。<体力も気力もない俺だが、窓が割れたことをブログで伝えたい>と記してから3年、俺は立ち位置を明確に、石を集める側に転じた……。こう書くと、爆弾でも作っているのかと疑われそうだが、まさか! 具体的には記さないが、かよわき子羊に相応しい決心をしただけのことである。

 「原発ゼロ大統一行動」(9日)の集会(日比谷野音)について前稿の枕で記したが、鈴木薫さん(いわき放射能市民測定室たらちね事務局長)のアピールに感銘を受けた。「たらちね」は俺が会員である「未来の福島こども基金」とともに、沖縄への移住を含め、福島の子供たちを放射能汚染から守るために活動している。俺は鈴木さんのメッセージに、「輝ける世代のために」の歌詞を重ねていた。

 ♪これを黙認すれば、おまえの子供たちが耐えなければならない。これを許容すれば、子供たちの世代が同じ目に遭わなくてはならない……

 スペイン市民戦争をテーマに作られた同曲にとって、〝これ〟は自由を抑圧するファシズムと暴力であり、鈴木さんにとっては放射能汚染と原発再稼働である。「原発ゼロ大統一行動」にはそれぞれの〝これ〟を抱えた3万2000人が集まった。

 <3・11>の捉え方は様々だった。辺見庸は以前から、<この国の崩れと狂いの兆し>を誌的に表現し、東日本大震災を形になったカタストロフィーと受け止めていた。詩人のペシミスティックな直感は、3年後の今、悲しいほど的中する。被災地復興が進まないのに、国民は東京五輪開催を慶事と受け止めた。「放射能汚染はコントロール下にある」と世界に向け虚偽の発信をした安倍首相を筆頭に、<良心と倫理の崩壊>は隠せなくなっている。

 大震災は悲劇だが、底から立ち昇った怒りの蒸気が蓋を突き破るのではないか……。そんな気配が<3・11>直後、確かに漂っていた。反原発を長年訴えてきた小出裕章、広瀬隆、広河隆一氏らが「朝日ニュースター」に出演し、「ニュースの深層」キャスターの上杉隆氏は記者クラブを糾弾し、他のフリーランスとともに、隠蔽された原発事故の実態をテレビとネットで発信する。

 3年の間に空気は澱んだ。NHKを筆頭に大手メディアは安倍機関化し、重しを載せられた蓋は、しっかり閉じられてしまった。最も責めを負うべきは、<3・11>から一昨年末の総選挙までの1年9カ月、あまりに無策だった政治家たちだ。共産党や社民党の幹部は抗議集会で「再稼働反対! 野田政権を倒すぞ」とシュプレヒコールを上げていたが、野田政権後に自民党が権力を握ることは素人にだってわかる。脱原発でまとまろうとする動きは全く見えてこなかった。

 蓋を支配しているのは、一体誰だろう。<自民党―東電を含む財界―官庁―メディア>の連合体? 曖昧で拳のやり場に困るが、正体を見つけるヒントはある。2月上旬、岩上安身氏が小出裕章氏にインタビューした。示唆に富んだ内容なので、興味のある方は岩上氏のブログ、公開された動画にアクセスしてほしい。

 1月下旬、アメリカが日本にプルトニウム返還を要求したと共同通信が配信した。国内の反響は小さかったが、アメリカが安倍政権を見限ったのではないかと岩上氏は分析している。<日米原子力協定、日米安保条約の枠内で日本の原発は認められている>との小出氏の見解に則れば、蓋を支配しているのはアメリカということになる。

 アメリカはシェールガスへの期待から、脱原発にシフトチェンジしている。となれば原子力マフィアは、余ったウランを供給しなければならない。商売相手は日本、そして日本が原発を売り込むトルコ、サウジアラビア、UAEの可能性が極めて高い。

 自国は脱原発、日本は原発再稼働……。かくの如く腹黒いアメリカの動向を味方に安倍政権を叩く論調が、最近目に付く。情けない属国根性だ。蓋がアメリカなら、蒸気を満タンにしないと吹き飛ばせない。脱原発の長く厳しい闘いはこれからも続く。
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