酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「2055」~「滅びゆく国」のシナリオ

2006-12-21 07:11:49 | 戯れ言
 岸田今日子さんと青島幸男さんの訃報、亀田興毅のタイトル防衛と、昨日(20日)はニュースの多い一日だった。岸田さんと青島さんが多彩な才能を発揮されたのは、俺が生きた半世紀とピッタリ重なる。心から冥福を祈りたい。

 「ニュース23」のトップ項目は半世紀後――亀田が70歳になる頃――の背筋が凍る予測だった。厚生労働省が公表した人口推計によると、2055年の日本の人口は9000万弱(25%減)。労働力人口の比率が半分になる一方、高齢者(65歳以上)が4割を占めるという。財政破綻を来した夕張市と同じ構成で、「美しい国」どころか「滅びゆく国」になると警鐘を鳴らしている。

 移民受け入れは労働力不足解消の有効な方策だと思うが、政府与党は否定的だ。<日本人のアイデンティティー>を強調して教育基本法改正を強行する一方、<アメリカ化>を国是として推進する保守派の姿勢に矛盾を覚えざるをえない。青島さんは参院議員時代、佐藤首相(当時)を「財界の男妾」と攻撃して物議を醸したが、ブッシュ大統領の前で「ラブ・ミー・テンダー」(優しく愛して)と歌った小泉前首相など、「米国の男妾」と揶揄されても仕方ない。三島由紀夫が存命だったら、一刀両断に斬り捨てたことだろう。

 少子化対策の根底にあるのは、<財政的基盤の確立⇒婚姻率・出生率アップ>という図式だが、的を射ているのか甚だ疑わしい。アメリカやフランスの下層社会、移民社会の実相に迫った書物やドキュメンタリーに触れると、「意外な事実」を発見をする。差別の問題、健康保険加入率の低さなど、日本より厳しい状況に置かれていても、結婚は成立し、出生率も一定の水準を維持している。

 <愛=性=家族>の循環回路が詰まり、<愛><性><家族>がバラバラのピースになったことが少子化の原因だとしたら、事態は深刻だ。映画やゲームの仮想の<愛>の方に、お金に換算される現実の<愛>より高い価値を見いだしても不思議はない。商品化されたツール(風俗など)で<性>を楽しめるし、ネット上の連なりに擬似<家族>の温もりを覚えることも可能だ。理念や倫理が消えた日本は<精神的デラシネ国家>として、<ひょうたん島>のように漂流している。

 生物学の本によると、滅びゆく種は摂理として性衝動を抑制するという。興味本位の統計を鵜呑みにするわけではないが、日本人は総体として<セックスレス>に向かっているようだ。「日本沈没」を導いたのは一瞬の外在的な変動だったが、「2055」は内在的かつ継続的な腐食によって進行中だ。俺が生きているうちに、劇的転換をもたらす何かが起きうるだろうか。

コメント (5)
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