フェイスブックに登録しているが、友達はわずか4人……。そんな俺だが喧嘩友達はいる。紀伊國屋で先日、そのひとりのAと出くわした。「ピカデリーでこれ(指を立て)と映画を見る」という。〝おまえにそんな女はいないだろう〟と言いたげだった。二元論好きで上から目線の自信家であるAに近況を聞かれ、「ブログの読者が激減した」と言うと、「理由を教えてやるよ」とニヤリ笑い、踵を返した。翌日に届いたメールを抜粋する。
<おまえの緑の党入会は俺にとってツッコミどころだけど、少ない読者の大半は反発を覚えたはずだ。「緑の党」を創価学会、共産党、維新の会、社民党や生活の党に置き換えてもいい。日本人は中庸を好むから、極端、異質、未知を嫌う。何かの側に立つことは嘲笑の的になる。おまえのブログが、いや、おまえ自身が忌避感を抱かれたのは当然だ。党の仲間を読者にして減った分を補填するしかない>
なるほどね……。でも、<格差と貧困こそ日本の最大の課題>と考える俺は、党内ではアウトサイダーだ。ギャンブルと無縁の真面目な会員は、競馬予想に眉を顰めるに違いない。偽悪的なトーンに辟易するだろう。そもそも俺にとってブログは、忘備録、遺書代わり、不善を為さぬためのストッパーだ。読者が減っても、思いの丈を気楽に記したい。
さて、本題……。読書のBGMとして聴いているモリッシーの新作「世界平和など貴様の知ったことじゃない」(2枚組)が皮膚を食い破り、俺の内側に浸潤してきた。18曲はクオリティーが高く、モリッシー独特のアイロニカルな世界観に彩られている。
30年前を思い出す。ニートの走りだった俺は大学卒業後、フリーターをしていた。その頃(84年2月)、スミスの1st(輸入盤)を購入する。繰り返し聴いてレコードは擦り切れ、数カ月後に国内盤を買う。俺はその頃、勤め人になっていた。
国内盤の帯は「20年ぶりの衝撃」で、ビートルズ以来の新人登場という大仰なキャッチフレーズは、スミスの未来を言い当てていた。アルバム4枚で解散したが、英NME誌の読者投票で「20世紀を代表するバンド」に選出される。米最大のコーチェラフェス主催者は一夜限りの再結成を毎年オファーし、モリッシーとジョニー・マーが断りのコメントを出すのがお約束になっている。
25歳だったモリッシーは55歳になり、27歳だった俺は57歳だ。モリッシーの声が秘める得体の知れぬ魔力は健在だが、今の俺には心地良い。癒やしを覚え、眠くなるほどだ。この30年、俺は中身が変わらないままクチクラ化したのだろう。
同じくBGMとして重宝しているのは、ジャック・ホワイトの2nd「ラザレット」だ。〝永遠のギターキッズ〟も不惑まであと1年。ホワイト・ストライプス時代の斬新さはそのままで、エモーショナルでサイケデリックなブルースを奏でている。〝既聴感〟を覚え、時計を逆戻ししても針は止まらない。ノスタルジーを喚起する音だ。
最先端を聴くのがロックファンの存在理由と確信していたけど、今夏のフジロックではアーケイド・ファイアではなくマニック・ストリート・プリーチャーズを見た。再結成したトラヴィス、ルーツミュージックをベースにするルミナーズに心が和むのを覚えた。還暦が迫り、感性も変わってきたのだろう。
4年前のフジロックではローカル・ネイティヴスを発見し、ミュートマスの独創的なパフォーマンスに度肝を抜かれた。2度目になるダーティー・プロジェクターズも刺激的だった。その後、彼らはどうなったか。ローカル・ネイティヴスはブレークに至らず、ミュートマスは近況を聞かなくなった。ダーティー・プロジェクターズは普通のロックバンドになり、プリミティブかつ祝祭的な雰囲気が消えている。
最先端は瞬く間に消費され、1周遅れになる。アンテナが鈍くなった俺は今後、馴染みとの再会を楽しむことになるだろう。9月に発売されるインターポールとブロンド・レッドヘッドの新作が楽しみだ。















<おまえの緑の党入会は俺にとってツッコミどころだけど、少ない読者の大半は反発を覚えたはずだ。「緑の党」を創価学会、共産党、維新の会、社民党や生活の党に置き換えてもいい。日本人は中庸を好むから、極端、異質、未知を嫌う。何かの側に立つことは嘲笑の的になる。おまえのブログが、いや、おまえ自身が忌避感を抱かれたのは当然だ。党の仲間を読者にして減った分を補填するしかない>
なるほどね……。でも、<格差と貧困こそ日本の最大の課題>と考える俺は、党内ではアウトサイダーだ。ギャンブルと無縁の真面目な会員は、競馬予想に眉を顰めるに違いない。偽悪的なトーンに辟易するだろう。そもそも俺にとってブログは、忘備録、遺書代わり、不善を為さぬためのストッパーだ。読者が減っても、思いの丈を気楽に記したい。
さて、本題……。読書のBGMとして聴いているモリッシーの新作「世界平和など貴様の知ったことじゃない」(2枚組)が皮膚を食い破り、俺の内側に浸潤してきた。18曲はクオリティーが高く、モリッシー独特のアイロニカルな世界観に彩られている。
30年前を思い出す。ニートの走りだった俺は大学卒業後、フリーターをしていた。その頃(84年2月)、スミスの1st(輸入盤)を購入する。繰り返し聴いてレコードは擦り切れ、数カ月後に国内盤を買う。俺はその頃、勤め人になっていた。
国内盤の帯は「20年ぶりの衝撃」で、ビートルズ以来の新人登場という大仰なキャッチフレーズは、スミスの未来を言い当てていた。アルバム4枚で解散したが、英NME誌の読者投票で「20世紀を代表するバンド」に選出される。米最大のコーチェラフェス主催者は一夜限りの再結成を毎年オファーし、モリッシーとジョニー・マーが断りのコメントを出すのがお約束になっている。
25歳だったモリッシーは55歳になり、27歳だった俺は57歳だ。モリッシーの声が秘める得体の知れぬ魔力は健在だが、今の俺には心地良い。癒やしを覚え、眠くなるほどだ。この30年、俺は中身が変わらないままクチクラ化したのだろう。
同じくBGMとして重宝しているのは、ジャック・ホワイトの2nd「ラザレット」だ。〝永遠のギターキッズ〟も不惑まであと1年。ホワイト・ストライプス時代の斬新さはそのままで、エモーショナルでサイケデリックなブルースを奏でている。〝既聴感〟を覚え、時計を逆戻ししても針は止まらない。ノスタルジーを喚起する音だ。
最先端を聴くのがロックファンの存在理由と確信していたけど、今夏のフジロックではアーケイド・ファイアではなくマニック・ストリート・プリーチャーズを見た。再結成したトラヴィス、ルーツミュージックをベースにするルミナーズに心が和むのを覚えた。還暦が迫り、感性も変わってきたのだろう。
4年前のフジロックではローカル・ネイティヴスを発見し、ミュートマスの独創的なパフォーマンスに度肝を抜かれた。2度目になるダーティー・プロジェクターズも刺激的だった。その後、彼らはどうなったか。ローカル・ネイティヴスはブレークに至らず、ミュートマスは近況を聞かなくなった。ダーティー・プロジェクターズは普通のロックバンドになり、プリミティブかつ祝祭的な雰囲気が消えている。
最先端は瞬く間に消費され、1周遅れになる。アンテナが鈍くなった俺は今後、馴染みとの再会を楽しむことになるだろう。9月に発売されるインターポールとブロンド・レッドヘッドの新作が楽しみだ。















