<2425> 大和の花 (587) モミジガサ (紅葉傘) キク科 コウモリソウ属
湿気のある林内や林縁に生える多年草で、茎の高さは60センチから80センチほどになる。葉は直径が15センチから20センチほどの掌状で、モミジの葉のように裂け、傘状に開くのでこの名がある。また、葉はやや光沢があり、有柄で互生する。
花期は8月から9月ごろで、茎の先に円錐状の花序を伸ばし、白色の頭花をつける。頭花は3個から7個の小花からなり、小花は両性の管状(筒状)花で、長さは1センチ強、先は5裂する。花柱は2つに分かれ、先が丸く巻くように反り返る。総苞は筒状で、総苞片は5個。実は蒴果。
北海道、本州、四国、九州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では南北を問わず見られ、登山道でもときおり見かけるが、近年、シカによる食害が著しく、最近、レッドリストの希少種に加えられた。別名はシドケ、モミジソウなどと呼ばれ、春の若芽は山菜として食用にされる地方もある。 写真はモミジガサ(川上村など)。 金魚には金魚の運命買はれゆく
<2426> 大和の花 (588) テバコモミジガサ (手箱紅葉傘) キク科 コウモリソウ属
湿気のある林内や林縁に生える高さが30センチから80センチの多年草で、高知県の手箱山(1806メートル)で最初に見つかったのでこの名がある。根茎が横に這い群生することが多い。モミジの葉のように掌状に裂ける葉も管状(筒状)の花もモミジガサに酷似するが、全体的に小柄で、葉裏に脈が浮き立つ特徴により判別出来る。
花期は8月から9月ごろで、茎頂にモミジガサと同じような円錐状の花序を立て、長さが1センチほどの頭花を、花柄を伴って数個つける。頭花は4個から5個の白い管状(筒状)花からなり、先は5裂、雌しべの花柱が2つに分かれて先が丸く反り返る。総苞は筒状で、裂片は5個。実は蒴果。
本州の関東地方から近畿地方の太平洋側と四国、九州に分布する日本の固有種で、襲速紀要素系の植物。大和(奈良県)では紀伊山地に多いが、近年シカの食害が著しく、レッドリストの希少種である。写真はテバコモミジガサ(西大台ほか)。
太郎冠者昨日の蝉は何処にや
<2427> 大和の花 (589) カニコウモリ (蟹蝙蝠) キク科 コウモリソウ属
主に亜高山帯の針葉樹林内や林縁などに生える多年草で、群生することが多い。高さは50センチから1メートルほどになり、長さが6センチから10センチ、幅が10センチから20センチほどの腎円形の葉が普通3個、長柄を有し、互生する。縁には不揃いの切れ込みと鋸歯が見られ、この葉がカニの甲羅に似るのでこの名がある。
花期は8月から9月ごろで、茎頂に円錐状の花序を立て、白色の頭花をつける。頭花は3個から5個の小花からなり、小花は両性の管状(筒状)花で、花冠は5裂、花柱は伸び出し、2つに分かれて先が反り返り、目立つ。総苞は筒状で、総苞片は3個。実は蒴果。
本州の近畿地方以北と四国に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では紀伊山地の高所部、殊に大峰山脈の大峯奥駈道で見かける。シカの食害が著しく、一時はレッドリストの絶滅寸前種にあげられるほど減少していたが、シカの駆除が行われ、その効果によるものか、個体数を増やし、弥山(1895メートル)周辺では、シカ避けの防護ネット外でも群落が復活し、レッドデータブックでは絶滅危惧種に一段階緩められた。 写真はカニコウモリ。復活して花を咲かせる群落と花序のアップ(ともに弥山の山頂付近)。
処暑に思ふ似て非なる日の昨日今日
<2428> 大和の花 (590) ヤブレガサ (破れ傘) キク科 ヤブレガサ属
山地の林内や林縁に生える多年草で、花茎は枝を分けず直立し、高さ70センチから120センチほどになる。葉ははじめ1個が根生し、柄の先に絹毛を纏った傘のようにつき、深裂して破れた傘のように見えるのでこの名がある。茎葉は2、3個が互生し、下方の葉には長い柄があり、茎を完全に抱く。葉はいずれも円形で、直径35センチから40センチほど。7から9深裂し、各裂片は更に2中裂する。縁には鋭い鋸歯がある。
花期は7月から9月ごろで、茎の先に円錐状の花序を出し、白色または淡紅色の頭花をつける。頭花は7個から13個の小花からなり、小花はすべてが両性の管状(筒状)花で、長さは1センチ弱、花冠は5裂し、花柱は2つに分かれて反り返る。総苞は筒状で、総苞片は5個。実は蒴果。
本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島にも見られるという。大和(奈良県)では暖温帯から冷温帯域まで見られ、ときに群生するが、最近、シカの食害に遭い、減少傾向に陥り、レッドリストの希少種にあげられている。 写真はヤブレガサ。破れた傘を連想させる幼い葉(左)、成長した中間の葉(中)、成長して花茎に花序をつけた個体群(右)。 処暑を過ぐ昨日と今日を重ねつつ