shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

リカード・ボサノヴァ / 平賀マリカ

2009-08-31 | Standard Songs
 早いもので8月も今日で終わり、昼間はまだまだクソ暑いけど夜になると結構涼しくて過ごしやすい(^.^)  “夏はラテン!” という単純な思いつきから始めたラテン系スタンダード聴き比べシリーズも「ティコ・ティコ」、「ベサメ・ムーチョ」ときて今回トリを務めるのは超愛聴曲「リカード・ボサノヴァ」(別名「ザ・ギフト」)である。元々大好きな曲だったのだが、最近買った平賀マリカのボサノヴァ集に入っていたヴァージョンがめちゃくちゃ気に入り、リカード熱が再燃したというわけなのだ。
 作者はブラジルのルイス・アントニオとジャルマ・フェレイラで、1959年に作られたということになっている。本であれネットであれ、どこで調べてもそういうことになっている。しかしジャズ・トロンボーンのエディ・バートが1955年に出したサヴォイ盤「アンコール」の中の「カンヴァセイション」という曲がまさに「リカード・ボサノヴァ」そのものなのだ。時系列でいうとこっちの方が4年も早い。一体これはどーなってんねん?まったくの謎である。どっちがいつパクッたのか、ネット上を色々探してみたがこの件に関する情報は皆無だった。真相をご存知の方はお教え下さい m(__)m
 この曲はヴォーカルならテレビのタバコCM で流れたイーディ・ゴーメ・ヴァージョン、インストならジャズ喫茶で一世を風靡したハンク・モブレイ・ヴァージョンがそれぞれ決定版だが、それ以外にもバーニー・ケッセルやズート・シムズ、バルネ・ウィランetc インスト・ジャズでは名演が目白押し。まぁ今回は素直に(笑)定番2つと問題のオリジ(?)版、それに超愛聴隠れ名演2つでいってみます:

①Eddie Bert
 「カンヴァセイション」というタイトルの通り、エディ・バートのよく歌うトロンボーンとJ.R. モンテローズの熱いテナーが楽器で “会話” するかのようなやりとりが強烈にジャズを感じさせてくれる。4分34秒から始まるハンク・ジョーンズの流麗なピアノ・ソロはまさに名人芸だ!
エディー・バート


②Eydie Gorme
 以前にも取り上げたゴーメだが、彼女抜きの「リカード」大会はシューマッハのいないフェラーリみたいなモンなので堂々の再登場(^.^) その一点の曇りもない見事な歌唱はこの曲の魅力を120%引き出しており、たとえ誰がオリジナルであろうとも私は “リカード = ゴーメの曲” だと思っている。これ以上の名唱があったら教えてほしいものだ。
Eydie Gorme The Gift!(Recado Bossa Nova)


③Hank Mobley
 ジャズがメロディーの大切さを忘れて下らない自己満足音楽へと堕し、衰退の一途をたどっていた60年代半ば、ジャズ黄金時代を支えたハンク・モブレイが盟友リー・モーガンをゲストに迎えて放った大ヒットがコレ。ロックやボサ・ノヴァといった当時の新しいリズムを巧みに取り入れながら、血沸き肉踊る痛快ハードバップでストレートに料理したこの演奏が当時のジャズ喫茶族に大いにウケたのも当然だと思う。
Recado Bossa Nova-Hank Mobley


④Gypsy Vagabonz
 これも去年一度紹介済みなのだが大好きな演奏なので気にせず紹介。刹那的な快楽を求める宴のような曲想と、かきむしるようなマカフェリ・ギターのサウンドがビンビン合っており、そこへ退廃的なムードを醸し出すヘタウマ・ヴォーカルが絶妙に絡んでいく快感を何と表現しよう?何度でも聴きたくなる妖しげな魅力が横溢のキラーチューンだ。カフェ・マヌーシュのライブでも演奏されて大盛り上がりだったこの曲、新たなマヌーシュ・スタンダードといえるかもしれない。
The GIFT '08/12/07/GYPSY VAGAVONZ


⑤平賀マリカ
 森川七月に次いで最近気に入ってる日本人ジャズ・ヴォーカリストがこの平賀マリカ。インストとは違ってこういう新しい人がどんどん出てくるからジャズ・ヴォーカルはやめられない(^.^) 彼女の魅力はしっかりした歌唱力と原曲の旋律を大切にしながら素直に表現するそのヴォーカル・スタイルにあり、ここでもその本領を存分に発揮、巧みなフレージングを交えながら快適にスイングする彼女の歌声が耳に心地良く響き、ギル・ゴールドスタインの緊張感漲るアコーディオン・ソロと共にこのラテンの名曲に新たな魅力を与えている。
リカードボサノヴァ