shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

After The War / Gary Moore

2009-08-06 | Hard Rock
 昨日は B'z の新曲にガツンとやられ、アドレナリン出まくりでコーフンしてしまい中々寝付けなかったのだが、久々やなぁこの血沸き肉踊る感じ...(^o^)丿 このブログは自分の音楽日記みたいなモンなのでちょっと最近のエントリーを見てみると B'z の前は、ザ・ピーナッツ、マントラ、麻丘めぐみ、ラバカン、デビッド・ボウイ、リー・ワイリー、ベイ・シティ・ローラーズ... と、もうムチャクチャ(笑)な選盤で何も考えずに手当たり次第聴いてるのがもろバレなのだが、そんな中にハードロックが入っていないことに気が付いた。やっぱり夏はハードロックを聴いて元気を出さねばならない。ということで何故か直感的に頭に浮かんだのがゲイリー・ムーアの「アフター・ザ・ウォー」、久々のブリティッシュ・ハードロックである。
 このゲイリー・ムーアというギタリストは北アイルランド出身で、地元のローカル・バンドでプレイしているところをフリートウッド・マック(当時はまだバリバリのブルース・ロック・バンドだった...)のピーター・グリーンに見い出されて70年代初めにイギリスへと渡り、コロシアムⅡやシン・リジィといったバンドに在籍して独創的な奏法を追求してきた人だ。彼の精神に宿るケルティック魂が土着的な旋律を掘り起こし、実に美しいメロディーのソロを連発してきたのだ。そしてそんな哀愁溢れるソロ(フェリー・エイドの「レット・イット・ビー」で聴けるゲイリー入魂のソロは鳥肌モノ!)と並ぶもう一つのウリが目にもとまらぬハイスピードで弾き切るマシンガン・ピッキングである。この2つが聴けさえすれば私は大満足なのだ。だからアルバムとしての統一感においてはこの前作「ワイルド・フロンティア」の方が遙かに優れていて世評も圧倒的に高いにもかかわらず、私はこの「アフター・ザ・ウォー」の方を愛聴している。
 ①「ダンルース・パート1」はわずか1分強のギター・インストで、 “戦闘開始宣言” のように響くソロだ。②「アフター・ザ・ウォー」は私の大のお気に入りナンバーで、何と言ってもまず楽曲としての出来が素晴らしい。この疾走感こそハードロックの醍醐味だ!!! ゲイリー・ムーアのムラなくハイスピードで弾き切るピッキングといい、アグレッシヴに切り込んでくるコージー・パウエルの重量級ドラミングといい、ハードロックのエッセンスを凝縮したようなカッコ良いナンバーだ (^o^)丿 ②のエンディングと間を置かずにいきなりラウドなイントロが炸裂する③「スピーク・フォー・ユアセルフ」、鬼神の如く弾きまくるマシンガン・ピッキングが凄まじいし、サビの哀愁の旋律にも涙ちょちょぎれる。このヘヴィーで切れ味抜群のリフはちょっと他では聞けない人間国宝級のワザだと思う。それにしても②③と続くこのテンションの高さは何なのだろう?④「リヴィン・オン・ドリームス」はゲイリーにしてはちょっと軽めでキャッチーな感じの曲で、②③との落差に???となるが、このあたりが “統一性に欠ける” と言われてしまうのだろうか?まぁアルバム中では箸休め的な1曲だと思う。
 ⑤「レッド・クローンズ」はタイトルからも分かるようにレッド・ゼッペリンそっくりのサウンドで当時アメリカで爆発的なアルバム・セールスを誇っていた2つのバンド、キングダム・カムとホワイトスネイクを露骨に皮肉った内容で、「カシミール」をベースにゼッペリンそのまんまのリフやストリングスを大量投下、キングダム・カムの「ゲット・イット・オン」(←イントロなんか笑えるほどソックリ!)やホワイトスネイクの「スティル・オブ・ザ・ナイト」を想わせるフレーズも随所に織り込まれているし、何よりも “You've stolen from the houses of the holy” や “You've rolled into the kingdom of the snake”(笑)といった歌詞がすべてを物語っている。まぁここまで徹底すると個人攻撃なのかジョークなのか分からなくなってくるが、こういうパロディ(?)は結構好きなので個人的には大いに楽しんで聴いている。この曲のみヴォーカルはゲストのオジー・オズボーンなのだが、ゲイリー、コージー、そしてオジーと実に豪華な取り合わせだ。コージーのドラミングは墓場からボンゾが蘇ってきたかのよう(4分17秒からの大爆発!)だし、オジーの見事なプラント唱法(2分44秒からの “ウゥ~♪” なんてもうモノマネ大賞をあげたいぐらい...)が聴けるだけでも貴重なナンバーだ。そーいえば昔ロック川柳で “オジーさん、年を取ったら お爺さん” というのがあって大笑いしたっけ(^.^)
 ロイ・ブキャナンの名曲カヴァー⑥「ザ・メシア・ウィル・カム・アゲイン」はブルースのインスト曲で、ゲイリーの泣きのチョーキングが思う存分堪能できるナンバーだ。ギターという楽器でここまでエモーショナルに泣きまくれるゲイリーのプレイは名人芸と呼ぶに相応しい。⑦「ラニング・フロム・ザ・ストーム」は②を裏返しにしたような雰囲気の曲で世間では全く黙殺されているが、私は結構好き。3分20秒からのギターソロは強烈無比のカッコ良さだ。⑧「ディス・シング・コールド・ラヴ」は「ライブ・ワイアー」の頃のモトリー・クルーみたいなアグレッシヴなナンバーだが、曲としてはやや弱いか。⑨「レディ・フォー・ラヴ」はリズムといい、バックのコーラスといい、アメリカンな雰囲気のロックンロールに仕上がっていて決して悪くはないが、何でこれをゲイリーがせなアカンの?というのが正直なところ。⑩「ブラッド・オブ・エメラルズ」は実質的にはアルバムのラストを飾る大作で、ゲイリーの熱きケルティック魂がビンビン伝わってくるドラマチックなナンバーだ。ゲイリーはこのアルバムを最後にハードロックからブルースへと大きく方向転換してしまうので、後から振り返って考えればアイリッシュ・メロディー横溢のこの曲でハードロック・シーンへの別れを告げているように思えてならない。
 これ以降の彼のアルバムは持っていないが、私としては泣きのソロとマシンガン・ピッキングが十分に堪能できるこのアルバムのゲイリーが聴ければそれでいいのだ。

Gary Moore - After the war