shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Singles Collection / The Chiffons

2009-08-13 | Oldies (50's & 60's)
 ローリー・レーベルは60年代に数々のドゥー・ワップやガール・グループ・クラシックスの名曲を世に送り出した名門である。そんな中でドゥー・ワップの最高峰ディオン&ザ・ベルモンツと並んで同レーベルを支えたのがこのシフォンズだった。シフォンズというと “例の「マイ・スウィート・ロード」の元ネタとなった「ヒーズ・ソー・ファイン」を歌ってたグループ” という認識が一般的でそれ以上のことはあまり知らないという音楽ファンも多いかもしれないが、実にもったいない話だと思う。スプリームズやロネッツといった一部の例外を除けば、一発屋で消えていった多くのガール・グループの中で10曲近いヒットを放ったシフォンズは黒人ガール・ポップ・グループの代表格なのだ。
 彼女たちの魅力は何と言ってもそのポップ感覚溢れるコーラス・ワークとそれを存分に活かしたキャッチーな楽曲群にある。私の知る限りでは1曲中に占めるコーラスの割合は全ガール・グループ中ダントツではないだろうか?もちろんコーラスが売りというレーベル・カラーもあるだろうし、プロデュースがトーケンズ(「ライオンはねている」で有名なコーラス・グループ)というのもあるだろう。とにかくシフォンズの歌声にはワクワクさせてくれる理屈抜きの楽しさが溢れており、まさに “ガール・グループの鏡” と言える存在だった。
 私が初めて聴いたシフォンズは多くの人と同じく「マイ・スウィート・ロード」つながりで③「ヒーズ・ソー・ファイン」だった。その時は “確かによぉ似とるなぁ...” と2つの曲の類似性にばかり関心が行ってしまって曲そのものを純粋に楽しむことが出来なかった。こーなってくると一種の弊害である。今では “ドゥー ラン ドゥー ラン ドゥラン~♪” という軽快なコーラス・ハーモニーを目一杯楽しんでいる。
 次にシフォンズを耳にしたのはFMのオールディーズ特集か何かの番組で①「ワン・ファイン・デイ」を聴いたのだが、この曲のインパクトは絶大でめちゃくちゃ気に入ってしまった。何と言ってもイントロの躍動感あふれるピアノを聴いただけでこれから素晴らしい音楽が始まる雰囲気が醸し出される。そして実際、キャロル・キングが弾いてるこのピアノに先導されたシフォンズの溌剌としたコーラス・ハーモニー“シュビドゥビドゥビ ドゥビドゥワッワァ~♪”がウキウキした気分を盛り上げる。お約束のハンド・クラッピングも効果抜群だ。ジェリー・ゴフィン=キャロル・キングが書いたこの曲は全米5位にまで上がるヒットを記録、カーペンターズが名盤「ナウ&ゼン」でカヴァーしたヴァージョンも忘れ難い超愛聴曲だ。
 又、ちょうどその頃買ったガール・グループのオムニバス盤にたまたま⑪「スウィート・トーキング・ガイ」が入っており、その見事なコーラス・ハーモニーの波状攻撃にも完全KOされてしまった。リード・ヴォーカルとバック・コーラスの絶妙なコール&レスポンスはまさに円熟の境地といえる素晴らしいもので、特に2分6秒からの“スウィ スウィ スウィー トーキン ガァ~イ♪” とたたみかけるようなコーラスが耳に焼き付いて離れないキラー・チューンだ。これはもう絶対にシフォンズ単独のCDであのコーラス・ハーモニーを思う存分聴きたい!と思い、早速買ってきたのがこの「シフォンズ・シングル・コレクション」である。
 このベスト盤、全21曲 約50分に渡って目も眩むようなコーラス・ハーモニーの大展覧会というか、万華鏡のような楽しさ溢れるポップ・ワールドが展開される。4週連続全米№1となった③に続く 2nd シングルの②「ラッキー・ミー」は作者が③と同じロナルド・マックということで “シャグラン シャグラングラン...” というコーラスで始まるところとか曲の作りもそっくりだ。まぁ2匹目のドジョウ狙いがミエミエだが、この手のポップスが大好きな私としては大歓迎。必殺のメロディーに必殺のコーラス・ワーク... これこそオールディーズ・ポップスの王道なのだ。ジェフ・バリー=エリー・グリニッチ作の⑤「アイ・ハヴ・ア・ボーイフレンド」は “バーンシュバン バーンシュバン♪” というコーラスが耳について離れない胸キュン・ソング。わかってはいてもハマッてしまう、絵に描いたようなブリル・ビルディング系ポップスだ。
 思わず口ずさんでしまいそうな楽しいコーラスやハンド・クラッピングを多用した④「ラヴ・ソー・ファイン」や⑥「トゥナイト・アイ・メット・アン・エンジェル」はシフォンズの魅力全開のポップ・チューンだが、⑦「セイラー・ボーイ」や⑧「ストレンジ・フィーリング」あたりは少しこじんまりとまとまりすぎかもしれない。⑨「ノーバディ・ノウズ」は曲自体は単調だが “ウォウ ウォウ ウォウ ウォウ ウォウ ウォウォウ~♪” という重厚なコーラスと要所要所を引き締めるスプリングスティーンの「ブリリアント・ディスガイズ」なメロディーが耳に残る。⑫「アウト・オブ・ジス・ワールド」はメロディー展開といい、コーラス・ワークといい、バックの音作りといい、何から何まで⑪にそっくりだが、エエもんはエエんで何か2倍得したような気分だ。
 ⑬「ストップ・ルック・アンド・リッスン」ではブリル・ビルディング系ポップスにスプリームズを意識したモータウン・サウンドのエッセンスを塗して往年の溌剌としたムードが復活、シフォンズ最後のヒット曲(66年)である。それ以降は完全に失速してしまったようで、エンジェルズのカヴァー⑭「マイ・ボーイフレンズ・バック」はシフォンズならではの個性に乏しいし、「マイ・スウィート・ロード」の逆カヴァーも話題性は十分ながら肝心の音楽(特にバックのサウンド・アレンジ)はトホホな出来だった。まぁこのあたりの凋落ぶりは彼女らに限ったことではなく、60年代前半に活躍したブリル・ビルディング系シンガー/グループはほぼ壊滅状態で、大輪の花を咲かせてパッと散る、それもまたポップスの宿命というものだろう。
 ⑳「ホエン・ザ・ボーイズ・ハッピー」はシフォンズの前身であるフォー・ペニーズ時代のナンバーで、ジェフ・バリー=エリー・グリニッチ作の楽しさ溢れるポップスだ。やっぱりガール・グループはこうでなくちゃね(^.^) とにかくこのシフォンズはコーラスの楽しさを教えてくれる、オールディーズ・ポップスには無くてはならない存在なのだ。

ONE FINE DAY - The Chiffons