私はジャズでもロックでも、とにかくメロディーの分かり易い音楽が好きで、メロディーの分かりにくい音楽は嫌いである。これは私が音楽を聴き始めてかれこれ35年間、そしてこれからも未来永劫変わることのないガチガチの鉄板なのだ。音楽ファンなら誰しもその人の音楽的ルーツのようなものがあり、それによって音楽的嗜好が決まってしまうことが多いが、私の場合はご存知のようにビートルズがすべての原点なので、ロックンロールであれスローバラッドであれ、メロディアスでないと受け入れられない。逆にどんなにアップテンポで疾走しようが、ギターが速弾きでソロをブチかまそうが、ドラムが激しいビートを刻もうが、メロディーさえしっかりしておれば大歓迎だ。
ハードロックに関して言うと、70年代の私はレッド・ゼッペリン、ディープ・パープル、エアロスミス、ヴァン・ヘイレンなどが大好きで、それこそレコードが擦り切れるほど聴きまくったものだったが、いわゆるハードロックやヘヴィー・メタルというジャンルに属する他のバンドにはあまり関心を持てなかった。別に嫌って避けていたわけでもないのだが、たまにジューダス・プリーストやアイアン・メイデンなんかをFMのハードロック特集番組で耳にしてもただウルサイだけでピンとくるものがなかった。そんな私に “ハードロックってめっちゃエエやん!!!” と思わせてくれたのがこのデフ・レパードであり、彼らのこの「パイロメニア(炎のターゲット)」に出会っていなければ、ひょっとするとモトリー・クルー、ボン・ジョヴィ、シンデレラ、ガンズ&ローゼズ、ポイズンといった、いわゆる80'sハードロック・バンドたちとの付き合いも変わっていたかもしれないのだ。そしてそのようなロック・ファンはきっと私だけではなかったと思う。そういう意味で私は以前彼らの「ヒステリア」を取り上げた時に、この「パイロメニア」を “シーンを築き上げたアルバム” と表現したのだ。
このアルバムがリリースされた1983年は第2次ブリティッシュ・インベイジョン、すなわちデュラン・デュランやカルチャー・クラブの大ブレイクで幕を明け、マイコーが「ビリー・ジーン」と「ビート・イット」で世界中のチャートを席捲し、「フラッシュダンス」が80'sサントラ・ブームの先鞭をつけようとしていた。ハードロックのハの字もない。唯一「ビート・イット」の間奏で聴けるエディー・ヴァン・ヘイレンの爆裂ギター・ソロだけというお寒い状況だった。そんな中、突然全米チャートに登場し、ぐんぐん上昇していったのが 1st シングルの②「フォトグラフ」だった。この曲を初めて聴いたのはTVの「ベスト・ヒット・USA」で、躍動感あふれるストレートなサウンド、哀愁舞い散るサビのメロディー、ハードロック・バンドとはとても思えないような清涼感溢れるコーラス・ハーモニー、ビデオクリップでジョー・エリオットが着ていたシャツの鮮やかなユニオンジャックと、そのすべてが衝撃的で、録画したビデオクリップを何度も見返したものだった。あくまでも曲は親しみやすく、演奏はハード&ノリノリ... 私の一番好きなパターンである。とにかくこの曲を聴いて私の中のロック魂が目覚めたことだけは確かだった。
サビのコーラス・ハーモニーとズッシリ響くドラムのビートが耳に残る 2nd シングル⑦「ロック・オブ・エイジズ」が出た頃、私は大学の長い休みを利用して生まれて初めてのアメリカ横断旅行中でフロリダの友人宅に2週間ほど泊めてもらっていたのだが、ユーリズミックス「スウィート・ドリームス」、マイケル・ジャクソン「ワナ・ビー・スターティン・サムシン」、スティーヴィー・ニックス「スタンド・バック」らと共にヘヴィー・ローテーションでカーラジオから流れて来たのがこの曲だった。アメリカのラジオ局は音楽ジャンルで細かく分かれており、まだこの頃ハードロックはトップ40局では滅多にかからなかったのだが、レップスだけは違っていた。つまりこの時点で大衆は彼らを “ハードロック・バンド” ではなく “ロック・バンド” として認識していたということだろう。ハイウェイをカッ飛ばしながらまるで映画「デス・プルーフ」みたいに助手席でヘッド・バンギングをしたのが忘れられない。
私は帰国してすぐレコ屋に直行し、このアルバムを買った。初めて全曲聴き終えた時、そのあまりの素晴らしさに圧倒されたのを覚えている。冒頭を飾る①「ロック!ロック!」はギターが唸りを上げて疾走するカッコイイ曲で、プロデュースが同じロバート・ジョン・マット・ラングということもあってか、徹底的に贅肉を削ぎ落としてガチガチに磨き上げた AC/DC みたいなサウンドがたまらない(≧▽≦) ③「ステージフライト」は初期レップスを彷彿とさせる疾走系のラフでハードなナンバーで、ライブでめちゃくちゃ盛り上がれそうな1曲だ。「ヒステリア」以降はこーゆーの無くなっちゃったなぁ... まぁしゃーないか。④「トゥー・レイト・フォー・ラヴ」は心にビンビン響くパワー・バラッドで、哀愁舞い散るメロディーに涙ちょちょぎれる。そのドラマチックな曲想とエモーショナルなヴォーカルはボン・ジョヴィの原型そのものだ。⑤「ダイ・ハード・ザ・ハンター」はイントロの不気味なヘリコプターのSEからギター・アルペジオへとつなぎ、ドラムのフィルインと共に疾走を開始する1分22秒でガツンとやられ、何とかカウント8ぐらいで起き上がろうとするとやってくるのが中間部の緊張感溢れるツイン・リード。全編を通して炸裂する見事なコーラス・ハーモニーも他のバンドにない大きな武器で、この曲をよりドラマチックなものにしている。
⑥「フーリン」は⑤と同じく静と動のコントラストが見事なヘヴィー・ナンバーで、ジョーの “フッフッフッフーレェン♪” が耳について離れない。ただ、この曲のPVはもうちょっと何とかならんかったんか...(>_<) ユニオンジャックのパンツ一丁で頑張るリック・アレンの姿は笑えるけど。イントロのギター・リフから名曲の薫りが横溢する⑧「カミン・アンダー・ファイアー」は何と言っても激しいギター・サウンドと美しいコーラス・ハーモニーのコントラストの妙に唸らされるキラー・チューンで、個人的には名曲揃いのこのアルバム中でも一ニを争う隠れ名曲だと思う。⑨「アクション」は後の「アニマル」や「アーマゲドン」の源流というべきキャッチーなナンバーだが④⑤⑥⑦⑧と続くアルバムの流れの中で聴くとどうしても急に軽くなったような感じは否めない。コーラスもやや不発気味だ。⑩「ビリーズ・ガット・ア・ガン」は最初聴いた時はイマイチだったが、今から聴くと「ホワイト・ライトニング」の原型ともいうべきドラマチックな大作で、時代を切り開いた歴史的大傑作のシメに相応しい1曲だと思う。
キャッチーでメロディアスな曲をワン&オンリーなコーラス・ハーモニーでコーティングし、ハード&ヘヴィーに演奏したこのアルバムは “美しきハードロック・アルバム” の最高峰として屹立する、捨て曲なしのスーパー・ウルトラ大名盤なのだ。
Def Leppard - Photograph
Def Leppard - Rock of Ages 1983 Video stereo widescreen
Def Leppard - Coming under fire
ハードロックに関して言うと、70年代の私はレッド・ゼッペリン、ディープ・パープル、エアロスミス、ヴァン・ヘイレンなどが大好きで、それこそレコードが擦り切れるほど聴きまくったものだったが、いわゆるハードロックやヘヴィー・メタルというジャンルに属する他のバンドにはあまり関心を持てなかった。別に嫌って避けていたわけでもないのだが、たまにジューダス・プリーストやアイアン・メイデンなんかをFMのハードロック特集番組で耳にしてもただウルサイだけでピンとくるものがなかった。そんな私に “ハードロックってめっちゃエエやん!!!” と思わせてくれたのがこのデフ・レパードであり、彼らのこの「パイロメニア(炎のターゲット)」に出会っていなければ、ひょっとするとモトリー・クルー、ボン・ジョヴィ、シンデレラ、ガンズ&ローゼズ、ポイズンといった、いわゆる80'sハードロック・バンドたちとの付き合いも変わっていたかもしれないのだ。そしてそのようなロック・ファンはきっと私だけではなかったと思う。そういう意味で私は以前彼らの「ヒステリア」を取り上げた時に、この「パイロメニア」を “シーンを築き上げたアルバム” と表現したのだ。
このアルバムがリリースされた1983年は第2次ブリティッシュ・インベイジョン、すなわちデュラン・デュランやカルチャー・クラブの大ブレイクで幕を明け、マイコーが「ビリー・ジーン」と「ビート・イット」で世界中のチャートを席捲し、「フラッシュダンス」が80'sサントラ・ブームの先鞭をつけようとしていた。ハードロックのハの字もない。唯一「ビート・イット」の間奏で聴けるエディー・ヴァン・ヘイレンの爆裂ギター・ソロだけというお寒い状況だった。そんな中、突然全米チャートに登場し、ぐんぐん上昇していったのが 1st シングルの②「フォトグラフ」だった。この曲を初めて聴いたのはTVの「ベスト・ヒット・USA」で、躍動感あふれるストレートなサウンド、哀愁舞い散るサビのメロディー、ハードロック・バンドとはとても思えないような清涼感溢れるコーラス・ハーモニー、ビデオクリップでジョー・エリオットが着ていたシャツの鮮やかなユニオンジャックと、そのすべてが衝撃的で、録画したビデオクリップを何度も見返したものだった。あくまでも曲は親しみやすく、演奏はハード&ノリノリ... 私の一番好きなパターンである。とにかくこの曲を聴いて私の中のロック魂が目覚めたことだけは確かだった。
サビのコーラス・ハーモニーとズッシリ響くドラムのビートが耳に残る 2nd シングル⑦「ロック・オブ・エイジズ」が出た頃、私は大学の長い休みを利用して生まれて初めてのアメリカ横断旅行中でフロリダの友人宅に2週間ほど泊めてもらっていたのだが、ユーリズミックス「スウィート・ドリームス」、マイケル・ジャクソン「ワナ・ビー・スターティン・サムシン」、スティーヴィー・ニックス「スタンド・バック」らと共にヘヴィー・ローテーションでカーラジオから流れて来たのがこの曲だった。アメリカのラジオ局は音楽ジャンルで細かく分かれており、まだこの頃ハードロックはトップ40局では滅多にかからなかったのだが、レップスだけは違っていた。つまりこの時点で大衆は彼らを “ハードロック・バンド” ではなく “ロック・バンド” として認識していたということだろう。ハイウェイをカッ飛ばしながらまるで映画「デス・プルーフ」みたいに助手席でヘッド・バンギングをしたのが忘れられない。
私は帰国してすぐレコ屋に直行し、このアルバムを買った。初めて全曲聴き終えた時、そのあまりの素晴らしさに圧倒されたのを覚えている。冒頭を飾る①「ロック!ロック!」はギターが唸りを上げて疾走するカッコイイ曲で、プロデュースが同じロバート・ジョン・マット・ラングということもあってか、徹底的に贅肉を削ぎ落としてガチガチに磨き上げた AC/DC みたいなサウンドがたまらない(≧▽≦) ③「ステージフライト」は初期レップスを彷彿とさせる疾走系のラフでハードなナンバーで、ライブでめちゃくちゃ盛り上がれそうな1曲だ。「ヒステリア」以降はこーゆーの無くなっちゃったなぁ... まぁしゃーないか。④「トゥー・レイト・フォー・ラヴ」は心にビンビン響くパワー・バラッドで、哀愁舞い散るメロディーに涙ちょちょぎれる。そのドラマチックな曲想とエモーショナルなヴォーカルはボン・ジョヴィの原型そのものだ。⑤「ダイ・ハード・ザ・ハンター」はイントロの不気味なヘリコプターのSEからギター・アルペジオへとつなぎ、ドラムのフィルインと共に疾走を開始する1分22秒でガツンとやられ、何とかカウント8ぐらいで起き上がろうとするとやってくるのが中間部の緊張感溢れるツイン・リード。全編を通して炸裂する見事なコーラス・ハーモニーも他のバンドにない大きな武器で、この曲をよりドラマチックなものにしている。
⑥「フーリン」は⑤と同じく静と動のコントラストが見事なヘヴィー・ナンバーで、ジョーの “フッフッフッフーレェン♪” が耳について離れない。ただ、この曲のPVはもうちょっと何とかならんかったんか...(>_<) ユニオンジャックのパンツ一丁で頑張るリック・アレンの姿は笑えるけど。イントロのギター・リフから名曲の薫りが横溢する⑧「カミン・アンダー・ファイアー」は何と言っても激しいギター・サウンドと美しいコーラス・ハーモニーのコントラストの妙に唸らされるキラー・チューンで、個人的には名曲揃いのこのアルバム中でも一ニを争う隠れ名曲だと思う。⑨「アクション」は後の「アニマル」や「アーマゲドン」の源流というべきキャッチーなナンバーだが④⑤⑥⑦⑧と続くアルバムの流れの中で聴くとどうしても急に軽くなったような感じは否めない。コーラスもやや不発気味だ。⑩「ビリーズ・ガット・ア・ガン」は最初聴いた時はイマイチだったが、今から聴くと「ホワイト・ライトニング」の原型ともいうべきドラマチックな大作で、時代を切り開いた歴史的大傑作のシメに相応しい1曲だと思う。
キャッチーでメロディアスな曲をワン&オンリーなコーラス・ハーモニーでコーティングし、ハード&ヘヴィーに演奏したこのアルバムは “美しきハードロック・アルバム” の最高峰として屹立する、捨て曲なしのスーパー・ウルトラ大名盤なのだ。
Def Leppard - Photograph
Def Leppard - Rock of Ages 1983 Video stereo widescreen
Def Leppard - Coming under fire