shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

エンド・オブ・ザ・ワールド / スキーター・デイヴィス

2009-08-14 | Oldies (50's & 60's)
 曲のタイトルというのはいわば顔のようなモノである。今と違い情報が限られていた60年代において、特に洋楽ポップスの邦題はその曲のイメージを決定づける重要なな要素だった。テディ・ベアーズの「To Know Him Is To Love Him → 会ったとたんに一目ぼれ」やバリー・マンの「Who Put The Bomp? → シビレさせたのは誰?」のような名訳も多かったが、その一方でミスリーディング、つまり曲の内容を誤解させるような、いわゆる “誤訳” もあった。その最たるものがこのスキーター・デイヴィスの「エンド・オブ・ザ・ワールド」で、何をトチ狂ったのか「この世の果てまで」とやってしまったがために、何も知らない純真無垢な人達が “永遠の愛を誓う歌” だと誤解し、あろうことか結婚式のBGMに使われたりしているらしい。曲調だけを考えれば確かに心を洗われるような屈指の名バラッドなのだが、歌詞はといえば “なぜ太陽は今も輝き、海辺には波が押し寄せ、小鳥たちは今もさえずっているの?もう世界が終ったのを知らないのかしら?私があなたの愛を失った時に終わったというのに...” という暗~い内容なのだ。しかも単なる失恋ソングではなく、元々は作詞者のシルヴィア・ディーが父親を亡くした悲しみを綴ったもので、そのせいか愛する者を失った深い悲しみ、絶望感が行間から滲み出ている。つまり “愛する者の死” についての歌であって、欧米では葬儀の際に流されているという。結婚式で流すなど不謹慎この上ない。尚、スキーター・デイヴィスはソロ・デビューの数年前にデュオの相棒だった親友を自動車事故で亡くしており、彼女はこの曲のレコーディングに際し、亡き友への想いを込めて歌ったとのこと。まさに名曲の陰に人生ありである。それにしてもこのメロディー、シンプルなのに聴けば聴くほど心に染みわたってきてジーンとなってしまう。この曲のカヴァー私的Top 3はジュリー・ロンドン、カーペンターズ、そして竹内まりや姐さんなのだが、カレンとまりや姐さんには毎回のように登場願っているし(笑)皆さんよ~くご存知と思うので、今回はあえてこの日米トップ・女性シンガー2人以外で5つのヴァージョンをご紹介:

①Skeeter Davis
 ポップ・カントリー・シンガー、スキーター・デイヴィス一世一代の名唱。チェット・アトキンスのプロデュースでナッシュビルの一流ミュージシャンたちがバックアップしている。彼女の歌声は素朴そのもので、一人二重唱も効果抜群だ。特に語りの部分は胸を締め付けられるような説得力に溢れている。
Skeeter Davis - The End Of The World (1963)


②Julie London
 以前タバコのCMで流れていたジュリー・ロンドンのこのヴァージョンは私の大のお気に入り。セクシーな魅力全開のハスキー・ヴォイスは特にムーディーなスロー・バラッドで威力を発揮するが、そんな彼女の持ち味と曲想とがピッタリ合って心に染みる名唱になっていると思う。
The End of the World -Julie London-


③Herman's Hermits
 この曲の男性ヴォーカル・ヴァージョンは非常にレアで、私はディオン、ジョン・メレンキャンプ、そしてこのハーミッツの3つしか知らない。下手なアレンジを受け付けない完璧な曲なので、ピーター・ヌーンもしっとりと歌い込んでいる。
Herman's Hermits - End Of The World


④Twinkle
 夢シャン・カヴァーを漁っていて出会ったイギリス人ポップ歌手トゥインクル。チャート上の成績はイマイチだったが、サンディー・ショウらと共にモッズのアイドル的存在だったらしい。その素人っぽい歌い方は “イギリスの浅田美代子” みたいな感じで私は結構気に入っている。それにしても目がイッちゃってる写真が多いのは何故?
End of the World - Twinkle


⑤Agnetha Faltskog
 元アバのアグネッタが劇的なカムバックを果たしたアルバム「マイ・カラリング・ブック」に入っていたのがコレ。そうそう、この声、懐かしいなぁ...(^.^) まるで「チキチータ」あたりとメドレーでつなげれそうだ。アバ・ファンにはたまらないあの伸びやかな歌声は今も健在で、やはり歌とは最終的に声の魅力に尽きるということを改めて実感させられた。
Agnetha Faltskog (ABBA) : The End of the World (2004)
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