shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Best Of Manhattan Transfer

2009-08-02 | Jazz Vocal
 熱狂的にハマって四六時中聴いているというわけではないけれど、たまに取り出して聴いてみると “やっぱりエエなぁ...(^.^)” と思わせるアーティストがいる。マンハッタン・トランスファーは私にとってちょうどそんな存在である。つい最近も彼らの83年の「マン・トラ~ライブ・イン・トキョー~」をBGMに仕事をしていていつの間にかその歌声に耳が吸い付き、まったく仕事にならなかった(>_<) 
 彼らは1975年にレコード・デビューし、1920年代から現代に至るまでのアメリカの音楽をコンテンポラリーな感性で捉え、ノスタルジーを巧くブレンドしながら自分たちのスタイルを確立してきたコーラス・グループだ。私が彼らを初めて知ったのは81年のことで、アド・リブスをカヴァーした「ボーイ・フロム・ニューヨーク・シティ」がポインター・シスターズやエア・サプライ、リック・スプリングフィールドらのヒット曲に混じって全米シングル・チャートで7位にまで上昇するという、ジャズ・コーラス・グループとしては画期的な大成功を収めていた頃である。ちょうど来日していた彼らが小林克也さんの「ベスト・ヒット USA」に出演したのを見たのだが、その時にスタジオで披露した「バークレー・スクエアのナイチンゲール」での美しいコーラス・ハーモニーがインパクト絶大で、私はそれ以降彼らに注目するようになった。
 その翌年、今度はボビー・トゥループ作の名スタンダード「ルート66」を斬新なアレンジでリバイバル・ヒットさせ、又々その卓越したコーラス・ワークに魅せられた私はオリジナル・アルバムに未収録(バート・レイノルズ主演のアクション映画「シャーキーズ・マシーン」のサントラ用に特別にレコーディングされたらしい...)だったこの曲のシングル盤を買いにレコード屋へと直行、そこでシングル盤と一緒にアルバムのコーナーも覗いて見つけたのがこの「ザ・ベスト・オブ・マンハッタン・トランスファー」で、前述の「ボーイ・フロム・NYC」や「バークレー・スクエア...」も入っていて良さそうだったので一緒に購入した。いわゆる衝動買いである。
 私はこのアルバムを一聴してその抜群のハーモニーと歌唱力の素晴らしさに圧倒された。いきなりライブの歓声で始まる①「タキシード・ジャンクション」はグレン・ミラー・オーケストラの演奏で有名なナンバーで、彼らはハイ・センスな華やかさ溢れる実に粋なヴァージョンに仕上げている。わずか3分のトラックだがつかみはOKだ(^o^)丿
 ジャニス・シーゲルの伸びやかで弾むような歌声がたまらない②「ボーイ・フロム・NYC」ではジャズとポップスの境界線をいとも簡単に超えてみせる。彼らにジャンルの壁は通用しない。ドゥー・ワップ・スタイルで軽快なノリが何とも言えず楽しいこの曲、全米大ヒットも頷けるキャッチーなナンバーで、この曲を聴いて心がウキウキしてこないようなら私はその人の感性を疑ってしまう。
 ③「トワイライト・ゾーン」、多分彼らの名前を聞いたことのない人でも近未来を予想させるようなこの曲のイントロはどこかで耳にしたことがあるのではないか?ゾクゾクするほどカッコ良いメロディーに高度なハーモニー、そして弾むようなバックの演奏と、3拍子揃ったキラー・チューンだ。
 ④「ボディ・アンド・ソウル」は有名スタンダードなのだが曲自体が地味であんまり好きじゃないのでサッと流し、リー・モーガンの代名詞とでもいうべき⑤「キャンディ」へ。ややスロー・テンポで実にノスタルジックな味わいのリラクセイション溢れる懐古調アレンジだ。このように彼らのアルバムはヴァラエティー豊かなので飽きがこない。⑥「フォー・ブラザーズ」はウディー・ハーマン楽団のヒット曲でアニタ・オデイやキング・シスターズのカヴァーでもお馴染みだが、4人のメンバー達がそれぞれ個性を発揮してノリノリの快唱を聴かせてくれる。
 ⑦「バードランド」はウェザー・リポートの曲で、フュージョン・バリバリの原曲は趣味ではないが、一旦マントラの手にかかるとその見事なテクニックとアレンジで曲の良さが活きてくる。まるで音の魔術師のようだ。これをマントラのオリジナルだと思っている人も多いと思うのだが、カヴァーがオリジナルを喰ってしまった典型的な例かもしれない。⑧「グロリア」は50'sドゥー・ワップそのものの歌とコーラスで、いかにもアメリカン・グラフィティな作りになっている。これは⑩「オペレイター」にも言えることで、共に1st アルバムに入っていたことを考えるとデビュー当初はこういう路線を考えていたのかもしれない。
 ⑨「トリックル・トリックル」は私がこのアルバム中最も好きなナンバーで、ロックンロールの気分でジャジーにコーラスしてみましたといった感じがたまらない(≧▽≦)  その疾走感溢れる痛快なコーラス・ハーモニーは圧巻だ。一転してスローで迫るインク・スポッツのカヴァー⑪「ジャヴァ・ジャイヴ」、何とまぁ粋な歌声だろう!その都会的なセンス溢れる洗練されたコーラス・ワークは唯一無比で、私はこの落ち着いた「ジャヴァ・ジャイヴ」を聴く静かな時間を大事にしたいと思う。ラストの⑫「バークレー・スクエアのナイチンゲール」は彼らの本領発揮といえるアカペラで、この世のものとは思えないような美しいコーラス・ハーモニーが絶品だ。現在もなおトップ・コーラス・グループとして第一線で活躍中の彼ら、流行とは関係なしにこれからも末長く愛聴していきたいグループだ。

Manhattan Transfer Boy From New York City
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