shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Honeys Capitol Collector's Series

2009-08-10 | Oldies (50's & 60's)
 ガール・グループはオールディーズの華である。彼女たちはそれまでのスタンダード・ナンバーを主体としていたマクガイア・シスターズやレノン・シスターズらとは違った、ドゥー・ワップやロックンロールのフィーリングを織り込んだ斬新なコーラス・スタイルで人気を集めた。実際、1961年頃から63年くらいまでの、いわゆるブリティッシュ・インヴェイジョン前夜におけるガール・グループたちの活躍は目覚ましいものがあった。私の場合、ロネッツやクリスタルズといったいわゆるフィレス系グループとの出会いでその楽しさ溢れるポップ・サウンドに目覚め、エンジェルズやシャングリラス、シフォンズらを聴いて完全にガール・グループ中毒(笑)になり、しまいにはヒット曲があろうがなかろうが関係なしに、とにかくその手のガール・グループ・サウンドでありさえすれば満足と、片っ端から聴き漁っていった。そんなガール・グループ・ジャンキー時代に出会ったグループの中でピカイチの存在がこのハニーズである。
 彼女らは日米ともにヒット・チャート上ではそれほど目立った成績を残してないが、そのサウンドはまさに “女声版ビーチ・ボーイズ” といった感じで、実際ブライアン・ウィルソンからソングライティングやプロデュースといったサポートを受けながらサーフィン・ソングを歌う “BB5の妹分” 的な存在だった。メンバーはマリリンとダイアンのローヴェル姉妹に従妹のジンジャーの3人で、マリリン(ジャケット真ん中の女性)は後にブライアン・ウィルソン夫人になる人だ。グループ名の “ハニーズ” はBB5のヒット曲「サーフィン・サファリ」の歌詞の中にも登場するサーファー用語で、 “サーファーの女の子たち” という意味らしい。そんな彼女らのキャピトル時代の音源をまとめたのがこの「ザ・ハニーズ・キャピトル・コレクターズ・シリーズ」である。
 まずはこのキュートなジャケット、サーフボードに頬杖ついて3人揃ってハイ、ポ~ズって感じが胸キュンだ(≧▽≦) で、よくよく見ると彼女らのバックに描かれた音符が蜂の柄というのも凝っててエエなぁ。構成としては①~⑫までが60年代の録音で、①②、⑤⑥、⑦④、⑪⑫がキャピトル時代の4枚のシングル両面、⑧⑨がワーナー・ブラザーズからのシングル両面、③⑩がキャピトル時代の未発表音源となっており、⑬以降は77年以降の録音である。
 “39313, Shoot The Curl, Take 7, lucky 7...” というブライアンらしき声に続いて始まる①「シュート・ザ・カール」は典型的なガール・グループ・サウンドで、“シューシュー、シュータ カール~♪” というコーラスが楽しいキャッチーなナンバー。②「サーフィン・ダウン・ザ・スワニー・リヴァー」はブライアンがフォスターの「スワニー河」に新しい歌詞を付けた、ハニーズのデビュー・シングル。絶妙なコーラス・ハーモニーといい、必殺のハンド・クラッピングといい、ウキウキするようなワクワク感に溢れた実に楽しい曲だ。③「レインドロップス」は “コーデッツの「ロリポップ」を裏返しにしたようなメロディーを「ダ・ドゥ・ロン・ロン」なスペクター・サウンドでキメてみました” というような、ガール・グループ・サウンドの魅力を凝縮したような曲で、こんな素晴らしいトラックをリリースしなかったなんて信じられない。④「フロム・ジミー・ウィズ・ティアーズ」はダジャレではないが地味な曲で、メロディーも単調だ。そのせいかすぐにはリリースされず、後になってシングルB面として日の目を見ることになる。
 ⑤「プレイ・フォー・サーフ」はハニーズの 2nd シングルで、ジャン&ディーンみたいなサーフィン・ミュージックをブライアン風ウォール・オブ・サウンドで表現した感じ。⑥「ハイド・ゴー・シーク」は初期BB5っぽい曲想のナンバーで、彼女らのヴォーカルもバックの分厚いサウンドに負けじと実にパワフルに響く。 “オリ オクセン フリフリフリ~♪” というコーラスが耳に残るキャッチーな曲だ。⑦「ザ・ワン・ユー・キャント・ハヴ」はハニーズの 3rd シングルで、多分彼女らの代表曲といえるナンバー。流れるようなメロディーに思いっ切りスペクター全開のサウンドが耳に心地良い(^o^)丿 ズンドコ・ドラムにタンバリンの多用、仕上げはお約束のハンドクラッピングとくればもう言うことなしのガール・グループ・クラシックだ。
 1964年にワーナーに移籍してリリースした⑧「ヒーズ・ア・ドール」は⑦に勝るとも劣らないワクワクドキドキ系のキャッチーなナンバーで、コーラス・アレンジとい、エコーのかけ方といい、カスタネットの波状攻撃といい、ブライアン流スペクター・サウンドの極めつけといえるだろう。ロネッツやクリスタルズ好きには涙ちょちょぎれるキラー・チューンだ。そんな名曲名演が何故ヒットしなかったのか... このシングルが発売された64年の4月というのはビートルズが全米チャートの1位から5位までを独占したB4旋風吹き荒れる真っ只中だったのだ。せめてあと1年、いや半年早くリリースされていれば大ヒット間違いなしだったと思うのだが...(>_<)
 ⑨「ザ・ラヴ・オブ・ア・ボーイ・アンド・ガール」はおセンチ系バラッドで、サウンド面も至ってシンプルな作りになっている。⑩「カム・トゥ・ミー」は68年の録音と言うことで①~⑦までとは全く違う傾向のサウンド、例えるならダイアナ・ロス&スプリームズを漂泊したような感じとでも言えばいいのか、とにかく時代が歪み始めたのを反映したような淡白な音作りだ。⑪「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」は古いアメリカのポピュラー・ソングのカヴァーで、彼女らの見事なコーラス・ワークが思う存分堪能できる。エンディングの “トゥナイト!!!” がたまらない。同趣向の⑫「グッドナイト・マイ・ラヴ」はハニーズにとって60年代最後の録音で、アン・ルイスあたりが歌いそうな夢見るしっとり系のバラッドだ。
 ⑬~⑳までは先述のように70年代後半のハニーズ音源で、もはやガール・グループ・サウンド特有の楽しさはなく、時流を意識した普通のソフト・ロックという感じに変貌してしまっている。思えばシングル盤中心でメロディーを大切にする60年代が終わり、混沌とした70年代に入ってワクワク・ドキドキするような楽しいポップスが時代遅れになり、ガール・グループたちはその使命を終えたのである。

The Honeys - "He's A Doll"