shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Appetite For Destruction / Guns N' Roses

2009-08-15 | Hard Rock
 ガンズ & ローゼズといえば昨年オリジナル・スタジオ・アルバムとしては17年ぶりの新作「チャイニーズ・デモクラシー」を発表、待ちに待った80'sハードロック・アイコンの復活、そして例のドクター・ペッパー騒動(ガンズがもし年内に新作を発表したら全米国民にドクター・ペッパーを無料プレゼントというアホな飲料会社の大風呂敷キャンペーン、結局賭けに負け、しかもバンドから訴えられるというトホホな結果に...笑)という派手な話題も手伝って全米でミリオンセラーを記録したばかりだ。私も大いなる期待を持って聴いたのだが、最初の数曲はまあまあ良かったものの、その後は楽曲の魅力に乏しく、全然心に残るものが無かった。ハードでアグレッシヴな印象の曲でも歌やギターはメロディアスというのがガンズの大きな魅力だと堅く信ずる私にとって、結局、ガンズ・サウンドの要だったスラッシュもいなければ曲作りにおいて重要な役割を担っていたイジーもいないガンズはもはやあのガンズではなく、「チャイデモ」は実質的にはアクセルのソロ・アルバムとして捉えるべきものだった。今にして思えば私にとってのガンズは80'sで終わっていたのかもしれない。
 彼らの登場はとにかくセンセーショナルだった。健康的なバンドが増えてハードロックが巨大なビジネスとして成立していた80年代の後半に出現したバンドでありながら、彼らには70'sハード・ロックが持っていた危険な匂いが充満していた。そのプリミティヴなパワーが最も見事な形で結実したのが1988年に大ヒットした衝撃のメジャー・デビュー・アルバム「アペタイト・フォー・デストラクション」なのだ。
 ①「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」、まさに衝撃の幕開けである。ゾクゾクするようなイントロからスラッシュの縦横無尽なギターが炸裂、シンプルなリフ攻撃がえも言えぬ快感を呼ぶ。アクセルのカメレオン・ヴォイスが一触即発の危険なムードを醸し出し、圧倒的な存在感で迫ってくる。中間部のダフのワイルドなベース・ラインもめっちゃカッコエエし、ホンマに最高、最強のロックンロールだ。続く②「イッツ・ソー・イージー」はパンク・ロック譲りの破壊衝動を内包した野性味溢れるナンバー。それにしてもアクセル、よぉこんな低い声出すよなぁ(>_<)
 ③「ナイトレイン」はノリノリの疾走感がたまらないストレートなロックンロールで、そのライブ感溢れる荒削りなサウンドはエアロスミスもぶっ飛ぶカッコよさ。特にストリートの匂いをプンプンさせながら毒を撒き散らすスラッシュとイジーのギター・ソロが圧巻だ。④「アウタ・ゲット・ミー」も③と同様エアロスミスを源流とするラフで荒削りなバッド・ボーイズ・ロックンロールで、まさに打てるもんなら打ってみろの直球勝負。特にイントロの入り方がめっちゃカッコ良くてシビレるわぁ...(≧▽≦)
 ⑤「ミスター・ブラウンストーン」は一転してウネリまくるギターが生み出すグルーヴがユニークな曲で、テンポはそんなに速くないのに何と言うハイ・テンションなんだろう! エンディングの空耳 “兄貴の位牌... ヤクザ!” にも大笑いしたっけ。⑥「パラダイス・シティ」はスローでメロディアスな前半から徐々に加速していって後半の疾走感溢れる大盛り上がり大会へと繋がる怒涛の展開が凄まじい。そのエネルギーの大爆発に思わず “これがロックだ、文句あるか!” と叫びたくなる衝動に駆られる1曲だ。
 ⑦「マイ・ミシェル」はイントロで “おっ、ついにスロー・バラッドか???” と思わせておいて、一転してラウドなリフが爆裂!いかにもガンズなサビもキャッチーでエエ感じだ。⑧「シンク・アバウト・ユー」は筋金入りの疾走系ロックンロールで、ハードでありながらメロディアス、サビのバックで聞こえるメランコリックなアルペジオが絶妙な隠し味になっている。
 2週連続全米№1を記録したガンズの出世作⑨「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」はもうイントロだけでメシ3杯は食えそうな大名曲で、ポップで甘酸っぱいメロディーもガンズの手にかかるとこの通り、スラッシュの煌くようなギター・ソロといい、アクセルのミャ~ミャ~したヴォーカルといい、実に見事なパワー・バラッドになっている。疾走系ロックンロール満載の本アルバム中でも一ニを争うスピード感がたまらない⑩「ユーアー・クレイジー」、ひたすらラウドに弾きまくるギターの刻みがめちゃくちゃカッコ良いパンキッシュなナンバーだ。
 ⑪「エニシング・ゴーズ」はグルーヴィーなギター・リフが支配する前半部分からリズム・チェンジして後半たたみかけるようなシャッフル・ビートで一気に押し切る構成が面白い。トーキング・モジュレーターを始めとする様々なギミックも効果的に使われている。⑫「ロケット・クイーン」は前半部分はイマイチわけが分からんのだが、転調してからの後半のロッカ・バラッド風展開はこの破天荒なアルバムのシメに相応しいと思う。疾走系ロックンロールのアメアラレで暴走しまくっておいて、このようにドラマティックな大団円を演出する構成力はとてもデビュー・アルバムとは思えない。
 どこを切ってもラフなロックンロールが飛び出してくるこのアルバムはアクセル、スラッシュ、イジー、ダフ、そしてスティーヴンの5人が揃って初めてケミストリーが生まれることを如実に物語っている。スリル満点のサウンド、理屈抜きのカッコ良さ、そして既成概念を寄せ付けないカリスマ性... これはおそらくこの時期の彼らにしか作り出せなかったであろうハードロックの奇跡的名盤なのだ。

Sweet Child O' Mine Music Video