shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Johnny Get Angry / Joanie Sommers

2009-08-28 | Oldies (50's & 60's)
 ジョニー・ソマーズというと私は長い間、高校時代にラジオのオールディーズ特集でエアチェックした「内気なジョニー(ジョニー・ゲット・アングリー)」しか知らず、シェリー・フェブレーやダイアン・リネィ、リトル・ペギー・マーチといった同時代の女性シンガーたちと同じ “美しき一発屋” だと思っていた。その後LP時代からCD時代へと切り替わり、レコード各社から様々なオールディーズ・コンピレーション盤が出た(特にテイチクとセンチュリー・レコードが多かった...)時もここぞとばかりに色々買ってはみたものの、どれもこれも似たり寄ったりの選曲で、ジョニー・ソマーズの場合も「すてきなメモリー」はおろか、「ワン・ボーイ」すら入っていないという悲惨な状況で、私はいつまでたっても “ジョニー・ソマーズ = 内気なジョニー” から抜け出せなかった。
 そんな私に新たな展開がやってきたのが今から約10年前のこと、ちょうどジャズ・ヴォーカルに目覚めた頃で、私はジュリー・ロンドン、ペギー・リー、ドリス・デイ、クリス・コナー、アニタ・オデイらを中心にオリジナル盤を集めており、もっともっと色んな女性シンガーも聴いてみたいと思いながら虎視眈々と中古レコード屋を廻っていた。そして関西一円のレコ屋を狩り尽くした私は長期休暇を利用して東京・横浜まで足を伸ばすことを考えた。わざわざ新幹線に乗って2泊3日でレコードを買いに行くというのは今から考えると滑稽に聞こえるかもしれないが、当時はまだパソコン導入前でイーベイもヤフオクも知らず、欲しいレコードを手に入れるには関東進出(笑)しかなかったのだ。私はレコ屋廻り以外は県外へ出ることすらなかったので、東京なんて右も左も分かるはずがない。そんな私の強い味方が “レコードマップ” という、日本全国のレコ屋が載っているガイドブックだった。ビニール・ジャンキー御用達ともいうべき“レコマ” 片手に颯爽と(?)東京へ乗り込んだ私は首都圏一円に散らばるディスク・ユニオンを始め、悪名高い JARO から今は無き trot-n-gallop ことヴィンテージ・マインまで、ありとあらゆる中古屋を廻ったのだが、中でも一番収穫のあったのが梅ヶ丘のノスタルジア・レコードというお店だった。
 そこはヴォーカル・ファンにとってはまさに聖地、パラダイスのような所で、関西のどこを探しても置いてなかったような希少盤や、見たことも聞いたこともないようなマイナー盤がゴロゴロしていた。そんな中、コーフン状態でエサ箱を漁っているとめちゃくちゃエエ雰囲気の女性ヴォーカルがかかった。温厚そうな店主の方に “今かかってるの誰ですか?” と聞くと “ジョニー・ソマーズですよ。” といわれビックリ。それは彼女がローリンド・アルメイダのギターとストリングス・アンサンブルをバックにボサノヴァを歌った「ソフトリー・ザ・ブラジリアン・サウンド」というアルバムで、笑い転げるような彼女の天真爛漫な歌い方がウキウキするようなボサノヴァ・サウンドと見事に合っていた。めちゃくちゃ気に入った私は彼女がジャズを歌った「ポジティヴリー・ザ・モスト」も一緒に購入、その翌日に行った川崎の TOPS というお店で「ジョニー・ゲット・アングリー」を格安でゲットし、結局その買い付けツアーで彼女のアルバム全8枚中ベストの内容を誇る3枚を入手することができたのだった(^o^)丿 
 帰阪してから彼女の CD も何枚か買ったが、一番嬉しかったのが「ジョニー・ゲット・アングリー」にアルバム未収録シングル音源を追加したこのお徳用CDで、彼女唯一の全米Top 10入りシングル①「ジョニー・ゲット・アングリー」(62年、7位)はもちろんのこと、チャート上の不成績が信じられないデビュー・シングル③「ワン・ボーイ」(60年、54位)や日本語ヴァージョンも出た⑦「すてきなメモリー」、ニール・セダカあたりが歌いそうな日本でのデビュー・シングル④「いとしのルビー」、映画「若さでブッ飛ばせ!」の中で歌った弾けるような⑭「恋のレッスン」etc、キャッチーな曲が一杯詰まっており、そのどれもが彼女のキュートな歌声の魅力を活かしたドリーミーなポップスで、まさにアメリカン・オールディーズの王道そのものだった。又、しっとりと聴かせる②「シーム・フロム・ア・サマー・プレイス(避暑地の出来事)」や可憐な歌声に萌えてしまうジャズ・スタンダード⑨「リトル・ガール・ブルー」もたまらない魅力を持っているし、ビッグ・バンドをバックにスインギーに歌う⑳「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」(ビートルズのカヴァーで有名)なんか出色の出来だと思う。
 70年代後半にカムバックして以降も「ドリーム」、「タンジェリン」、「ア・ファイン・ロマンス」といったアルバムで相変わらず舌っ足らずで可愛い歌声を聴かせてくれたジョニー・ソマーズ。オールディーズ・ポップスからジャズ、ボサノヴァ、そしてペプシのCMソングまで何でも器用にこなす彼女は、決してチャート成績とかの記録云々で語るような存在ではなく、そのキュートな歌声で人々の記憶に残る庶民派アイドルなのだ。

内気なジョニー/ジョニー・ソマーズ