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元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

永田氏の来神

2011-04-10 | 仕事について

様々な活動が止まり、沈滞した雰囲気を感じますが、私たちは今まで通り活動していきたいと思っています。
永田さんも私たちと同じ気持ちで、今年も色々なものを積極的に作っていきたいと思っているようで、とても頼もしく感じています。

予告通り、工房楔の永田さんが当店を訪れました。

私は店を始める前から素材感を大切にした筆記具を追求したいと思っていて、ファーバーカステルや国産の木軸の筆記具などが長く使って、愛着が湧く自分仕様になっていくということを訴えてきましたので、ル・ボナーの松本さんが永田さんを紹介して下さって、今当店で永田さんの商品を扱えているのはとても幸せなことだと思いますし、もしかしたら出会うことは必然だったのかもしれないと思っています。

永田さんと出会って、本当に良い木をたくさん見ることができましたし、木目の見方や面白さが分かりました。
永田さんの商品は他のお店にはない当店の特長にもなっていますので、助かっている部分のあります。

そして何よりも木に惹かれるたくさんのお客様と出会えたことは、かけがえのないことでとても感謝しています。

木工家の実力はその材を見極める審美眼があるかどうかが大切な要素になりますが、永田さんにはそれがあり、良いものは良い、もうひとつのものはもうひとつだとお客様に伝える正直さがありますので、お客様方は安心して永田さんの商品を購入することができるのだと思います。

夜、元町商店街と南京町の間にある中華料理劉華荘で夕食をとり、様々な話をしました。
永田さんはコンプロットの新作、ミニタイプ4本入れも作っていて(今回は試作品のみ持参されました)、今年はそれが注目の新製品ということになります。

コンプロット4は、今までのコンプロット10が机上用的なものだったのに対して、携帯できる刳り物のペンケースという狙いで作られています。
万年筆を使うことをさらに楽しくしてくれる、贅沢なペンケースの携帯版を大いに期待しています。

 


無駄のない洗練された所作

2011-04-09 | 仕事について

先日震災以後最大規模の余震がありましたが、東北地方の余震はずっと続いています。
自然はいつまで東北地方の人たちを苦しめるのかとても理不尽に思います。
そんな人たちを同じ人間、同じ日本人だけは苦しめてはいけないし、その人たちが日常生活を取り戻した時に日本がジリ貧では困る。
私たちで日本経済を盛り上げていかなければいけませんね。

月3回のお茶のお稽古をしています。
お稽古中万年筆のインクを入れるのも何かお手前に似ているような気がして、面白く思いました。
もちろんカートリッジではなく、吸入式での話しです。

ティッシュを1枚用意する。
インクのキャップを開ける。
万年筆のキャップを外す。
ボトルインクの口の上で万年筆の尻軸を反時計回りに回して、ピストンを下げる。
ペン先をインクに漬ける。
尻軸を時計回りに回転させてピストンを上げる。
いっぱいまで回したら、もう一度ピストンを戻して2滴ほどインクを落とす。
ペン先を上に向けてピストンを元の位置に戻す。(私はペン先を上に向けませんが・・・)
ペン先、ペン芯、首軸をティッシュで拭く。
万年筆のキャップを閉める。
ボトルインクのキャップを閉める。
完了。

これらの一連の動作をいかに自然に流れるようにするかで、万年筆に慣れているかどうか分かるような気がしますが、慣れているから偉いというわけではなく、ただお手前のように無駄なくスマートにできたらいいなあと思いました。

同じように文字の上手い下手ではなく、文字の書き方で、その人が万年筆で文字を書くことに慣れているどうか分かるような気がします。
これも同様にだからすごいというわけでは全くありません。
でも、この慣れた様子をあるペンドクターは手が枯れていると表現していましたが、同じ動きを何度もしているとだんだん洗練されてきて、余分な力のはいっていない、無駄のない動きになっていくのでしょう。
自分もそのように文字を書きたいと思いました。


厚い素材のシャツ

2011-04-08 | 仕事について

神戸は雨なので、東北地方は明日頃に降るのでしょうか。
雨が被災地に舞っている埃を地面に落として、少しは空気を良くしてくれたらと思います。
 

 

何でもそうですが、洋服は特に素材の厚いがっしりしたものが好きなので、ボタンダウンのシャツにもそういうものがあることを知って興味を持ちました。

ブルックスブラザーズのオックスフォードシャツは、とてもしっかりとした生地で作られていて、しかもメイドインUSAということで、ぜひ欲しいと思っていました。
でもずっと外人サイズの大きなものしかなく私のような小柄な人間に合うものがありませんでした。

しかし、昨年くらいからスリムフィットとというものができて、やっとオックスフォードシャツを着ることができました。

ブルックスブラザーズのシャツは胸ポケットがないものも多いですが、オックスフォードシャツはマークがない代わりに胸ポケットがちゃんとあって、ペンを差したり、手帳を入れたりすることができるので便利です。

万年筆はペンケースに入れて持ち歩けばいいのですが、書きたいと思った時にすぐ手の届くところにペンがないと嫌で、胸ポケット付きのシャツは必須条件になっています。

もうひとつシャツ選びの条件があって、それはブルーであることです。
ペン先調整などをしているとどうしてもインクを飛ばしてしまうことがあります。
白や薄い色のシャツではインクシミが目立ってしまいます。でもオックスフォードシャツのブルーはその生地の風合いも手伝って、インクシミが目立ちませんのでそういったところもお気に入りに拍車をかけています。

先日やっと2枚目を手に入れましたが、シャツをすこしずつ入れ替えて、そのうち全てを同じブルーのオックスフォードシャツにしたいと思っています。


素材が厚く丈夫であるほど、何度か着て洗濯しないと馴染んできませんが、そういったところもとても好きです。
1年の中で、仕事でも休みでも一番よく着るのはボタンダウンのシャツで、それが丈夫で好みに合っていればとても気分が良いと思っています。


ハンドクリーム

2011-04-07 | 仕事について

今週になってからとても暖かくなってきて、春らしい陽気が続くようになりました。
被災地にも早く春が訪れたらいいですね。

 

ペン先を調整した後で他の用事をする時に、手についたインクをアルカリイオン水を吹きかけて水で流すということを繰り返していましたので、冬にヒビ割れが出るようになりました。

肌があまりデリケートではない方なので、今までそういったことが気になったことはありませんでしたし。
しかし、店を始めた冬にヒビ割れが出始めるようになって、しばらく成す術なく苦しんでいました。

お客様のYさんがロクシタンのシアバター配合のハンドクリームを下さって、それを使うようになってヒビ割れがなくなりました。
ペンやガラスにべったりと指紋がついたら嫌なので、夜寝る前に塗るようにしていますが、効果があります。

齢をとって手のひらなども乾燥して白くなることが多くなりましたので、そちらにも効果があります。

手は大切な商売道具で、ちゃんと手入れをしないといけないと思いました。

ハンドクリームというと女性だけのものと思っていましたが、男性も日常的に使うべきだと思いました。
でももしかいたら、皆さんすでに使われているのかもしれません。


母の20周忌

2011-04-05 | 仕事について

高校生の時、友人から尾崎豊の存在を教えてもらい聞くようになりました。
演歌歌手のような名前、泥臭いくらいに自分の想い、感情を伝えようとするスタイルに、それまで洋楽しか聞いていなかった私は少し批判的に聞いていましたが、尾崎豊の曲をバンドでするようになって、気付いたら高校時代を思い出させる歌手になっていました。

尾崎豊が亡くなって20年経つというテレビのコメントを聞いて、大変親不孝で申し訳ないけれど、母が亡くなって20年経ったことに気付きました。
母に余命3ヶ月が宣告された時、尾崎豊が亡くなったことがテレビや新聞で大きく取り上げられていたこと、それを母に言ったことを昨日のことのように覚えています。

母は宣告通り3ヶ月で自宅で亡くなり、とても忙しい葬儀の後私たち3人は母のいない生活に入っていきましたが、それから少しずつ私の人生は動き出しました。

父と妹は母が亡くなった家でまだ暮しているけれど、あの時と何もかも状況が変わっていることに、齢をとるということ、歳月が流れるということがどれだけ物事を変えていくのかを考えざるをえません。

母が亡くなった後、妹が勤めていた東京の不動産会社が倒産して帰ってきました。
20年前というと、バブル崩壊はじまりの年でもありました。

母が亡くなった時の私はまさか自分が万年筆屋の主になっていると思っていなかったし、母も私がそういう生き方をするとは思っていなかったと思います。

20年、過ぎてしまうとそれほど長く感じませんが、いろんなことがあって、人の人生の中ではとても長い月日のように感じます。


白髪ぼかし

2011-04-05 | 仕事について

今回の被災で日本全体がひとつにならなければという気運が高まっていて、日本国民それぞれが自分のできることで日本全体の役に立ちたいと考えるようになっているように思います。
しかし、政治の世界は何となくその心の動きからズレていて、いまだに足の引っ張り合いが見られるのは残念です。
今派閥とか政党とかいっている場合ではないと日本国民全員が思っているのに、政治家だけが今までの延長線上のこだわりを捨て切れていない。
今はこれまでの思想の違いによる争いは置いておいて、条件などつけずに取り合えず協力できることは協力し合おうと考えて欲しいものです。

 

実は昨年からひそかにキャンペーンを張っていました。

それは今までの気がかりを無くすこと。
自分の中で気になっていただましだまし来たけれど、何とかしたいと思っていることを直すというものです。

ひとつは歯を治すということと、もうひとつは白髪を染めるというものでした。

店を始めた頃から白髪が目立ち始め、昨年には部分的にかなり多くなってきました。

いつも行く散髪屋さんの店内に「白髪ぼかし」という短冊が貼られていて前から知っていましたので、マスターにどういうものか聞いてみました。

ちゃんとした毛染めではなく、もう少し簡単なものでそれほど時間もかからない。
家で自分でする白髪染めを代わりにするようなものだと教えてもらい、すぐにしてもらいました。

やってもらうと不自然な感じはなく、髪全体が真っ黒になるわけでもなく、白髪だけが消えたような感じ。
なかなか気分が良い。

もっと早くやっておけばよかったと思うくらいでした。

2,3ヶ月で効果が消えてしますので、数ヶ月おきにしなくてはいけませんが、少しの時間とお金で印象が変わり、自分の気分も変わるのでとても良いと思っています。

でもまだまだ気がかりというか、課題があるのでできることから少しずつ解消していきたいと思っています。


門出を送り出す気持ち

2011-04-04 | 仕事について

当店の近辺の桜は毎年早くて、生田中学校西側の坂道にある1本桜は満開を通り越して、散り始めています。
県公館まで真っ直ぐのびる坂道は、美しく保たれていて、歩くととても気分が良い道です。

東北地方の桜はまだですが、春は少しずつ近付いています。
暖かな日の訪れに皆様のお気持ちが少しでも明るくなればと思います。


大学入学、就職などで下宿する子供さんを送り出した方のお話をよくお聞きします。

今まで一緒に暮してこられて、年頃になると何となく会話を交わすことも少なくなりますが、我が子のことはいつも気にかかります。

あまり話さなくても様子をうかがったり、奥さんから話を聞いたりして日頃の生活を感じ取っていた毎日から、遠く離れてしまいご夫婦で子供さんを按ずる会話を交わすようになる親心はものすごく分かります。

思えば、妹が京都の短大に行くために下宿していた時、事あるごとに私をやたらと京都の妹の家へ行かそうとしていた両親の気持ちもそうだったのだろうと、思い当たりました。

子供さんの門出を祝う気持ちと心配だけど様子を見ることのできない複雑な気持ちを親御さんは皆抱いているのかもしれません。

子供のことを親が忘れず、いつも気にかけているの同じように、子供は何か悪さする時など親に対して後ろめたい気持ちになるもので、親子の気持ちは繋がっているものだと思います。


チラシの裏

2011-04-03 | 仕事について

万年筆で書くからには、しっかりとした良い紙を使ったノートを使いたいと思っています。
物として魅力がある良いノートを愛用して使っている自分の姿をイメージしてそういったものをいつも使いたいと思うし、お店などで見つけると買ってしまいます。

しかし、そういったものが窮屈に感じられることもあって、紙面を前に手が止まってしまうこともあります。

ちゃんとした文章を残そうと意気込んでノートなどに向かって頭をひねってもあまり良いアイデアが浮かばない。
そういったことがよくあります。

それならと、試しに新聞折込のチラシの裏の白いところに書いてみると、立派なことを書かなければいけないというプレッシャーから解き放たれるのかどんどん書くことができるという経験を何度かしました。

人それぞれ違うと思いますが、私の場合そんなふうなので、メモ書き用にそのへんにある紙を葉書サイズに切って、2穴空けて、革紐で束ねて、簡単な革の表紙をつけてみました。

何でも思いついたことを書いて、それを清書したらちぎってすてていく。

そんなザックリとしたメモ帳を使っていますが、とても快適に使えています。

何も書く内容を深く考えずに思いついたことをどんどん書いていく。
とにかくどんどん書いていける。

手製のメモ帳はチラシの裏の延長にあって、万年筆とはひどくアンバランスなものですが、書いただけで満足してしまうことを防いでくれています。


ワークショップ“きれいな文字を書こう”卒業制作

2011-04-02 | 仕事について

ペン習字のように気合を入れて文字を書くような時にも万年筆の力というものが要求されること分かりました。
書くスピードは早くなくても、長時間でなくても気持ちの強さについてきてくれるペンとそうでないペンがあるようです。

書き味の良さよりも自分が求める線が書けるかどうかがこのシーンで求められる性能であり、時には強く押さえることを繰り返す書き方ではインクが薄くなってしまうペンもあります。

私が持っているペンで最も書き味が良いのはアウロラ88ですが、これはインクの出が多すぎて使えませんでした。

同じく書き味の良い1931ホワイトゴールドも同様で、ペン先が硬いと思っていたものでも、意外とインクがたくさん出てしまうこともあることが分かりました。

私がペン習字の本番で使ったのは、セーラー銘木シリーズ鉄刀木と極黒インクの組み合わせで、普段なら絶対に使わないインクの出の少ない書き味の悪い組み合わせでしたが、強く押さえてもインクが出すぎないし、何といっても線がきれいに書ける。

こんなふうにペン習字の卒業制作は自己研鑽よりもペン選びに終始した感がありますが、それでも道具の選択により、集中して快適に作品を仕上げることができるものだと思っています。

卒業制作は自分の好きな歌詞を書こうというもので、皆様それぞれ思い入れのある歌を選んで書かれていました。

私が選んだのは、山下達郎の街物語で、愛する人が出て行ってしまっても自分は生まれ育ったこの街で生きていくという男の決意を歌った歌だと解釈しています。
そんなかっこいいものではありませんが、自分の心情に近いような気がして、気持ちを込めて書きました。

ペン習字教室は4月で一旦区切りをつけますが、5月6日(金)19時からまた始まります。

次回は楷書と行書の課題をそれぞれレベルに合わせて選べるようなお手本を堀谷先生が作って下さっていますので、今まで来られていた方も、初めて参加される方も同時にできるようにしますので、まだワークショップに参加されたことのない方もご参加ください。

今回皆様が制作された卒業制作は、4月15日(金)から5月6日(金)まで展示いたします。


月の終わり、始まり

2011-04-01 | 仕事について

月が終わると1ヶ月の売上や仕入れ額を計算して、店にいくらお金が残るか集計します。
電卓をたたきながら自分の仕事で生活させてくれる世間様に対して有り難みを感じます。

利益というのは、ただ売上が良くても、仕入れが多ければ残りませんので、毎日の売上と仕入れのバランスには気にしていますが、月末に集計してその結果で良ければ静かに喜んだり、悪ければ来月がんばろうと思います。

悪い月にあまり気に病まないこと。先の売上の心配をしないこと。
それが健全な精神状態で自営業を続けるコツなのかもしれないと思っています。

今月売り上げが良くても、来月はこんなに上手くいくだろうか、そしてこの心配が一生続くのだろうかと考えるととてもしんどくなってしまいます。

毎月、毎日、訪れた日にベストを尽くす。
その積み重ねがひと月だったり、1年だったりだと考えるようにしようと思っています。

もちろん将来の展望、目標、夢は必要で、それに向かって店は進んでいくべきですが、その場合の売上について考える感覚は少し違う記録としての金額で、自分の生活と切り離されたものです。

会社を長く続けるコツを知っている人なんて多分いないでしょうし、業績が絶対に悪くならない方法を知っている人なんていない。

店を始める前、それを知っている人がいると思っていましたし、何か正解があるのかと思っていました。
でも本当は正解などなくて、やり方はそれぞれ何通りもあって、大切にしないといけないないことは自分らしくすることだと知ったのは最近のことでした。

だから気に病まないようにすぐに気分を入れ替える。
そんなふうにいつまでも続いていけることをいつも考えています。

私のように毎月の会社の業績に喜んだり、頭を抱えたりしていた事業主の人が被災地にもたくさんいるのだと思います。
今まで積重ねてきた努力がゼロの状態に戻されてしまったと絶望されている方もおられると思います。

でも会社というのは、信用の積み重ねて、それが少しずつ売上に代わっていくものだと思います。
人と人との繋がりである信用は物が壊れても残っていますので、何とか再起してもらいたいと強く願っています。