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元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

立って書くということ

2011-04-20 | 仕事について

一昨日の話の続き。

書くということを考えた時、私はどうも立って書くということを一番に思い浮かべるようです。

立って書くためにはどういったものを使えばいいか。
例えばメモ帳に関しては、折り返して使うことができるものが理想です。

折り返して使うことができるものは、手の中に納まるし、表紙が硬くなって立ったままでも、むしろ立ったままの方が書きやすいくらいです。

サイズはあまり小さなものは、文章を書くのに適さないので、せめてはがきくらいの大きさのものが良くて、これ以上大きくなるとそれは最早メモ帳とは言えなくなるし、何よりも手の中に納まりません。

折り返して使うことができるメモ帳でよかったのはライフのクロスノートという、コクヨの測量野帳のようなサイズのものでしたが、作っておられた職人さんが体調を悪くされて現在生産がストップしている状態だという話です。

現在は、最も簡素な形態にしていて、はがきサイズの紙に穴を開けて、革の表紙をつけて、革の紐で束ねたものです。
たくさんの紙を重ねるとそれなりの厚みになり、縦開きにすると手の中に納まります。

そういった簡単なメモ帳を使うようになったのは、書き終えてその文章を何らかの形に活用できたら破り取って捨てていくということが私に合っているように思えました。

それまで万年筆でノートに書けだけで満足して、それを生かしたりすることにあまり興味を持っていませんでした。
でもこういった簡単なメモ帳なら、何らかの活用をしていなければ、書いたものがいつまでもその中に残っているのですぐに分かります。

でも私のメモ帳を探す旅はまだまだつづきそうですね。

 

 

 

 

 

 

 


日曜日の風景から

2011-04-19 | 仕事について

たまたま居合わせたお客様同士で会話が弾んで、予定した以上の時間滞在する。
そんな光景が当店ではよく見られます。

皆さん約束して集まるわけではないのになぜか集まってくる。

人が人を呼ぶ、お店ならではの現象に不思議に思いますが、そうやって集まって下さることにとても有り難く思います。

店を始める前、入り口から入ったお客様が商品をどのように見て回るか、順番待ちをされるお客様がどこで待つのかなどお客様の動きに関してのイメージはありましたが、こんなふうにお客様の居場所として当店が機能するように意図したわけではありませんでしたし、考えてもみませんでした。

お客様同士の楽しい会話で当店の時間をより良いものになるというイメージをデザインしてもなかなかそうならないと思いますし、それは店が意図して作れるものではなく、お客様が作るものだと思いました。

きっと同じ店を作ろうとして、同じような立地、同じようなレイアウトにしても、また違った雰囲気をそのお店は持つと思います。

日曜日は、土曜日に比べてお客様が少ないので、ゆっくりした和やかな時間が流れていくことがありこの前の日曜日もそのような光景を見ることができました。

店をやっていて本当に良かったと日々思いますが、お客様同士の心の交流がいつまでも見られ店でありたいと思います。


はかどる場所

2011-04-18 | 仕事について

ちゃんとした書斎や自分のデスクを持たない私はダイニングテーブルで書き物をします。

書き物といっても原稿を何十枚も書かないといけないとか、ハードに書きまくるわけではありませんので、それでいいのかもしれません。

でもダイニングテーブルの欠点は気が散るということ。テレビや話し声に自分が反応してしまい、そちらに注意を持っていかれてしますことです。

一番集中できるのは群集の中での孤独な状態の時だと思います。
最も理想的なのは通勤電車の中で立っている状態です。

喫茶店など座る椅子もあって、理想的な環境に思いますが、体調によって眠くなってしまうことがありますが、さすがに立っているとそういうことはありません。

20年近く乗っている電車なので景色も気になりません。
周りにたくさんの人がいますが、誰も知り合いではありませんので、話しかけてこない。

立った状態でメモ帳を開いて、万年筆で書きますが、これが一番はかどります。

立っているので眠くならないし、神戸近郊の通勤電車はぎゅうぎゅうに込み合うことはありませんので、電車の中で万年筆で書くことができるのです。

垂水から元町まで20分ほどなので、駅に行くまでの頭の中で考えておかないと、メモ帳に何も書かないまま元町に着いてしまうことになる。

そんな電車の中の時間があるので、鞄は肩から掛けられるものにしたいですし、万年筆はすぐに取り出せて、仕舞えるようにシャツの胸ポケットに差したい。

こだわりの時間のために、物にこだわる。
メモ帳が好きなのも、シャツに胸ポケットが欲しいのも、鞄にストラップが欲しいのもそんな電車の中での時間がいつも頭の中にあるからなのです。


ル・ボナー天ファスナーブリーフケース

2011-04-17 | 仕事について

ずっと鞄について考えていました。

仕事の日に持っていくような感じで、でもスーツではないカジュアルな服装に合うもので、電車の中で書き物や読書をする時に鞄を床に置かなくてもいいように肩から掛けることができるもの。

ルボナーさんに、男性が使えるような取っ手の長い、例えばLLビーンのトートバックのような形のものがあればいいのだけどありませんし、たぶん作らないだろうな。
でもル・ボナーさんの良い素材でしっかりと作られた長く使えるものを見ているので、ル・ボナーの鞄が絶対に欲しい。

ル・ボナーさんの天ファスナーブリーフケースは発売された時から気になっていて、ぜひ欲しいと思っていましたが、スーツに合うように作られたビジネスバッグだと思っていましたので、購入に踏み切れませんでした。

しかし、キャメル、グリーン、チョコなどを選ぶとカジュアルな服装でもおかしくないと思えるようになりましたし、ショルダーストラップを使うことができるので、自分の求める用途に合っている。

結局、キャメルを選んで使うことになりました。
キャメルだけステッチの色が同系色ではない、グリーンになっていて、そういったところも気に入っていました。

仕事に行く日用の天ファスナーブリーフケース、コートなど冬の格好で前ボタンを締める時には斜め掛けで持てるパパスショルダー、休みの日は買ったものをペーパーバックのようにそのままポンポン入れることができるディプロマトート。

これで全ての鞄がル・ボナーのものになりました。

まだ使い出したばかりで、この鞄について追々お話させていただきたいと思っています。

店にこの鞄をこれ見よがしに置いていたら、Iさんは同じもののチョコを持っていると言っておられましたし、Hさんはちょうど同じ日に同じものの黒を買われて、帰りに当店に寄って下さって鞄の話に花が咲きました。

鞄などこだわりの持ち物で一番つまらないのは、例えば電車に乗ったときに隣に座っていた人が同じ鞄を持っていたというようなことだと思っています。
でもル・ボナーさんの鞄だとまずそれは起こりえないし、もしそういうことがあったとしても、それはル・ボナーさんを共通の話題として盛り上がることができるチャンスだと思えます。


しかし、この鞄のブッテーロを厚く使った頼もしさは本当に好みです。
かなり以前タナ・クロールというイギリスの鞄を見て、その革の厚み、丈夫な作りに感激しましたが、それに通じるところがあります。

ブッテーロという革は、革本来の血筋やムラ、傷などをあえて残るようになめしている革だと聞いたことがありますが、そういった素材感はビニールや合成皮革にはないものですのでとても好きです。

私と同じようにカジュアルな服装で仕事に行かれる方にも天ファスナーブリーフ、お勧めします。


とりとめもない万年筆の話

2011-04-15 | 仕事について

昨晩はワークショップ“万年筆で描いて色を塗ろう”教室がありました。
テーマは「万年筆な人を描こう」で、人物画に初挑戦でした。
絵を描きなれていない者にとって、人物画というのは最も難易度の高い課題と認識していて、1ヶ月間どうしようかと頭を抱えていました。
でも皆さんのご指導、ご協力もあって人を描いているようには見えるくらいにはなって何とか人物画を描くことができました。

次回は5月27日(金)に「乗り物を描こう」というテーマで開催いたします。
ぜひお気軽にご参加ください。

 

今まで何となく万年筆の書き味についての話を避けてきたところがあります。

書き味というのはかなり主観的なもので、同じ万年筆を使ってみても人それぞれ感じ方も違いますし、何よりも調整がうまくいっているものとそうでないものでしたら、同じ万年筆でも全く違ったものになります。

このペンは書き味が良いとか、これは悪いというのは個体に対して言えても、その万年筆全てに言えることではありません。

万年筆なら書きやすく調整すればどれも書きやすくなって、余程のことがない限り書きにくくて仕方ないというものは存在しないのではないかと思ったりします。

そして、何か差異があるとすれば、使う人に合う合わないということと、気分的な満足感などかなと思っているので、この万年筆はこんなふうに書きやすいというのは、人それぞれ感じ方で違うので、それを私の感覚で皆様に押し付けたくないと思っていました。

でも万年筆の醍醐味のひとつは書き味の違いについて語り合えるところです。
考えてみれば、例えば日本酒などもその味わいは人それぞれだと思いますが、その味や薀蓄について語り合うことは文化に近いものだと思われるし、ワインも同様ですね。

万年筆にもそれがあっても良いのではないかと思い始めましたので、私の感覚での書き味などの話をしてみたいと思います。


かなり前から感じていたことですが、セーラーの万年筆の特に中字以上は気持ち良く書けて、線がきれいに出るポイントが決まっています。
そのポイントからズレると引っ掛かりが出たり、線が美しくなくなったりしますので、注意して使わないといけません。

でもポイントで書けた時の書き味はとても良く、何物にも代え難いものがあります。

セーラーのこのポイントが他のメーカーよりも限られているところは調整である程度変えることができますが、でもバットの真芯でボールを捉えた時のようなジャストミート感は減少するような気がします。

セーラーの万年筆で常にジャストミートしながら文字を書くにはかなり気をつけていないといけませんが、でも私はこの快感を味わいたくて、そしてその時に書ける線の美しさを見たくてセーラーの万年筆を使います。

 


休日の風景 阪神間の街

2011-04-15 | 仕事について

本日から、ワークショップ“万年筆で美しい文字を書こう”の卒業制作展を開催しております。
参加者の方々の半年間の練習の成果をぜひご覧ください。(5月6日まで)

 

阪神高速の上、西宮インターチェンジを過ぎた辺りから、神戸らしさを感じる風景を見ながら走ることになります。

海と山が迫った狭い平地から山の中腹近くまで登っている家いえ。

私が子供の時は山も海も開発されて街はどんどん大きくなっていくように思っていましたが、街の膨張は今は止まっているように見えます。

そのきっかけは地震という最悪の出来事でしたが、街が膨張し続けるのは自然に反したとても欲張りなことだったのかもしれません。

阪神間はお金持ちたちが住む山の手と、多くの庶民が住む下町が横方向の帯状にくっきりと分かれているような気がします。
でもどちらもとてもこの街らしい。

そんな街を見ながら17年でよくここまで復興したと思うと、胸が熱くなります。

建物は倒れ、高速道路は落ちて、鉄道も落ちた街が、被災の跡が全くわからないくらいになっていて、時間の経過と人の営みの偉大さを感じずにはいられません。

東北地方の被災は、阪神淡路の自身とは規模も強さも違いますが、東北も被災したのが嘘のように復興したと思える日が来るのを心から祈っています。


節電

2011-04-14 | 仕事について

関東圏の夏場の電力不足は明らかで、それはかなり深刻状態なようです。

計画停電というのも効果があるのでしょうが、やったりやらなかったり、治安が心配になったりして市民生活に不安が出ます。

そういった付け焼刃の施策よりも、今後あまり電力を消費しない社会の構造を設計する必要があるのではないかと思っています。

多くの人も考えておられるでしょうが、例えば看板のネオンを止めたらどうかと思います。
電飾のネオンがなくなることで、街の風景も落ち着いたものになると思います。

毎週1回、国民の完全休日を作って一切の企業活動を止めるようにすることでも電力消費量を抑えることができると思います。

例えば毎週日曜日はお店なども閉店している完全休業日なので、街に出かけたりしないで家で過ごすとか。

イメージは私たちが子供の頃のお正月の感じです。
お店も何もかも閉まっていて、家で家族で過ごしました。
そんな日が1週間に1度あってもいいのではないかと思ったりします。

日本は今まで、たくさん働いて、たくさん消費してきました。
働く量を減らして、消費する量も減らす、気分的に落ち着いた静かな暮らしを目指すのも節電に効果があるのかもしれません。


万年筆できれいな文字を書こう教室卒業制作展 4月15日(金)から5月6日(金)

2011-04-13 | 仕事について

FridayWorkshop“万年筆できれいな文字を書こう”の卒業制作の展示を4月15日(金)から開催いたします。

月曜日に届いた額に皆様の作品をゆっくりと入れていきました。

それぞれの作品を額に入れるとすごく見栄えるというか、どれもとても良い作品になっていると思いました。

卒業制作の日、堀谷先生も万年筆画教室の神谷先生同様急に厳しくなって、皆さん何度も書き直していましたが、その甲斐があったのだと思います。

額入れの途中に堀谷先生も来店され、皆様の作品を味わいながら一緒に観てもらいました。

字がとても美しかったり、レイアウトが絶妙だったり、勢いがあったり、それぞれに個性があり、味があります。

6ヶ月のワークショップで皆様それぞれ個性を生かしながら、美しい文字を手に入れたことがよく分かりました。

“万年筆できれいな字を書こう“教室も5月6日(金)からまた新たに始まります。

今まで来られていた方も新たに参加される方も一緒にできるものになりますので、初めての方も気後れせずぜひご参加下さい。

 


投票率

2011-04-12 | 仕事について

またさらに強い余震に見舞われて、被災地の人たちの不安は大きくなるばかりです。
瓦礫の山と化している被災地はどうやって復興していくのだろう、避難している人たちの生活はどうやって日常を取り戻していくのだろう。
震災からもう1ヶ月も経ちますが、まだ何も見えてこないような気がします。

先日の市議会議員、県議会議員選挙の投票率が悪かったようで、ひとつになって日本を盛り上げていこうと多くの人が声を上げて、政治への関心が強まっている中、投票率は上がると思っていたので、意外に思いました。

でも市県民の人たちの本音は、知り合いでも立候補しない限り、どの人がどういう人か全く分からないし、その人たちが各政党の数のうち以外にどんな役割があるのだろうという疑問と地方政治の無力感が投票率に表れたのかもしれません。

中央への一極集中は本当に様々な弊害を地方にもたらしていて、もう限界だというところまで来ていて、地方政治の存在が重要になっているはずなのに。
それぞれの県、市町村が自分たちの地域の活性化、住む人の幸せを考えて地方を盛り上げて欲しいと思います。

そんな中での投票率の悪さは、本当に寂しく地方政治はもっと地域住民の期待を集めないといけないと思いました。


地方で安心して暮すには産業も必要です。
それによって雇用が生まれ、生活が成り立つのだと思いますが、地元の産業をなるべく利用して、盛り上げていくという地元の人たちの意識もそれを助けるのだと思います。

 

 


万年筆な人を描こう

2011-04-11 | 仕事について

4月15日(金)19時から21時の次回ワークショップ“万年筆で描こう 水彩画編”のテーマが万年筆な人を描こうです。
万年筆が似合うと思う著名人をそれぞれ選んで描くというもので、人物画への初の挑戦です。

万年筆が似合う著名人とは誰だろう。
例えば年1回選出されるハートラインプロジェクトのペンアワードを受賞した人たちは誰もが認める万年筆が似合う人でしょう。
松浦弥太郎さん、リリーフランキーさん、布袋寅蓁さんなどはこれからの万年筆のイメージに近い、今万年筆を使っている人たちの感覚に近い感じがしました。

もちろん作家の方々も万年筆が似合う著名人だと思いますし、万年筆で仕事をしていて欲しいとの願いもこもります。
窓に面した座机、山盛りの灰皿、ペントレイにたくさん並べられた万年筆、そんな作家の机の光景は古い文豪のイメージなのかもしれませんが、そうあってほしいと勝手に思っています。

でも実は私が万年筆の似合う著名人として、最初にイメージしたのは高倉健さんでした。(描けるかどうかは別として)

高倉健さんが出ていた映画で演じていた人たち皆が持っていたあまり荷物が入ってなさそうなボストンバックの中に古いパイロットエリートが入っていて、一人の時間小さな手帳に万年筆で何か書き込んでいるような気がします。

そしてプライベートでは結構万年筆が好きで、手紙などもよく書くということは、何かで読んだことがあります。

高倉健さん以外にも考えたらいくらでもいると思いますし、お客様のHさんは神谷先生と同じくヘミングウェイをイメージされたようで、昨日当店で1枚描き上げておられました。
Tさんは大橋巨泉さんがいいのではと言っておられました。なるほど・・・。