〈朝鮮民族の美(1)〉 白磁の壺
高さ41.2センチ、17世紀、ソウル中央博物館 |
今回からは、わが国の誇る文化遺産であり、多くの人に愛好される朝鮮時代の陶磁器を、いくつかの種類に分けて紹介していくことにしよう。
いわゆる「李 朝」と呼ばれる陶磁器は、大きく粉青沙器と白磁に分けられるが、まず、素朴で清廉潔白な白を好むわが民族性とも合って広く
愛されてきた白磁から見て行くこ とにする。
ここに紹介するのは、朝鮮白磁の壺「繕識拷切 牌焼軒」と呼ばれる17、18世紀の壺の典型ともいうべきもので、やや狭い口縁は短く外に広がり、
胴体は中心部が大きく膨れ、球形の豊かな曲線をなしており、それを口縁より小さい高台(荏)がしっかりと支えている。
まさに模範的な満月型の壺(含牌焼軒)というべきであろう。
これが作られたのは、わが国が壬辰倭乱と丙子胡乱(1636年、清軍の侵入)の国難を克服して、生産力を回復し、社会制度と文化の興隆期を迎
えようとしている17世紀の後半の頃である。
静かに内に籠る乳白色の釉薬が球体全面を覆い、乳色の静かな光を放ちながら、円満な独自の位置を占め、見ていて飽きない。
何の模様もない空白な肌でありながら、朝、昼、夕方、または夜の燈火の光を受けて、この白磁は無限の色合いに変化するのである。
当時のソンビ(識搾、民間学者)が、これを一つ手に入れ、身近かに置きたいと願った気持が理解されるのである。(金哲央・朝鮮大学校元教授)
[朝鮮新報 2011.5.20]