2011年度在日朝鮮学生中央口演大会
心に響く朝鮮語の音色
在日朝鮮学生中央口演大会が11日に西日本(大阪・池田市民文化会館)、12日に東日本(東京朝鮮第4初中級学校)で開かれた。東日 本大会には、東京、神奈川、茨城朝高学区と静岡朝
鮮初中級学校、長野朝鮮初中級学校の22校から345人、西日本大会には、愛知、京都、大阪、神戸、広 島、九州朝高学区の31校から302人が参加した。大会では、朝鮮語の朗読、詩の
朗読(中・高級部)、「お話」(初級部)、スピーチ(中・高級部)、チェ ダム(漫才)、芸術宣伝、演劇と英語暗誦、英語スピーチ(各中級部)ごとに審査が行われた。大会では、優秀作品発表会も
行われ、講評と成績が発表された。
東日本
![](http://jp.korea-np.co.jp/media/article/201202/20120220j006.jpg) |
大会では朝鮮語と英語の話術が競われた
|
総連東京都本部の康景翊教育部長が開会式であいさつした。康教育部長は、各学校および地区予選を通過して中央大会に参加した児童・生徒らを激励し、 「われわれは朝鮮語を通して人間
としての誇りを取り戻し、朝鮮人としての自覚とプライドを抱き、異国で暮らしながら祖国と民族を身近に感じ、朝鮮語を持っ て祖国と日本、国際社会で活動してきた」と述べ、参加者たちにとっ
て大会が、話術を競う場でありながらも、朝鮮語を大切に思う気持ちを高め、よりいっそう 朝鮮語をよく学び使っていく決意の場になってもらいたいと語った。
大会では、東日本大震災の体験を表現したものや同胞とのつながりを強調した作品が目立った。また1世から2、3、4世へと受け継がれる民族教育の歴 史を心に刻み、朝鮮学校創立100周
年を喜びの中で迎えたいとの決意が込められた作品も多数披露された。子どもたちの実体験から出る言葉の数々は、観客た ちに深い感動を与えていた。
孫の朴梨香さん(5年、西東京朝鮮第2初級学校)の発表を聞きに会場を訪れた朴四甲さん(84)は、発表の間、何度も涙を拭っていた。朴さんは5歳 のときに慶尚南道昌原郡から日本に渡
り、語り尽くせない辛酸を舐めてきた。学校建設に携わり、息子も孫も西東京第2初級に通わせた。今も遠距離通学をする 孫を思い、毎朝駅まで見送っている。「心に響く内容だった。孫たちが
学ぶ朝鮮学校が、祖父母や親たちの大変な苦労を土台にして存在することを忘れてはいけ ない。その万分の一でも応えられるよう、子どもたちはよく学び、朝鮮人としてまっすぐに育ってもら
いたい」と話した。
![](http://jp.korea-np.co.jp/media/article/201202/20120220j007.jpg) |
芸術宣伝「みんな一緒に」(横浜初級)
|
優秀作品発表会では、朗読、スピーチ、漫才など8つの作品が舞台を飾った。
朝鮮語の朗読「故郷の姿」に出演した李慧仙さん(中3、茨城朝鮮初中高級学校)は、「練習成果がこのような形で評価されてうれしい。発表ではとくに 登場人物の言葉やナレーションなど、
場面に合わせた表現に気を配った。高級部に上がっても、口演大会に出場したい。今後は、朗読だけでなく、スピーチや詩 の朗読にもチャレンジしてみたい」と意欲を見せた。
また、子どもたちの指導に当たり好成績を収めた横浜朝鮮初級学校の成明美教員は、「今年は、金日成主席が横浜初級の子どもたちと直接会見した 1972年の8・18から40年になる節目の
年だ。学校では3年前から朝鮮語を軸に積極的な取り組みを行ってきた。その成果がコッソンイ作文コンクールや 統一試験、口演大会の結果などに現れている。朝鮮語教育には国語教員だ
けではなく、全教員が一丸となって取り組むべきだ」と述べた。
西日本
![](http://jp.korea-np.co.jp/media/article/201202/20120220j008.jpg) |
芸術宣伝「一つの心」(大阪第4初級)
|
総連大阪府本部の玄鉄男教育部長が開会式であいさつした。玄教育部長は、母国語をよく学び自在に使うことは、民族を守り、発展させてい くうえでとても大切だと述べ、生徒たちが日頃磨い
てきた朝鮮語の話術を余すところなく発揮し、大会を機にさらなる成長を遂げることを望んだ。
大会では、2012年を飛躍の年にしようとの決意を込めた作品、東日本大震災の体験と同胞の絆に関する作品、「高校無償化」制度除外反対活動に関する体験、民族教育を守り続けたいとの
願いが込められた作品も数多く発表された。
朝鮮語の「お話」で「自慢の舞台を広げていきたい(切櫛巷企 南団哀掘推)」を発表した尼崎朝鮮初中級学校の張有妃さん(初5)は、大好きな朝鮮語は自分の得意分野であると語り金賞を受
賞した。優秀作品にも選ばれた 張さんは、「6年生になったらもっと朝鮮語の話術をみがいて、またこの舞台に立ちたい」と意気込みを語った。
芸術宣伝「ハンマウム(一つの心)」が優秀作品に選ばれた大阪朝鮮第4初級学校の児童たちは、作品を通して学校創立65周年を輝かせる活動に一丸と なって取り組んできたことを振り返
り、世界で一番大きな「ハンマウム」で団結しているのが祖国だと力強く述べ、観客に希望に満ちた未来を伝えた。
また、同じく芸術宣伝に出演した北九州朝鮮初級学校4年生の金香実、李美悠、呉未希、崔愛莉さんの「朝鮮学校が一番!―『希実美愛』の目標高く―」 は、日本の小学校から北九州初級に
編入した児童が、魅力あふれる朝鮮学校で友だちと共に朝鮮人として生きていく決意を固める姿を描き、金賞を受賞した。物 語はクラスの実体験を元に書かれたもの。編入生役を今学年度に
同校に編入した崔愛莉さんが演じた。
崔さんは、日本の小学校に通っていたときからオモニの勧めで毎週土曜に同校で行われている土曜児童教室に参加していた。教室で朝鮮語の魅力に触れ、 オモニに「もっと朝鮮語を学びた
い」と訴えて、ついに編入することになった。崔さんは、たとえ人数は日本の学校ほど多くはないが、「いつも朝鮮語を勉強で きて、本当に親しい友だちに出会えた」と喜びを語る。「いつか朝鮮
語をいっぱい話せるようになったら、祖国に行ってみたい」と話す崔さんは、今後も朝鮮語 を一生懸命学んでいく気持ちを新たにした。
審査員の講評
朝鮮語部門を担当する李汕玉審査委員長は、「国語教育は民族教育の柱」であると強調し、東日本では男子生徒の出演が増え、飛躍的にレベルが上がっ た。とくに高級部の詩の朗読、初級
部の芸術宣伝が良かった。西日本では高級部の演劇が高く評価された。その背景には、中級部からの経験の積み重ねがあると 語った。そして、今後はすべての学校で基礎発音の練習に力
を注ぎ、正確な発音を心がけること、部門を問わず作品の内容と言葉の意味をよく理解したうえで、 いきいきと表現できるよう努力することを呼びかけた。
また、英語部門の姜承福審査員は、暗唱部門では発表者が自信を持って発表し、伝えようとする内容をよく理解したうえで状況に合わせてうまく表現でき ていた。スピーチ(東日本)では、日常
生活の中であった出来事を英語で正確に伝えていた。また、授業で学んだ言葉を使い、原稿をうまくまとめたと話した。 今後の課題は、暗唱ではストーリーを聴衆に語りかけるように表現するこ
と、リズムと抑揚を正確に表すこと、とくにキーワードにだけ気を取られ、文章全体が リズムを失い単調な棒読みにならないよう工夫するなど、授業を通してリーディング力を高めるよう心がけて
ほしいと話した。
( 朝鮮新報 2012-02-20 )