“圧巻のステージ、感動の嵐”
京都中高吹奏楽部、第12回定期演奏会
名門の明徳高校と共演
京都中高吹奏楽部の第12回定期演奏会「星々の交響〜朝・日の夜空に響け希望のメロディ〜」が昨年12月28日、同志社大学寒梅館で行われ、同胞や日本市民ら約500人が観覧した。演奏会には日本の京都明徳高校の吹奏楽部をはじめ朝・日のゲストが出演し、「輝く演奏」を披露した。
星のように照らす
今回の演奏会のテーマは「星」。長い年月をかけて現在を照らしてくれる星のように、今日の同胞コミュニティーをつくった先代たちの弛まぬ努力に思いを馳せ、そして日本の人たちとともにまだ見ぬ未来を照らそうという願いが込められた。京都中高出身である朝鮮大学校の李英哲准教授が構成、脚本、演出を担当した。
演目には「星に願いを」「見上げてごらん夜の星を」や京都中高吹奏楽部顧問の李相大教員(35)作曲の「銀河の記憶」など、星にちなんだ曲が多く並んだ。
演奏会は、朝鮮の詩人、尹東柱の生誕100周年を記念し詩碑のある同志社大学で行われ、尹東柱にちなんだオリジナル曲「空に星、風の詩」も演奏された。
また、演奏会には様々なゲストが出演、工夫に富んだ演出もなされ、会場を盛り上げた。
京都中高声楽部の「星めぐりのアリラン」「赤とんぼ」や京都朝鮮吹奏楽団との演奏「サンセの音を風にのせ」「豊年のクムガン」、同校出身の歌手、李紗栄さんの「Jupiter」、金嬉仙さんの「半月」「星のうた」「そらいろ」が披露されると、観客からは大きな拍手が送られた。
最後には演奏会のために尽力した共演者や関係者たちに京都中高の生徒らから花束が贈られ、大きな拍手の中、イベントは幕を下ろした。
観覧者たちは「厳しい情勢の中でも一生懸命な生徒たちの姿に力と勇気をもらった」(孫智隆さん、63)、「すごく感動した。構成も素晴らしく魅力的な演奏会だった」(40代日本人女性)などと感想を話していた。
音楽を通じた交流
今回の演奏会には京都明徳高校の吹奏楽部が共演した。
同部は過去にマーチングバンド世界大会決勝に出場し、東京ディズニーシーなどでも演奏している名門。2014年の「ビッグバンドフェスティバル」で李相大教員が指揮者を務めたことがきっかけとなり、今回の友情出演が決まった。
「最初はガチガチだった」と話すのは京都中高吹奏楽部部長の李龍聖さん(高3)。「初めて明徳高校に行った時は、明徳高校が名門だということを意識してとても緊張していた」
明徳高校の森下舞さん(高3)も「最初は不安だった」と話す。「今の日本で耳にする『朝鮮』という言葉に少し怖いイメージがあったし、朝鮮学校のことを全然知らず、日本語が通じるのかな、など不安が大きかった」
しかし、初日のレクリエーションや自己紹介で気持ちもほぐれ、昼食時にはお互いの学校のジャージを交換する人もいるほど仲を深めた。
その後も演奏会当日までに3回、お互いの学校を行き来し練習を行った。
練習の合間にはお互いに「好きな歌手について」話し合ったり、連絡先を交換しながら心を通わせていった。11月25日に行われた京都中高の学園祭には明徳高校の生徒らが参加。吹奏楽の演奏を披露したり朝鮮の歌や楽器の演奏を楽しみ、互いの理解を深めた。
明徳高校の清水愛海さん(高3)は「練習する過程で普通の生徒、良い人たちだと知り、練習がとても楽しかった」と話す。
演奏会当日には京都中高の生徒たちから手紙とお菓子が明徳高校の生徒たちに送られたり、一緒に記念撮影するなど、旧知の間柄のようにコミュニケーションが交わされていた。
演奏会では「Sing Sing Sing」と「銀河鉄道999 feat.未来に向かって」を両校の生徒ら100人で演奏。その圧巻のステージに観客たちは息を飲んでいた。
演奏会が終わると生徒らは涙ながらに感謝の言葉を述べ、「これが最後だというのが本当に寂しい」(森下舞さん)と別れを惜しんでいた。
明徳高校吹奏楽部顧問の西山昇教員(58)は「子どもたちにとっては間違いなく意味があることだったと感じている。お互いの『壁』を取り払い、自分たちと同じ高校生だと理解してくれたと思う。これだけ仲良くなったのだから、大人の責任として、これで終わりにしてはいけない」と話し、李相大教員も「明徳高校のおかげで演奏会は素晴らしいものになった。感謝してもしきれない。これからもこういう関係を続けていきたい」と話し、互いにとって意義のある演奏会だったと話した。
明徳高校の江上里菜さん(高3)は演奏会終了後、別れを惜しみながら「練習をする過程に本当の家族のようになったと感じた。今回の演奏会で終わることなくこれからも一緒に音楽を楽しんでいきたい」と涙を流していた。
(金孝俊)