〈月間平壌レポート 8月〉初開催のビール祭典が盛況
驚き、興奮、大同江畔に響く市民の歓喜
【平壌発=金淑美】朝鮮各地で高温現象が観測された今年の8月。連日35℃を超える暑さが続いた平壌では朝鮮で初となる大同江ビールの祭典が開催され、連日連夜にわたって大いに盛り上がった。
白熱の利きビール大会
大同江の夜景を一望し、夏の夜風に吹かれながら、冷えたビールをあおる――。朝鮮初のビール祭典の会場となったのは遊覧船「大同江」号とその埠頭。船内約300席に加え野外に約400席をしつらえ、一帯はさながら「朝鮮式ビアガーデン」と化した。
![ビール祭典会場のようす](http://chosonsinbo.com/jp/files/2016/08/DSC_2509_R.jpg)
ビール祭典会場のようす
開幕式が行われた12日以降、職場などでは二言目には「ビール祭典、行った?」と、祭典の話題で持ち切りに。会場前は、開始時間を迎える前から連日人波であふれた。
取材に訪れたのは開幕式から数日が経った某日。混雑を避けて一足先に会場に入り、中央に設置されたステージ目の前の特等席に腰を下ろした。19時の 開場とほぼ同時に場内は満席に。ほどなくして若い男女に相席を求められた。少々手狭ではあったがこうした出会いもまた一興。快諾し、キンキンのビールで乾 杯した。
![夫婦水入らずでイベントを楽しんでいた、カン・マンイルさん(左)とリ・チへさん](http://chosonsinbo.com/jp/files/2016/08/DSC_2824_R-320x257.jpg)
夫婦水入らずでイベントを楽しんでいた、カン・マンイルさん(左)とリ・チへさん
二人は夫婦で、聞けば夫のカン・マンイルさん(33)は今回が3度目の来場とのこと。一度目は職場の同僚と、二度目は友人らと訪れたそうだ。2歳に なる子どもがいるが、今日はマンイルさんの母親が「たまには夫婦水入らずで楽しんできなさい」と子守りを引き受けてくれたという。
「初日は興奮してしばらく寝付けなかった」とマンイルさん。祭典が人気を博しているわけは、野外の開放的な雰囲気だけでなく、ステージ上で繰り広げ られる公演や多彩な催し物にある。マンイルさんは、「ビール祭典と聞いて一体どんなものかと思っていたが、こんなに楽しいものとは想像もできなかった」と 話す。
一方、「ビールは苦手だけど、公演が見たくて」と妻のリ・チヘさん(30)。公演が始まると、歌と民族楽器、軽音楽による「わが国が一番良い」、「人民の歓喜」などの軽快な楽曲たちに、嬉しそうに目を細めて聴き入っていた。
公演の次はお待ちかね、「利きビール大会」。これは、麦と米の配合比率などによって7種類ある大同江ビールをすべて飲んだ後、そのうち一つを飲んでどのビールか言い当てるゲーム。祭典の目玉企画の一つだ。
![7種類のうちどのビールかを言い当てる「利きビール」ゲームが人気だ](http://chosonsinbo.com/jp/files/2016/08/DSC_2838_R.jpg)
7種類のうちどのビールかを言い当てる「利きビール」ゲームが人気だ
この日会場から選ばれた出場者は平壌市民、中国人、イギリス人の3組。白熱した国別対抗戦は、司会者と会場に煽られていつしか一気飲みバトルに。全て飲み干したイギリス人男性に司会者から「闘志賞」が与えられると、会場中からはこの日一番の歓声があがった。
会場には外国人の姿も多く見られた。平壌市民と相席したり、ジョッキ片手に立ち話をしたりと、どのテーブルも賑わっていた。無類のビール好きだとい う40代のイギリス人男性は、「大同江ビールの質は世界レベル。世界各国のもっと多くの人が大同江ビールを飲む機会に恵まれたらいい」と話していた。
祭典の舞台裏
祭典を主催したのは玉流館など国内のレストランやホテルを管轄する人民奉仕総局が中心となって構成された準備委員会。準備段階では一日に1000人 くらいの来場を見込んでいたが、予想を上回る約1500人が連日にわたって押し寄せている。活況の裏には、「市民により楽しんでもらいたい」という主催側 の想いと努力がある。
最も重視したのが、「最高品質の大同江ビールを市民に提供すること」。製造元である大同江ビール工場から品質管理の専門スタッフが毎日派遣され、リアルタイムで品質をチェック。ビールサーバーやジョッキの消毒、食品の衛生管理も徹底した。
![キンキンに冷えたビールが楽しめる](http://chosonsinbo.com/jp/files/2016/08/DSC_2553_R.jpg)
キンキンに冷えたビールが楽しめる
公演などのステージ上での催し物は、より多くの市民が見られるよう日に2回ずつ。利きビール大会の優勝者には商品が、出場者にはもれなく記念品が贈られた。
また、入り口付近には記念撮影コーナーが設けられたほか、Tシャツやうちわなどのオリジナル記念グッズも販売されていた。
これらグッズや祭典のロゴマーク、会場内の装飾にいたるまで今回すべてのデザインを手がけたのが、朝鮮産業デザイン創作社のチョン・ヨンイルさん (60)だ。大同江ビールの商標の生みの親として知られる。「祝典は文明強国建設や人民生活の向上に直結している。市民のための祭典の成功を願いながら製 作した」と話す。
装飾のほかにも会場には市民の便宜を図るための様々な工夫が施されていた。平壌は梅雨時期なので雨に備えて野外のテーブルにはテントを張り、灯りに群がる虫対策として外灯は会場の両端に設置した。
![多くの平壌市民らが訪れた](http://chosonsinbo.com/jp/files/2016/08/DSC_2508_R.jpg)
多くの平壌市民らが訪れた
準備委員会のチョ・ヨンチョルさん(43)は、「初めて開催するイベントなので準備には苦心したが、準備委員会一同、市民のことを第一に考えて取り組んだ」と話す。
祭典は19時から24時まで。片付けが終われば、必ず一日の総括を行い、改善につなげる。スタッフらが帰路につくのは明け方になることもあるとい う。会計スタッフのキム・ボクシムさん(22)は、「平壌市民だけでなく、海外同胞や外国人の方々もとても喜んでくれるので、スタッフとしてやりがいを感 じる」と笑顔だった。ヨンチョルさんは、「敵対勢力は経済制裁を続けているが、確実に暮らしは上向いている。祭典の盛り上がりがそれを証明しているはず だ」と話した。
祭典は9月初旬まで続く予定。すでに「来年も」と継続開催を期待する声があがっている。
品質向上を実現
![DSC_2629_R](http://chosonsinbo.com/jp/files/2016/08/DSC_2629_R.jpg)
祝典は連日大盛況だった
「大同江ビールがいっそう美味しく感じられる」。祭典を訪れた人々は口々にそう語るが、実は、祭典に出品された大同江ビールの美味しさは心理的効果によるものではない。大同江ビール工場では今回の祭典に合わせて7種類のビールの品質向上を実現した。
同工場のリ・ボンハク支配人(54)によると、近年工場では国際市場におけるビールの発展趨勢や消費者のニーズを研究・分析し、自社製品の品質のレベルアップを図った。改良された大同江ビールは、従来の味を維持しつつより口当たりが良くマイルドな味わいが特徴だ。
大同江ビールは海外でも人気が高く、アジアやヨーロッパなど諸外国からの輸出入ニーズも増えているが、「新たな国際市場開拓よりも、国内の需要を満 たすことが先決」とリ支配人。祭典では来場者を対象にした新しいビールの味に対する意見調査も実施している。市民のニーズを追求せんとする飽くなき努力 が、祭典を盛況せしめたもう一つの所以でもある。
(朝鮮新報)