世界の大きな流れにたって ――
日米安保条約の是非を正面から問うとき
さらに、私は、日米安保条約改定から50年のいま、日米安保条約は未来永劫(えいごう)につづく枠組みなのか、そのことの是非を正面から問うべきときだと考えています。
すでに沖縄では、この条約をつづけることの是非が県民的な大問題になっています。沖縄県民を対象におこなわれた世論調査では、日米安保条約につい
て、「維持すべきだ」と答えた人はわずか7%にまで落ち込み、「平和友好条約に改めるべきだ」「破棄すべきだ」は合計で68%となりました。(拍手)
アメリカからも注目すべき発言が伝えられました。今年4月15日にアメリカの上院外交委員会での公聴会で、ジョージ・パッカード米日財団理事長が
おこなった発言であります。パッカード氏は、日米安保条約のこれまでの歴史には肯定的な評価をあたえつつも、つぎの五つの理由をあげ、「この条約が無期限
の未来までつづくことはできない」ことを上院外交委員会に提起しています。
「第一に、1952年のオリジナルな条約、旧日米安保条約は、戦争の勝者と敗者、戦勝国と被占領国との間の交渉で結ばれたものであって、二つの主権国家の間で結ばれたものではなかった」。
「第二に、日本は、歴史を通じて一度も外国軍を自国に受け入れざるを得ない経験をもたなかったが、戦争終結から65年たった今日なお、10万人近
い米軍、軍属、その家族の無期限の駐留を、カリフォルニア州より小さな国の中の85カ所の施設(基地)に受け入れざるを得ない状況に置かれてきた。米軍の
75%は琉球列島の一部の小さな島沖縄本島に駐留している」。
「第三に、米軍のこのような大きな駐留の継続は、環境破壊、市街地や歓楽街での犯罪、事故、騒音をもたらしている」。
「第四に、米軍のプレゼンスは米軍地位協定によって規定されているが、この協定は日本の国会の(まともな)承認を受けたことはなく、心ある日本人
の間では、19世紀のアジアにおける西洋帝国主義の特徴だった治外法権の延長だとますますみなされるようになっている」。(「そうだ」の声、拍手)
「第五に、(駐留米軍へのコスト負担は)年間43億ドルに達し、(その一部は)『思いやり予算』と呼ばれているが、これは双方にとって気まずい思いをさせる言葉だ」。(笑い)
そしてパッカード氏は、こう結論づけています。
「日本の新しい世代が、自国に置かれた外国軍の基地を我慢しなければならないのか疑問を強めるであろうことは、まったく当然である。米国は、韓
国、ドイツ、フィリピンで、駐留規模を縮小してきた。新しい世代の日本人がこのような状況で不満を募らせることは、驚くべきことでも何でもない」。
みなさん。ここには、私たちが、1月の党大会決定で、日米軍事同盟の「他に類のない異常な特質」として告発した内容と、大きく重なり合う認識がの
べられています。パッカード氏が日本共産党の大会決定を読んでいたわけでないと思いますが(笑い)、くもりのない目で見れば同じ結論に達するのではないか
と思います。こうした発言が、アメリカの上院の外交委員会という公式の場でなされたことの意味は小さくないのではないでしょうか。
さらに世界に大きく目をむけてみたいと思います。私たちが大会決定で明らかにしたように、この半世紀で、軍事同盟のもとにある国の人口は、世界人
口の67%からわずか16%にまで激減しました。軍事同盟は、21世紀の今日の世界で、「20世紀の遺物」というべき、博物館入りの運命にある、時代錯誤
の存在となっているのであります。
私たちは、今年5月、ニューヨークで開催されたNPT(核不拡散条約)再検討会議に出席し、被爆国の政党として、「核兵器のない世界」にむけて会
議が成功することを願って要請の活動をおこないました。そこで強く実感したのは、この会議で重要な役割をはたしているのは、いわゆる「先進国」や「大国」
だけではないということです。
会議成功の要として大きな役割をはたしたカバクチュランNPT議長はフィリピンの練達の外交官です。再検討会議で最も重要な核軍縮問題を担当した
第1委員会のシディヤウシク委員長はジンバブエの外交官です。会議成功のために奔走したドゥアルテ国連軍縮担当上級代表はブラジルの外交官です。コスタリ
カという人口が約460万人の小さな国が提案している核兵器禁止条約が、世界に大きな影響をあたえていました。途上国や新興国といわれる国々の外交官が、
実に生き生きと、また堂々と、核兵器大国を相手に、「核兵器のない世界」への決断を迫って渡り合い、歴史的な国際会議成功のために奮闘する姿に接し、私た
ちは強い感銘を受けました。
世界は大きく変わっているではありませんか。軍事同盟は過去のものになりつつあります。そして、21世紀の世界は、もはや少数の「大国」が動かす
世界ではありません。すべての国々が対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる。それが21世紀の世界であります。こういう世界にあって重要なのは、国
の大小ではありません。経済力の大小でもありません。ましてや軍事力の大小ではありません。その国がどういう主張をしているかによって国の値打ちがはから
れます。世界の道理にたった主張を貫くならば、国の大小にかかわらず尊敬されます。自分の主張のない国は相手にされません(笑い)。軍事力でなく、外交力
こそが何よりも大切になっている。これがいま私たちが生きている21世紀の新しい世界の姿なのであります。(大きな拍手)
こういう世界にあって、わが日本政府はどうでしょう。政権が代わってもあいかわらず軍事同盟を神聖不可侵な存在として絶対視し、何かというとすぐ
軍事で身構え、外交の主張はありません(「はずかしい」の声)。こんな日本でいいのかが、根本から問われているのではないでしょうか。(「その通り」の
声、拍手)
みなさん。日米安保改定50年の今年、世界の大きな流れに立って安保条約の是非を正面から問いなおす国民的議論を大いにおこそうではありませんか
(「そうだ」の声、大きな拍手)。東アジアに平和的環境をつくりあげていく平和外交と一体に、日米安保条約廃棄の国民的合意をつくりあげていくために、と
もに力をつくそうではありませんか。(「よし」の声、大きな拍手)
日本共産党のアメリカに対する態度は、けっして「反米」ではありません。ただすべきは、「異常な支配・従属関係」であり、日米安保条約を廃棄し、
それに代えて、日米友好条約をむすび、「対等・平等・友好の日米関係」を築く、これが私たちの目標であります。それはイギリスの植民地支配からの解放を求
め、革命によって独立をかちとったアメリカ合衆国の建国の精神とも深く響き合うものがあるというのが、私たちの確信であります。(拍手)